エッセイ : 緑響くのモチーフとなった御射鹿池 白い馬の見える風景の前で飲んだアウトドア珈琲

僕は長野県に住んでいるが、今年の夏、奥さんと
ふたりで同じく長野県の茅野市の奥蓼科にある
御射鹿池に行って来た。
この池は農業用に作られた溜め池だが、その美しい光景から、東山魁夷さんの、緑響くという絵のモチーフになった場所だ。

緑響くは、森を背景とした池の畔を1頭の白い馬が歩いていて池にその風景が映っている、ほぼ緑色の余りも有名な絵だ。

御射鹿池を訪れたのは、奥さんは初めてだったが
僕は2回目だった。
僕が初めて訪れた時は知る人が殆どいない東山魁夷さんのファンしか訪れない様な所だった。

大学3年生の夏休みに運転免許証を取った僕は父親の車を借りてひとりでドライブに出かけた。
目的地は奥蓼科にある御射鹿池だった。
高校の時に、東山魁夷さんの緑響くという絵と出会い、東山魁夷さんの画集を見るようになった。
僕は絵のことは殆ど知らないが、東山魁夷さんの絵はいい絵だと思う。
ある日、書店で緑響くを含む、風景のなかに白い馬が描かれている絵だけを集めた、白い馬の見える風景という画集を見つけた。
そして、僕はその画集を買って帰った。

東山魁夷さんの白い馬の見える風景の画集の絵を見ながら、その絵の解説を読んでいった。
そして、緑響くが奥蓼科の御射鹿池がモチーフになったことを知り、いつか行きたいと思っていた。

現在御射鹿池は有名な観光スポットとなっていて、
広い駐車場があり観光バスも停まっている。
奥さんと見た時には、池の周りに柵も出来ていた。
あの頃の方が良かったと思った。

取りたての運転免許証を持って、僕は父親の車を運転し茅野市内から奥蓼科に向かった。
主要道路から右に曲がり細い山の麓に向う道を慎重にゆっくりと走った。
30分位すると、右側に池が見えたので車を停めると違う池だった 
その池からもう15分ほど車で走ると、御射鹿池が右側に見えた。
その当時は御射鹿池の脇に車が3台ほど停められる空き地の様なところしかなかった。僕はそこに車を停めた。僕以外誰も居なかった。

僕はゆっくりと御射鹿池の周りを歩いた。そして、
ここだ、と思って立ち止まった。ここで東山魁夷さんは緑響くを描いたんだ、と思った。
そこには、緑響くと同じ景色が広がっていた。
東山魁夷さんは、この風景のなかに1頭の白い馬が見えたんだと思った。

僕は車に戻ると昼食にした。
車から小さなアウトドア用のテーブルを出し、車のシートから座って届く位置に置いた。
僕はシングルバーナーで蓋を開けたオイルサーディンの缶詰めを温め、スライスしたバゲットの上に置きオープンサンドにして、野菜ジュースを飲みながら食べた。そして、サラミとチーズのオープンサンドも作って食べた。

食べ終わると僕は、パーコレーターで珈琲を作った
そして、白い馬の見える風景を見ながら、ナッツ入りのチョコレートを食べ、少し粉っぽいが美味しいパーコレーターで淹れた珈琲を飲んだ。

それから15年後、僕は家で白い馬の見える風景の画集を見ていた。
娘たちが来て、白いお馬さんがいる、と言った。
僕が娘たちにその画集を見せてあげると、ここにも白いお馬さんがいる、と言って喜んで見ていた。
東山魁夷さんの絵は、小さな子どもたちの心も惹きつけるんだと思った。










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