見出し画像

いかにして問題をとくか

どうも、犬井です。

今回紹介する本は、ジョージ・ポリア(=洪、1887〜1985)の『いかにして問題をとくか』(1975)です。この本は、1945年に出版された『How to Solve It 』を邦訳した書です。

本書は数学に携わる人にはもちろん、自然科学を教え、学ぶ人、さらには何か新しい創造の仕事に携わろうとする人に対しても、問題を解くにあたっての筋道を示してくれる書となっています。

それでは以下で、簡単に内容をまとめていこうと思います。

問題を解くための4つの仕事

問題の答えを見つけようとするとき、われわれがなすべき仕事は4つある。

まず第一に問題を理解しなければならない。あんがいに、問題を理解することは当たり前のこととして軽視されることが多く、問題の見落としが学校の内外でよく起きている。したがって、まずは、未知のものは何か、与えられているものは何か、条件は何であるかを整理して、問題の理解に努めなければならない。

問題が理解できたら、次は問題の解くための計画を立てる必要がある。問題を解くことの大部分はどんな計画を立てたらよいかということを考えつくことにあると言ってよい。問題を解くのに必要な材料を考えるにあたり、まずは、関連した問題を知っているかという問いから出発するのがよい。その後、関連した問題の中から、未知数が同じまたは似ている問題を思い起こせ。しかしそれは決して万能ではない。うまくいかなければ、問題を違った形に言い換えることだ。それでも解けなかったら、まず似通った問題を解くとよい

計画を立てたら、次は計画の実行だ。計画の実行は、計画を立てることと比べたらはるかに易しい。必要なのは主に忍耐だけである

最後の仕事は、問題を振り返ることだ。解答が得られたことだけで満足してはもったいない。解を振り返り、解を導出する過程を見直すことは、知識をより一層確かなものにし、問題をとく能力を豊かにするものである。また、同じ結果を違った仕方で導くことができるかを考えることで、どちらの方法がより短く解答できるかを見抜く力を養うことができる。

画像1

すぐれた読者

数学書のすぐれた読者(あるいは講義の聴講者)は、まず第一に議論のその段階が正しいということ第二にこの段階の目的が何かを理解すること、の二つを望むであろう。もしも現在の段階が正しいことがわからず、そうかと言って正しくないとさえ思わなければ彼は抗議し質問するであろう。またその目的が理解できず、その理由を疑うことさえできなかった場合には、はっきりした反対を表明したり、抗議することもできずに、彼はただがっかりし、退屈して議論の筋道を見失うであろう。

すぐれた教師とすぐれた著者はこのことを頭に入れておかなくてはならない。書物や黒板に正しく書かれた証明は、読者や聴き手がそのような議論が人間によってどんなにして見出されたかを理解し、またそこに書いてあることから、自分でその議論を発見できなければその各段階を飲み込むことはできないであろう

すぐれた解答者

すぐれた解答者はしばしば上図のリストに含まれる問いを自分自身に問いかけてみる。彼はそのような問いを自分で発見する。

すぐれた解答者はリストの問いや注意を有効に利用することができる。彼はある問いを例証する例や説明を理解し、リストの問いをどうやったらうまく利用できるかを考えるが、彼は自分の問題でそれらの問いが、実際にどんな働きをするかに出会わなければ本当にそれを理解することはできない。そのような経験をした後では、問いの適当な使い方を自分で発見することができるのである。

すぐれた解答者はいつでもリストの中の問いを全て上手に使いこなすようになっていなければならない。彼は自分の現在の状況がこれらの問いがうまく適用できる状況と同様のものであるかどうかを見極めなければならないのである。

すぐれた解答者はまずできるだけはっきりと問題を理解することに努めなければならない。しかしそれだけでは十分でなく、問題に集中し、その解を熱心に求めなければならない。もしも問題を解く熱意がなかったらそれを手につけぬ方がよい。本当に成功するためには全身を問題に打ちこまなければならない。

実際的な問題:近代的なダムの建設を例として

未知のものは何か
どこにダムを造るべきか、どんな形、どんな大きさにしたらよいか、どんな材料で作るか等々たくさんある。

条件は何か
これも多々ある。例えば、経済的な条件を満たさなければならず、また他の重要な要件を出来るだけ害わないようにしなければならない。ダムは電力を供給し、灌漑やその他の公益に役立つ必要があり、かつ水害を防がなければならない。しかし他面において、出来るだけ船運を妨げ漁獲の邪魔になったり、風致をそこなったりしないことが大切である。その上でできるだけ安く、しかも速やかに建設されることが望ましい。

与えられているものは何か
これも数に限りがない。河の近くの地形や分流や支流、土地がしっかりしているかどうかの地質学的なデータ、漏水の恐れの有無、利用できる材料が何であるか、年間降水量についての気象データ、貯水の深さ、買収すべき土地の代金、材料の費用と労賃など。

計画を立てる
問題を解くにはある程度の予備知識が必要である。現代の技術者は高度の専門的知識をこなしうるし、材料の強弱に関する学理や、自分の経験、文献に載っている技術的経験を利用することができる。

数学との比較
未知のもの、与えられたもの、条件、概念、予備知識、これらすべてが純粋の数学の問題に比べて、実際的な問題では複雑で、曖昧である。しかし違うのは準備すべき知識の内容であって、問題を解く場合の基本的な態度には何の差異も存在しないと考えられる。ある問題を解くときに我々は同じような問題をといた経験をたよりつつ、ちょっと形の違う、似た問題を見たことがあるか、関連した問題を知っているか、とたずねるのである。

あとがき

今回、本書を手にとったのは、大学の数学レポートにすっかり考えあぐねてしまい、問題を解くための筋道を示してくれるのではないかと期待したからです。勿論、問題を直接解くためのヒントは得られませんでしたが、問題を解くにあたってのアプローチの仕方は、今回のレポートだけでなく、他のあらゆる問題についても応用可能でしょうから、十分に一読の価値のある書であったと思います。

内容としては、数学の問題(高校数学を学んだ方であれば十分理解できる)を、上図のリストの問いを用いながら問題を解いていく実践的な過程に多くの紙面が割かれていましたが、問題解決にあたる機会がある方でしたら、問題を解くための方法論について説明した第I部(40pほど)だけでも読む価値があると思われます。

では。

#本 #読書 #読書感想文 #推薦図書 #G・ポリア   #数学

この記事が参加している募集

推薦図書

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?