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ギフティッド児の心をがっちりつかんだ凄腕先生(1)

長男は規格外で扱いにくい特性によって、学校で嫌というほど社会的制裁を受けた過去がある。そんな長男のことを色眼鏡で見ずに、今までの環境から解放してくださった先生がいる。

これまでとは180度違ったアプローチをとるこの先生に出会い、長男自身、全く違う側面を見せるようになった。

譲ってもいいと思うんです。
それで丸く収まるのなら。
ルールを強いて不快にさせるんじゃなくて。
これからも苦労するんでしょうから、自分が受け持っているときくらい別のアプローチをしてもいいのかなと思ってます。

凄腕先生より

厄介者扱いされやすいギフティッド児にとって、必要なのはこんな大人との出会いではないだろうか。親にとってもロールモデルであるこの先生の手腕のほどを書いてみたい。

クラスの公平性を重視しつつ、ルールを強いない絶妙なバランス

例1:身の回りの整理整頓・自己管理ができない問題への対処法

長男の場合、当たり前にできてほしいことが結構できない。その一例が整理整頓をはじめとした自己管理だ。

先日、抜き打ちで授業参観に行った際のこと、長男の席だけが異次元の空間になっていた。机上には本がうず高く積まれ、体操着袋からは体操服や帽子がはみ出した状態で机の上に無造作に置かれている。その上に諸々の所持品が乗っかっていて、よくこの狭いスペースにこれだけの物を積んだわという状態だった。

長男は静かに着席しているが、よく見るとお尻の下に本やプリントがあるではないか。椅子の上にまで荷物を積んでその上に着席をしているのだ。床の上には肝心の教科書が落ちていて、その上には片割れの上履きが鎮座していた。

一年前に初めて状況を把握した時には頭に血が上った。汚いにも程があって周りの人に迷惑がかかる。速やかに直して二度と汚すなと通達した。

しかしこの状態、かれこれ一年くらいずっと直らない。学校だけでなく家庭や習い事でも、一時間くらいしたら彼の半径1m以内は物が散乱し始める。

授業中、テストを始めるので机の上を片付けてと言われても、長男だけは荷物が多すぎて片付けようにも無理な状態が発生する。

こういう時、先生は以下のような対処をしたことがあるそうだ。

先生:机の上を片付けましょう。テストが配れませんよ。
長男:机の中もいっぱいで、どこにも置き場所がないです。
先生:先生が預かっていいなら、預かろうか?

驚いた。「だから普段から片付けなさいって言ってるでしょ」と言って叱るのではなく、最終的に手を差し伸べてくださったのだ(※1)。

あまりに汚い時は、申し訳ないことに放課後に先生が少し片付けることもあるそうだ。長男の自席を無秩序のまま放置することは、他の子がきちんとしている中で問題となる。一方、長男にばかり手を貸すというのも公平性に欠ける。このあたり、公平性の観点から、匙加減はかなり意識されているようだった。

先生はブレたいわけではないともおっしゃっていて、整理整頓の必要性は引き続き長男に伝えてくださっている。そして、長男がなんだかんだ言いながらも片付けをした際には、次のように言ってくださったそうだ。

先生:今日は片付けてくれてありがとう。うれしかったよ。
長男、はずかしそうにうなずく。
先生:でも、また来週になったら元に戻るんだよね?笑
長男、ニタっと笑ってはぐらかす。

このやり取りを聞いた時、圧巻だと思った。私だったら、一度やれたのだから今後もずっとやるように努めなさいと指導してしまいそうだ。

長男の整理整頓には正直なところ先生も困っている。それでも、親の了承も得られるのなら、〇年生に求めるレベルに持っていくことよりも、今より酷くならない程度に長男に対しても強制せずに済むところを着地点にしたいと考えているとのことだった。

参観日で長男を見た時、こんなに良くしてもらっている先生に、長男はもっと応えないといけないよな、という気持ちは正直あった。それでも母に見られて意気消沈気味の長男の肩をぽんぽんとたたき、「怒ってないから。ちゃんと帰ってくるんだよ?」と授業の後に声をかけられるまでに、親にも気持ちの変化が起きていた。

(2)につづく

(※1)机上散乱、テスト開始遅延、その他迷惑となる状況が発生したことで、クラス内でルール決めが話し合われた件はこちら。


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