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小説:剣と弓と本

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セド、ナスノ、ライが「冒険」をするお話。2024/05/26第一部完。さて第二部は?
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2024年2月の記事一覧

小説:剣・弓・本011「静かの森3」

小説:剣・弓・本011「静かの森3」

【ライ】

「とりあえず皆さん、座りましょうか」と言ったのはナスノさんでした。
 その円い広場のちょうど中央に、セドさん、ナスノさん、ネネさん、そして僕の四人は向き合うように腰を下ろしました。まるで四つ葉のクローバーみたいだと思いましたが、それは口にしませんでした。ここは戦場ですからそんな牧歌的な発言は止めておきましょう。幸運が訪れるかどうかは僕たちの行動次第でしょうね。
「ここなら奇襲にも対応で

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小説:剣・弓・本010「静かの森2」

小説:剣・弓・本010「静かの森2」

【セド】

 ライは訳の分からないコトバをぶつぶつつぶやきながら手紙を訳していく。

「語形変化が複雑で…… 多少憶測はありますが、大意としてはこんなところでしょう。ネネ、とは固有名詞。彼女の名前だと思われます」
 ライが片眼鏡を押さえながら言う。

「命の恩人って大袈裟だなあ。この俺が人を助けるか……」頭をかきむしる。どうしても目の前の少女を思い出せない。

「セド、あなたは幾多の戦地をくぐり抜

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小説:剣・弓・本009「静かの森1」

小説:剣・弓・本009「静かの森1」

【ライ】

 さてと、僕の作戦通りセドさんが前衛、ナスノさんと僕は後衛。この陣形が奏功したと言えます。
 途中マダラオオカミザルとリクサメネズミ、そしてクジラミミズの群れに遭遇しましたが、流石はセドさんです。全く問題にせず瞬殺でした。やはり彼は強い。強すぎます。頼もしいなあ。
(それにセドさんを振り向かせなかったのもよかった)

 事前調査によると、この地帯では精神系モンスターの出現は確認されてお

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小説:剣・弓・本008「セドのルーティン」

小説:剣・弓・本008「セドのルーティン」

【セド】

 ……
 9996……
 9997……
 9998……
 9999……
 10000!!

 寝る前には剣を振る。
 雨が降ろうが槍が降ろうが毎晩欠かさない。戦いの中で生きる俺にとっては、これが不可欠なんだ。まあ、呪われた日課だよな。

 宿に戻る。ライとナスノは書き物に集中している。話しかけないでおこう。ったく二人とも俺とは完全に真逆だな。前に筆に触れたのはいつだ? 思い出せねえな。

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小説:剣・弓・本007「ナスノの詩」

小説:剣・弓・本007「ナスノの詩」

【ナスノ】

 さて、今日という一日が幕を下ろします。私にとってこの旅は美しさ「への」旅なのか。あるいは、美しさ「を巡る」旅なのか。いや、それ以外なのでしょうか? 答えは旅の中にあるのでしょうね。

 いずれにせよ、セド、ライという美しさの原石に出会った今日という日に感謝をしたいところです。

 さて、私の中の美しさを鍛錬する時刻です。今宵も詩を書いてから眠りに就くとしましょう。

 出来栄えはあ

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小説:剣と弓と本006「ライの手紙」

小説:剣と弓と本006「ライの手紙」

【ライ】

『さえずり』での一件の後、食堂『ひぐれ』へ行き、セドさん、ナスノさんとともに夕食を摂った。
 それにしても面白い二人だ。
 しかし、ナスノさん。彼は本当にユニークな人ですね。僕にだけ耳打ちしてくれたことは、絶対にセドさんには伝えないことにしましょう。

 さて、今日も手紙を書くぞ。一日の締めくくりは記術。これが記術士たるものの使命ですから。