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詩 大切なものたち 記憶の中で

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形象化と現実は、少しズレていて、本当の出来事より印象に残ったりします。
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2024年3月の記事一覧

詩)去る日

詩)去る日

4時51分発の始発は
不思議な連帯感
乗り継いだ列車は
仕事帰りと
これから仕事の人間の
まるで違う二種類が混じり合う
半分が寝て
それ以外はスマホ

夜明けの街
列車の音が鼓動の
今日の始まりを告げる
最後の日はこうやって過ぎた

詩)自問~What was I made for?

詩)自問~What was I made for?

わたしはどうすればいいのだろう
自分にできることは何だろう
伝えられることはなんだろう

たった一人の愛するものを奪われた人へ
語り合いながら家路につく
その途中で無残に殺された4人の男たち
爆撃で飢えで子どもを殺された親が
血相を変えて部屋を出ていこうとするとき

こんなことなら生まれてこなければよかった
しあわせだったのは 現実じゃなかった
何のために生まれてきたの?
何のために生まれてきたの

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詩)ガザの閃光

詩)ガザの閃光

錆びた鉄骨 三月は
朝の硝煙のもう幕が高く舞い
太陽は見えない
長く 錯覚の影が延びる
光が薄く投影して 風はない
朝陽がゴツゴツの地肌を晒すように
傷口をさらす
あゝ今日はいつなのか

遠くに煌めく閃光
その瞬間 鈍い響
地核をゆるがすように響いている
錆びた鉄骨
ごとごうごうと揺れると
バサバサと
ふっとむせ返るような蝶の羽ばたき
油くさいにおい
頭から被る
むせる
くろくろしろし

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詩)生きているという事実

詩)生きているという事実

生きるという 逆らえない事実
生きなければならないという事実

何もないという 悲しくも うれしくもない事実
何もない という言葉にしても しなくても 変わらない事実

別世界 なんだろうか
昨日まで当たり前だった事実

写真さえなくなり
もうその昨日さえ 記憶の中にしかないという
事実

そこに立ち向かうとか そんな事じゃなく
明日 生きていかなきゃいけないとい
明後日も飯を食わなきゃいけないと

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