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進化の向こう側

【加納翔太が手にした野菜】
 
 いつもの様にスーパーに買物へ行く。
 私が綺麗に並べられた野菜の中から何気なく手にすると、“裏書き"大好きな妻の和美が“遺伝子組み換え作物"の表示に躊躇う。
 躊躇う彼女の視線は、左35度斜め下の幼い息子の賢人を愛おしく見つめている…。
 和美が「翔太、コレ戻して…」と話し、僕はさり気なく手にした野菜を戻した。



【高梨さんのお薬】
 「高梨さん、お母さんはB型肝炎ですね」と医師の日野川が淡々と話した。
 「先生、それって…」と直樹が言うと、日野川先生が「先ずは、しっかりと薬を飲んで下さい。」

 処方箋を手に母を連れて近くの薬局に行き、間もなく薬剤師の峰谷さんから「1日3回食後に飲んで下さいね」と手渡たされた。
 峰谷さんにカタカナ表記の薬品名でよくわからないけれど、私は「これは…」はと尋ねてみると、峰谷さんが「“遺伝子組み換え植物"を原料としたもので、植物なんで安全ですよ。」
 植物由来の言葉に漢方薬の様な勝手なイメージをいだき、母へ薬を渡した。
 母は薬を飲み始めてから、体のだるさや吐き気が無くなり、はつらつと元気に暮らし、「直樹、元気にしてるか?」なんて、元気な声で電話をかけて来る程になった。
 テレビではキャスターが「癌治療法の明るい未来が、“DNA操作”で完治すると発表…」と…。


【血統書】
 多くのペットショップには“血統"書付きの犬や猫がズラリと並んでいて、どれも可愛いくて、罪がない。

 “ブリーダー”の管理の下で、産まれた育った“血統”が主流となって、ペットショップに並び売買される。
 ブリーダーにとっては、売れない“モノ”は必要ないのだろう…?
 商売として見れば、そんな感覚なのだろうか…?
 それなら売れ筋を“コピー”したらと、思いつくだろう。
 コピーを創りだす技術確立されているのだから…。

 未来の子供達がペットショップに行くと、目の色や毛の色まで同じコピーされたイヌやネコが並べらている。
 「お父さん、このイヌが良い」とある親子が会話する横には、同じ顔をした親子が同じ会話をしている…。


【失敗したコピー紙】
 インターネットを見れば大体の物が揃い、やり方すら教えてくれる。
 こんな便利なツールを誰も手放さない…。 
 研究室ではない、そこらの民家のガレージで簡単に出来たりする。
 どんな事にも失敗する中で、コピーが失敗した“紙”ならゴミ箱に捨てる。
 コピーが”生き物”なら、どうだろうか…?
 生きる物を平気で殺す事が出来ない、心の急ブレーキで殺せない。
 ゴミ扱いされた生き物の中には、生き延びたり、逃される生き物もいたりして…。
 人の心は揺れるから、可能性は“ゼロ”じゃない…。

【新技術…】
 太古の昔、人は火を手にして、より便利さを求める不便よりは便利が良い。
 ナマモノに火を通して料理する様に、より安全を追い求めたが…、この新技術はどうだろう?
 探究心は止まらないから、進化する事が出来たのは事実だけれど…。
 その時々の人達が“新技術”で、より便利で好都合だけを求めて、“後処理技術”を“未来”に丸投してはいないかい…?
 チェルノブイリや福島は“新技術”で破壊され、街が元に戻らない…。
 そして、今も“新技術”での出来事の後始末に追われている人がいて。
 同じ時間を共に生きてる今!

 新技術の“光と闇”を“タラレバ”で!
大切な事を後まわしにすると、5本足のイヌ達が放射線を浴びながら走り出すかも…!
 
 
 ……………………終わり……………………
 
 

  
 







 
 

 
 


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