暮れて

「暮れて」あとがき

2019年、あけましておめでとうございます。2018年最後に、「暮れて」というお話を書きました。「暮れて」ストーリーページ
年末の、なんとなく落ち着かない心と、なんとなく気だるいからだ。今年も終わってしまうなあ、はやいなあという気持ちの帳尻をあわせるみたいに、おせちをつめて、鏡もちを準備して、玄関ドアにしめ飾りをかざる。マグネットタイプのフックに、無理矢理ひっかけて。暮れてゆくときの、もの寂しさ。でも、一緒に想像するのは、新年がやってきたら漂うお雑煮のやさしいにおい。

わたしはそういう年末の空気が好きです。「おもちは?いっぱい買う?」「いっぱい買う」「丸いの?」「うん、まる」 家族や恋人や友人、親しい人たちの間でかわされる、そういう取るに足らない会話をかきたいなと思いました。

わたしが書きたい言葉は、今までもこれからもそういうものです。高校生の頃書き始めたショートストーリーは、その頃から男の子と女の子の恋の話が多かったけれど、そのふたりは一緒に踏切の前にいたり、駐輪場にいたり、電車に乗ったり、冷蔵庫の前にいたりしていました。恋愛というフィルターは通しているけれど、えがきたいのはその奥にある、だれの目にもうつる暮らしのはしばしです。
「暮れて」を読んでくださった方が、次にホームセンターへ行ったとき、店内のBGMをちょっとだけ、じっときいてくださったりするようなことがあれば、とっても嬉しく思います。ふつうのくらしが、今よりちょっとだけどきどきするものになるようなものをえがけたら。

2019年は、ストーリーをたくさん書く年でありたいと思っています。みなさま、どうぞ今年も、よろしくおねがいいたします。

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