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ピアス、私の自傷癖

 鼻ピアスを開けたい、と不意に思った。

 思えば、ピアスホールを増やしたいとかタトゥーを入れたいとかいう衝動は、いつも突然沸き起こる。

 初めてピアスを開けたのは、確か高校1年生の時。クラスメイトが耳たぶにシンプルなピアスを着けているのを見て、自分は人と違うことをしたいと思い軟骨部に穴を開けた。

 ピアッサーを持って耳にあてがってもなかなか勇気が出なくて、手に力が入らなかったのを懐かしく思う。

 一度開けてしまえば、後は簡単なものだ。耳たぶに開け、また軟骨に開け、みるみるうちに7箇所程穴が開いた耳は、とても賑やかになった。

 ボディピアスを好んで着けていた私は、上下のバランスを見たり全体のコーディネートをしたりして楽しんだ。ピアスを着けると、心に空いた穴も塞がれるような気がした。

 大学に進学してアルバイトをするようになり、必然的にピアスを外さないといけない場面が増えた。その隙に閉じてしまう穴もあり、ピアスの管理をするのを億劫に感じるようになった。

 社会人になってからその傾向は一層増し、休日に、わざわざたくさんのピアスを着けてはまた外す行為が鬱陶しくなった。ピアスを外さなくて済む職業に憧れた。

 それからしばらくして、うつ病を発症した。

 回復期には自傷行為の一貫として、ピアッシングやタトゥー彫りをするようになった。ピアッシングに関しては元々自傷行為としての位置付けが強かったが、この時ばかりはその色味を増した。

 深夜に心が辛くなると、衝動的に体に穴を開けたり墨を入れたりした。危険で愚かな行為だと分かっていたが、そこに救いを求めた。そんなことをしても救われないことは承知の上だった。

 ヘソや舌にも穴を開けたが、あっという間に腫れたり千切れたりしたので、今も残っているピアスホールは両耳に12個だけだ。

 鼻ピアスを開けたい衝動にかられてから、昨日久しぶりにピアスを装着してみた。

 キラキラした小さな石が耳を埋め尽くすと、なんて可愛いのだろう。大事に伸ばしているロングヘアーを恨めしく感じるほど、飾られた耳は美しく輝いていた。

 どんなに見た目を変えても、人間の本質が変わらないことは知っている。だけど、見た目を変えることで自分に自信を持てる感覚もまた、体感している。

 鼻ピアスを開けたところで、私の心に新たな変化が起こるのだろうか。

 インターネットで検索して、適当な形成外科に予約を入れた。新しい道で、私はまだまだ強く生きなくちゃならない。

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