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【アタッチメント理論】子どものアタッチメントと「基地」の重要性:保育現場での対応方法

はじめに
 
保育の現場において、子どもたちが安心感を持って過ごせるようにするためには、アタッチメント(愛着)の形成が非常に重要です。特に幼い子どもたちにとって、「特定のだれか」に対するアタッチメントは、その後の情緒的安定に大きな影響を与えます。本記事では、保育現場でのアタッチメントの重要性と、保育者が意識すべきポイントについて詳しくお伝えします。


1.アタッチメントの基本

 アタッチメントとは、子どもが特定の大人に対して形成する情緒的な絆のことです。この絆がしっかりと築かれることで、子どもは安心感を得て、周囲の環境に対する探索行動を積極的に行うことができます。

 例えば、3歳未満の子どもが保育園に通い始めるとき、特定の保育士さんが「お母さん」のような存在となることで、その子は新しい環境に対する不安を軽減し、安心して遊びや学びに取り組むことができます。このように、子どもが「この先生なら安心だ」と感じる関係が築かれることで、「安心感の輪」の「基地」となり、健全な発達が促進されるのです。(「安心感の輪」についての詳細はこちら/「基地」についての詳細はこちら

2.保育現場での「基地」の役割

 保育園などで複数の担任がいる場合、子どもが「どの先生が『基地』なのか」を明確に理解することが大切です。例えば、園で遊んでいるときに、子どもが「遊戯室では田中先生が自分の基地」と認識していると、その場面での安心感が増します。

 田中先生が「ここにいるよ」と示してあげることで、子どもは「困ったときは田中先生に頼ればいい」と理解し、「安心感の輪」を形成することができるのです。

3.複数の保育者が関わるメリットとデメリット

 複数の大人が子どものケアに関わることにはメリットがありますが、ただ大人が多ければ良いというものではありません。例えば、保育園で複数の先生が交替で子どもに対応している場合、子どもが「今日は誰に頼ればいいのか」と分からなくなることがあります。

 特定の先生、例えば「鈴木先生」がいつも一貫して子どもと接していると、子どもは「困ったときは鈴木先生に頼ればいい」と認識しやすくなります。しかし、このような特定の人が定まらないと、子どもは混乱し、安心感を得にくくなってしまうのです。

4.担当制の重要性

 保育現場では、「この子の担当は田中先生」とする担当制を取ることが一般的です。この担当制により、田中先生と子どもとの結びつきが強くなり、例えば、子どもが転んで泣いてしまったときに、「助けを求めたら田中先生が必ず応じてくれる」と認識できるようになります。これにより、子どもは安心して過ごすことができ、情緒的な安定が促されます。

5.担当者が不在の場合の対応

 担当の先生が不在の場合や対応できない場合には、「田中先生がいなければ、佐藤先生」と決めておくことが大切です。例えば、田中先生が休憩中でいないときに、子どもが不安を感じた場合、「今は佐藤先生に頼ればいい」と理解できるようにします。子どもが困ったとき、佐藤先生がしっかりと受け入れることで、子どもの安心感を保つことができます。

 また、佐藤先生がフォローした後、田中先生が戻ってきたら、「そのとき」の状況を話し、子どもの不安を解消し、関係を修復することも重要です。

6.担当の変更と新たなアタッチメントの形成

 進級などで担当が替わることは避けられません。例えば、子どもが進級して田中先生から山本先生に担当が変わった場合、一度でも田中先生と共感的にかかわって安定した関係を築いた子どもは、その経験を土台に山本先生とも良い関係を築いていくことができます。

 最初は新しい環境に戸惑い、一時的に不安定になるかもしれませんが、田中先生との信頼関係の経験があることで、やがて山本先生との関係も安定していくでしょう。

最後に
 
保育現場でのアタッチメントの形成は、子どもの情緒的安定にとって非常に重要です。保育者が「特定の人」として子どもに認識されることで、子どもは安心感を持ち、健全な発達を遂げることができます。担当制を活用し、子どもたちが安心して過ごせる環境を整えることが、保育者の大切な役割です。

 保育者の皆さん、日々の業務に追われる中で大変なことも多いかと思いますが、子どもたちの「基地」としての役割を大切にし、温かいケアを提供していきましょう。

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