エッセイ : 欧州で食べた朝ごはん 6 / スイスの朝ごはんの定番料理レシュティとチーズフォンデュの美味しい食べ方

僕の勤めていた会社のスイス出張所はチューリッヒにあった。
スイスは言語の違う国々が同盟を結んで永世中立地域としての作った国なので、全体の約70%の人がドイツ語を話し、約20%の人がフランス語を話し
約7〜8%の人がイタリア語を話し、約2〜3%の人がロマンシュ語という独特の言語を話す4ヵ国語の国。各州によって話す言葉が違うがドイツ語ならドイツ語の州が集まっている。
僕が行ったチューリッヒはドイツ語の州にあった。
国連本部のあるジュネーブはフランス語の州。
チューリッヒなんて如何にもドイツ語の名前という感じがする。ジュネーブなんて如何にもフランス語という感じがする。
(すみません、親父ギャグです。フランス語の愛してますのジュテームに引っかけました。因みにドイツ語で愛してますは、イッヒリーベディッヒです。)

国民全員が4ヵ国語をマスターするのは不可能なので、スイスでは違う言語の人とは英語でコミュニケーションを取っている。

スイスというとスイスアルプスときて、山をイメージしがちだが、スイスは湖の多い国でもある。
チューリッヒ湖、ルツェルン湖、レマン湖と大きな湖が3つもある。
だから、スイスの景色というのは、湖の畔に街があり、後ろに山が見えて、大きな川が流れている、
というのが一般的。
僕が生まれ育った長野県の諏訪地域に似ている。
だから、僕は最初チューリッヒの景色を見た時、
親近感みたいなものを感じた。

スイスは永世中立国のため徴兵制がある。だから、
何年かに1度、ミリタリーサービスと言って軍の任務につかなくてはいけない。日本で言うと自衛隊の様な所に行くので、スイスでは太っている人が少ない。男性も女性も引き締まった見事な体型をされている方が多い。

午後スイス出張所に着きミーティングをした後、
エルンストさんがディナーをご馳走してくれると言ってチューリッヒ湖の畔にあるレストランに連れて行ってくれた。
チューリッヒ湖で獲れた魚料理を食べてくれ、と言った。

皆さん
スイスに限らず、何処の国に行ってもそうてすが、
魚料理を食べる時は、それなりの覚悟が必要です。
我々日本人は、太平洋、日本海、瀬戸内海等の、
日本近郊の海で獲れた魚を食べています。
マグロやサバのように世界中の海を泳ぎ回っている魚ならいいのですが、欧州なら、大西洋にしか住んでいない魚、地中海にしか住んでいない魚、湖ならば、その湖にしか住んでいない魚を食べる機会に恵まれてしまうわけです。
欧州のレストランでは、調理する前にその素材を見せてくれます。チューリッヒ湖で獲れた魚を2種類見せてくれました。1つは鱒を大きくした様な魚だったので良かったのですが、もう1つは、見た目がシーラカンス的で、これホントに食べるの?  的な魚でした。

エルンストさんは、その魚を指差し
「ユウキ、お前はラッキーだぞ。この魚は滅多に捕れなくて、凄い旨いんだ。おい、これ2匹とも塩を振って丸焼きにしてくれ。」
と言った。
鱒を大きくしたような魚は切り身にしてソテーされて出て来た。赤身の美味しい魚だと思った。
次にシーラカンス的な魚料理が丸焼きになって出て来た。丸焦げになっていたので、かなりグロテスクに見えた。
これホントに食べなきゃダメ~、と思っていると
エルンストさんが
「ユウキ、遠慮せずに食べろ、旨いぞ。
レモン汁を多めにかけろよ。」
と言ったので、一口食べてみると、何と凄い美味しい。あっという間に食べてしまった。

翌朝、ホテルのレストランに朝ごはんを食べに行った。
出て来た朝食はパンとハムやサラミとチーズと僕はその時初めて見たのだが、スイスの朝ごはんの定番レシュティと呼ばれるジャガイモのパンケーキの様なものだった。
ジャガイモを薄く千切りの様にした物をフライパンでカリカリに焼いてパンケーキにした感じの物だが丁度良い塩味で美味しいく、チーズと一緒に食べると更に美味しかった。
僕はレシュティを気に入ってしまった。

スイス出張所で朝みんなと珈琲を飲んでいる時に、
朝ごはんに食べたレシュティが美味しかったと言うと、レシュティにはいろんな食べ方があるから、
ランチにご馳走してくれると言った。
スイス出張所の人たちと近くのレストランに行った
運ばれて来たのは、朝ごはんの時のレシュティは
パンケーキ位の大きさだったが、大き目のお皿と同じ位の大きなレシュティに、キノコや鶏肉の入ったホワイトソースをかけた物だった。
カリカリのレシュティがホワイトソースで少ししんなりして、これも美味しいと思った。

スイス出張所での仕事が終わるとエルンストさんが
ディナーに食べたい物はあるか?  と言ったので、
僕はチーズフォンデュが食べたいと言った。
エルンストさんはニコッとして、旨いレストランがあるんだ、行こう、と言った。

日本ではウインナーやブロッコリー等もチーズフォンデュの時に食べるが、出て来たのはチーズフォンデュとパンだけだった。
味は日本の物と殆ど同じだが、香りが違った。
味もコクがあって美味しい。本場のスイスチーズと
スイスワインで作られたチーズフォンデュだからだと思った。
すると、グラスに入った透明な酒が運ばれて来た。
ジンの様な酒なんだろうなぁ、と思っていた。
すると、エルンストさんがこう言った。

「この酒は飲むんじゃない。これから旨いチーズフォンデュの食べ方を説明する。パンを串に刺したら、このグラスに入った酒の中に入れ、パンにたっぷりと酒を染み込ませる。そしてチーズを絡めて食べる。やってみろ、旨いぞ。」

エルンストさんに言われた通りやってみると、
口のなかでチーズに絡めたパンから酒が滲み出て来て、大人のチーズフォンデュみたいになってメチャクチャ美味しかった。
僕は美味しくて次から次へと食べていったが、このグラスに注がれた酒、かなりアルコール度数が高いものだった。しかもチーズフォンデュにはワインが入っていて所謂ちゃんぽん状態、食べ終わった時には、かなり酔いが回っていた。
ホテルに帰り部屋に入り、スーツを脱ぐと僕はベッドに倒れ込み、下着姿のまま爆睡してしまった。

翌朝目が覚めると、完全な二日酔い状態、頭がガンガンした。胃の中に何か入れないと、と思い、
ホテルのレストランに朝食を食べに行ったのだが、
何も食べる気がしなかった。
レストランの女の人が心配してくれて、
「どうされました?」と言ってくれたので、飲み過ぎたと正直に答えた。
すると、少し待っていてくださいと言って、その女の人は厨房の中へ入って行った。
暫くするとその女の人は、大き目のグラスに入った飲み物を持って来てくれた。そして、
「冷たいミルクにスプーン1杯のオリーブオイルを入れたものです。これを飲めば良くなりますよ。」
と言ってくれた。

僕はオリーブオイル入りミルクを飲み部屋に戻ったそして、1時間ほどベッドで横になっていたら、
何と、本当に二日酔いが治ってしまった。
助かった、と思った。
チューリッヒ3日目の朝ごはんは、オリーブオイル入りの冷たいミルクだった。











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