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てんとう虫の羽ばたき

久しぶりに散歩に出かけた。

少しだけ歩くつもりが、時計を見ると2時間も経っていて驚いた。


昨年の12月ごろからずっと、散歩に行きたいと思っていた。お風呂に入れなかったり、体調が悪かったり、昼夜逆転していたりして、なかなか実現できなかったことだ。


玄関の扉を開けて、通院とは違う道を行く。
太陽の光が暖かい。父と一緒に、ゆっくりゆっくり、周りを観察しながら歩いた。

フキノトウがかなり伸びていた。
あちこちから、軽やかな鳥の声が聞こえてくる。
咲き始めたスイセンの花。
小川をスイスイと泳ぐ鴨が2匹。

春へと移りゆく世界を見て、いろいろなものを指差しながら進む。
あそこにカワセミがいる。ここで前にハーモニカを吹くおじいさんとおばあさんに会ったね。
あ、こんなところにてんとう虫!


とても楽しかった。久しぶりに触れる自然。父とともにしたお喋り。
良い時間だった。



アパートに帰ってきた時、今年の夏も暑くなるらしいよ、と言いかけて、やめた。

夏のことなんて、考えられない。5月の両親の旅行が終わったら、死ぬつもりでいるから。
どれだけ季節を感じる喜びを思い出しても、死にたい気持ちは消えてくれない。春が来て、若葉が育つように、希死念慮もより深く、心に根を張っていく。

今日は、散歩に行けて良かった。
あと何回、こうして父や母とともに歩けるだろうか。何回でもいい。できるだけ多く、機会を作りたい。一緒に歩いた道に、私の顔を、声を、言葉を遺していきたい。


歩こう。進もう。ゴールへ向かって。
その先はきっと、今日の日差しのように穏やかな場所だろう。

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