アイツはとても利口な奴だったと振り返っても、そこにはもうアイツはいない…。 キッチンで料理を始めると、黙って後ろに座り料理の出来上がりを待っていたり、帰宅する時も玄関に座り45度斜めに頭を上げ「遅かったにゃ〜」と迎えてくれていた。 そんな風な知的な愛猫ミミとの20年間は、とても心地よい時間をくれた。 愛猫ミミが亡くなりしばらくたった頃、小さな家の小さな庭に彼女が現れた。 彼女は面立ちがどことなくミミと似ていて、どうやら妊婦さんの様で、重たいお腹を大切に抱えながらチ
決して群れなく、媚びなく、気の向くままに生きてる様なネコ族の面々…、そんな風に見えてしまい知ってるつもりでいた。 食べ物や住まいが保証される事がない日々を過ごし、誰かと一緒にいなくても生きれる強さと、何の権力にも擦り寄る事をせずツンデレに…。 素敵な事や物を追い求めて歩むのに、時間も天気も関係ない。 ネコ種族から“人間種族”を見たら、どんな風な種族に見えるだろうか…? 食べ物や住まいを得る為に動き働き、いろんな権力や規則、目に見えない力に縛られて不自由そうに生き
川沿いの桜を見る私の頬を春風がくすぐりながら吹き、道交う母と幼い子が笑みを浮かべながら歩いている…。 そんな穏やかな春の日に青空を見上げると飛行機雲が、遠く離れた場所へ続いている。 私には飛行機は、子供との楽しさや幸せの思い出のシンボルなのかも知れない…。 飛行機での空が続いている感じが、ちっぽけな私にとっては地球の一員みたでワクワクする。 地球の空はつながり世界中が同じ空なのに、戦闘機と言う名の飛行機やドローンやミサイルも飛ぶ空に変わってしまい…、青一色の青空に
星空の下で見て聞いて感じている事は、意外と大事な事だったりする。 小さな頃星空よりも眩しかった街の商店街の看板や輝きは、少しずつ輝きを失って閉まったシャッターが並ぶ街へと姿を変えた。 大人になった私は買物をしに商店街ではなく、大型ショッピングモールへ自動車で行くと、去年まであったテナントが抜けていて、ムシ歯の抜けた様な空間だけが存在している。 先月はまた1つテナントが抜けて、ムシ歯だらけの様に広がる…、早く歯医者に行かないと歯が無くなるよ〜。 買物を終えてセ
【加納翔太が手にした野菜】 いつもの様にスーパーに買物へ行く。 私が綺麗に並べられた野菜の中から何気なく手にすると、“裏書き"大好きな妻の和美が“遺伝子組み換え作物"の表示に躊躇う。 躊躇う彼女の視線は、左35度斜め下の幼い息子の賢人を愛おしく見つめている…。 和美が「翔太、コレ戻して…」と話し、僕はさり気なく手にした野菜を戻した。 【高梨さんのお薬】 「高梨さん、お母さんはB型肝炎ですね」と医師の日野川が淡々と話した。 「先生、それって…」と直樹が言うと、
[ リトマス試験紙 ] 小学校の理科の時間に、宮原里美先生が「青色のリトマス試験紙“赤”に変わると、”酸性”です。」 いつもは、おとなしい誠君が「“青”のままだったら、アルカリ性ですか?」 里美先生が少し間を空けてから、「青のリトマス試験紙だと、アルカリ性かも知れないし、中性かもしれないね」 誠君が独り言の様に小声で「はっきり、しないんだ…」と言っていたのが、僕はどうにも気になった。 授業は続きその後、赤のリトマス試験紙で実験していたけれど、それよりも僕は“おとな
[ 白鳥 ] 遠いシベリアの極寒の地から、白鳥達がV字飛行隊を編成しながら、僕の住む雪国にやって来た。 温かな春に恋愛し出産する白鳥達は、育児を食糧が豊富で安全なシベリアで過ごし、秋には雪国に南に向けて旅立つ。 長い距離を羽ばたき、天候に左右され敵に警戒しながら、遠くのゴール地点へ必死に飛び続ける。 春に産まれヒナ鳥だった白鳥の子供は成長して、僕の住む雪国の町まで辿り着いた。 [ 一瞬の様な… ] 「この子は大きくなったら、どんな大人になるのかな…?」
官邸 2025年 この国の未来予想図は中枢はわずか数人の会議と言う名の密談で決められた。 「ワクチン効果が想定通りで、高齢人口削減で一安心ですね…、総理」と真栄田官房長官が話すと、今やメガネがトレードマークの南波総理大臣がニヤリとして頷き、「真栄田君、我々も高齢だからね」と、他人事の様に高笑いしていた。官邸内で話すホンネとは、裏腹に国民の前ではまるで言葉を話さない様なしたたかな南波だ…。 官邸 2018年 「外務筋から、今までにない強烈なインフルエンザが隣国から発生し
「雨が降ってきたよ、亜衣…、早く家にお入り。」 おばあちゃんが心配する声を聞きながら「雨のニオイがするっ!」と…。 おばあちゃんは傘をさして私のいる所に来て「風邪ひいちゃうよ」と穏やかに優しく話し、スーッと傘に入れて「亜衣は雨のニオイが好きなんだね、おばあちゃんも大好きなんだよ…。」 「おばあちゃんも!」と亜衣は嬉しそうに笑い、「なんで好きなの?」と…、聞いてみた。 おばあちゃんは「静かに包み込むような香りがして落ち着くの…」と話す、おばあちゃんの眼差しはとても柔かく
まえがき カタカナで書けば2文字、ひらがなでも2文字、漢字なら1文字で書けてしまう、ネコ、ねこ、猫…! 小さな彼等につい忘れがちなとても大事な事を思い出させてもらったり、感じたりする…。 ネコ嫌いの人にはごめんなさい! ありがちな彼等 温かい春はゆっくりと陽だまりに、冷たい雨は柳楽さんの小屋で雨宿りしたりして…、時間にも何にも縛られない自由に気ままに…。 そんな自由さを纏っていた私があっと言う間に恋に落ちてしまった…。 理由…、そんなの無い!!! 自由をそこ
ナゾナゾ 「ナゾナゾだよ〜! 丸くて、三角のものな何んだ〜?」と、娘の彩良が、ナゾナゾの問題を出した。 小学校に通い始めた頃、妻の亜美の実家に行く道すがら、高速道路のインターチェンジから一般道路に降りてまもなく渋滞している。 今思えば、道路工事の為の渋滞を過ぎた後にナゾナゾを出したのか…? 「丸いのに、三角形…、なんだろう?」と真面目な顔をする僕を見て、彩良は「ナゾナゾだからね…!」と笑い出して…、亜美は「おにぎり?」と答えを彩良の表情を伺いながら答え、惜しい様な表
偉いおじさんやまだ引退してないのかなと頭を傾げる程のおじいちゃん、頭の回転が速い麗女がこの国の中枢で会議している。 1ページ目をご覧ください。 「国会で派閥が問題、旧体制を維持している」と麗女の議員が問題提起をする。 会社なら引退してそうなおじいちゃん議員が「何が問題かわからない…」と言って翌日には“派閥解散"を声を高らかにして宣言する。 そして、“政治集団"と改名しちゃう。 おじいちゃんは人生の大先輩なので、敬意を込めてご説明致しますね。 「派閥も政治集団も同じ
サッカーの試合 「今日はワールドカップの日本対ブラジルのサッカーの試合があるね〜」と同僚の原と話していると、原が「そうだよ山科、地上波放送がないからネット放送で観なきゃいけないな、相葉は休みとって観に行って相変わらず熱い奴だな!」 同僚で同期の3人はサッカー好きでそんな同僚との会話をしながら家路へ向かい、独身時代はよく同期の3人でスポーツバーで騒いでいた事を思い出し、原に「また、明日!」と足速に家へ向かう。 家に着き「ただいまー」と言うと、息子の波瑠に「おかえりなさい!
不冬眠症 子グマのポーが「おかあさんお腹すいて、眠れないよ〜」 「ポー、そんな事言ってないで冬眠しなさい!!」と母グマのムーンがなだめるけれど、ムーンも腹ぺこ…。 母グマのムーンはそのまたお母さんのミールに幼い頃に「冬は寒いから眠るのよ」と教えられていたけれど、この冬は春のように暖かく何よりお腹がすいて眠れない…。 小春日和 春になり冬眠出来ないムーンが子グマのポーと一緒にスーパーマーケットのような山を歩く。 歩きながらポーに「人間がいたら、注意するんだよ
安心して働いて… 今日は穴を掘り、明日は砂糖を探しに行く、おいら達の生きる毎日は繰り返される。 おいらは、アリのターク。 仲間と一緒に一生懸命働いて、ほんの少しのご褒美をアン女王様からわけてもらう。 そんなわずかなご褒美から少しずつアン女王に預けている。 アン女王が「みんな毎日働いてくれてありがとう。 預かったものはみんなおじいさんやおばあさん歳になった時に暮らせる様に貯めているんだよ!」 アン女王の話す言葉に、おいら達は疑う事もなく安心している。 オイラのおじ
あの日から… 東日本大震災から十数年の時間の経過と比例する様に記憶が薄れゆき、もう既に過去の出来事と思う人がいるのだろう? 壊れないものがない様に、絶対に安全は無い事をあの日に痛感していても、“故郷を捨てなければならない”人達を目にしたのに…。 壊れた原発の処理すら終わっていなく終わりすら見えないのに、未だに他の場所で原子力発電は動き続けているのはどうしてなんだろう…? 子供達の未来に処理のツケをまわして、今だけを生きているのはどうしてなんだろう…?