エッセイ : 僕の身の周りの高齢化問題 2 どんな商売も最初の3年間は赤字(専門技術は簡単には身につかない)

僕はネットビジネスの経験はないので分からないが
昔から、どんな商売も最初の3年間は赤字だと言われている。どんな商売を始めても、最初の3年間は
とにかく毎日ただ我慢のみ。3年を過ぎて、漸く、
利益が出始める。

僕の知り合いに医師がいる。その人は大病院で内科の医師をしていたが、名医と評判になっていった。
ある日、一念発起して開業医になることを決め、
銀行からの借り入れもして自分の病院を建てた。
病院は建物も高額ならば、薬や医療機器も高額だ。
レントゲン1台1000万円する。
その人は今でこそフェラーリを乗り回しているが、
開業当初は患者さんが全然来なくて毎月赤字だった
患者さんは来ないが看護婦さんたちに給料は払わなくてはいけない。
開業して1年になろうとする当たりから、徐々に患者さんが増え始め、3年後、毎月利益が出るようになった。
医師の国家資格を持っていても最初の3年間は赤字だったのだ。

僕の大学の時の友人の1人に、パン屋さんの跡取り息子がいた。僕と同じ経済学部だった。経営学部ならまた分かるのだか、なぜ経済学部に入学したか不思議だったのである日聞いてみた。
その友人はこう言った。友人の父親が彼に、パン屋というのは、早朝5時前から働き始め、夕方遅くまで店を開いて商売している。盆と正月以外は基本的に休みは1週間に1日だけ。それが生涯続くことになる。
だから大学に行って4年間お前の好きなことをして
青春を謳歌して来い。卒業したらパン職人になるための修行が始まる。
その友人は大学時代にバイトで稼いだお金で日本中を旅して回った。
そして、その後結婚することになる恋人とも出逢った。
その友人は大学を卒業すると、父親の元で厳しいパン職人への修行を始めた。
だが、その友人が作ったパンがお店にならんだのは
その友人が修行を始めて5年も経ってからだった。
自分の作ったパンがお店にならんだのを恋人に見てもらい正式に結婚した。
その友人と奥さんが経営するパン屋さんは地元で1番親しまれ愛されている。
お店にならべてお客様に買って頂くパンを作るのには5年も修行しなくてはいけないということだ。
パンを作るのが好きだから、自分の作るパンは皆が美味しいと言ってくれるから、だけでパン屋さんを開業しても上手くいかないと思う。

僕が約1年後に訪れたボランティアで空き家調査をしていた地区で、僕はお昼の時間が近かったこともあり、ログハウス風の新しいパン屋さんを最初に訪れた。
ところが誰も居なかった。パンは陳列してあった。
そしてお金を入れる箱が置いてあった。つまり無人販売所みたいになっていた。
その後、その地区にあるお寺でお話を聞いたところ
そのパン屋さんはパンの販売だけではやっていけなくなり、朝パンを焼いてお店にならべると、夫婦揃って街に働きに行っているとのことだった。

手作りパンブームになり、いろんなパン屋さんが近年増えて来たが繁盛しているパン屋さんはごく一部だ。しかも繁盛しているパン屋さんの殆どは昔からあるパン屋さんだ。
定年後、田舎で農業をしたり、お店やカフェ等を始めて楽しく暮らしている人達をテレビや雑誌が紹介しているが、それはごく一部の人たちだと思う。
それも最初から上手くいっているわけではなくて、
3年位苦労して漸く軌道に乗った店でもあると思う
自分はパンを作るのが好きだから、自分が焼くパンは皆が美味しいと言ってくれるからという理由だけで始めても上手くいかないと思う。
専門技術を身につけるのは簡単なことではない。

帰り道、定年したばかりだと思われる人が奥さんと大きな草刈り鎌で畑の草を刈っていた。そこに近所のおじいさんが来て、農業用の草刈り機を貸してあげると言った。
ところがその夫婦は、全て手作業で農業をしたくてここに引っ越して来たので結構ですと断った。
今は定年したばかりだから、草刈り鎌を使って手作業で草刈りが出来るが、後10年もしたら、そんなことは出来なくなると思った。
むしろ、おじいさんに草刈り機を借りて、近い将来安く譲ってもらう交渉を始めた方が良いとも思った

定年後、経験したことのない職業、ましてや商売ならば、自分がそれを出来る体力があるか、それを出来るだけの専門知識を持っているか、きちんと確認した上で始めなければ上手くいくことはないと思う

当たり前の話しだが、人は長く勤めていた会社の仕事のプロでしかない。例え還暦を過ぎても、経験したことのない職業や商売ならば素人てあるし、会社で例えれば新入社員だ。
還暦の新入社員が正社員と働ける場所は、会社員の時にしていた仕事のみだと考えた方がいいと思う。





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