人は自分の本質的なニーズに気づいていない

デザイン・シンキングとは

私は今デザイン・シンキング(思考)という思考方法をベースに、戦略とマネジメントを学ぶためにNYの大学院に留学しています。そもそも、デザイン思考ってなんやねんって話なんですが、簡潔に言うと問題提起と解決策を生み出す思考方法だと思います。「デザイン」という言葉が入ると美的な要素を思い浮かべますが、主は思考方法と理解しています。
では他の思考方法とどう違うか。この点については、常に人を中心に問題提起・課題解決を考えるという点だと思います。例えば、経理の方は、財務の課題に対して財務の知識を使って対処する。エンジニアの方は、プログラミングなどの技術的な課題に対して対処していく。デザイン思考は、人・ユーザーが体験する事柄について問題提起、解決策の提示をしていきます。それぞれ、特有の視点(財務・エンジニア・デザイン思考など)を持って課題を定義し、解決策を模索します。

具体例

ふむ。なんか凄そうだけど、いつどうやって使うの?要はモノづくりの人が使うの?抽象的な気がするんだけど?これは私が初めてデザイン思考の説明を受けた時の感想です。笑

デザイン・シンキングを活用した業種:UXデザイン

もう少し身近な話に置き換えていきましょう。例えば、UXデザイン(人がサービスやプロダクトを使用した際、どのように感じるかをデザインすること)。この職種では、デザイン思考を元に、人々の体験をデザインしていきます。例えばこんな話があります。アメリカのヒューストン空港では、手荷物受け取りの待ち時間に関するクレームが殺到していたそうです。そこで、空港はお客さんの声を真意に受け止めて、待ち時間短縮に取り組みました。結果的に、待ち時間は短縮されました。空港は再度顧客満足度を測ったところ、なんとクレームの数は変わらなかったそうです。困った空港が次に取った手段は待ち時間短縮ではなく、「待ち時間を歩かせる」でした。手荷物受け取り場を敢えて遠くする事で、これまで待ち時間であった時間を歩かせることにしたんです。
空港は「私(お客さん)は他者によって待たされている」というお客さんの感情に共感し、本質的な課題として注目し、お客さんにこれまで待ち時間であった時間に目的・ゴール(手荷物受け取り場へ辿り着く)を持たせることにしたんです。これよってお客さんの思考は「待たされる」から「移動する」へと変わりました。その結果、クレームは激減したそうです。「人」を中心に問題提起を行い、解決策を実施した私のお気に入りの例です。

人々は自分の本質的なニーズに気づいていない

重要なのは、「お客さんの声(クレーム)」を直接的に受け取っても課題は解決しなかった点です。言い換えると、お客さん自身は、自分の本質的な課題を理解していないんです。アメリカ自動車大手創業者のヘンリー・フォードはこの点を明確に発言されています。彼の言葉で「もし私が何が欲しいかと聞いていたとしたら、人々は『もっと速い馬』と答えただろう」と残しています。(関連記事:営業で「御社の課題は?」と聞く人が残念なワケ)当時のお客さんは、課題を「馬の速さ」と考えましたが、フォードは「A地点からB地点の移動」を人々の課題として解決に取り組みました。この様に、人々は自分の本質的なニーズに気づいておらず、この本質的なニーズを見つけ、解決に取り組むのがデザイン思考であり、UXデザインであると、私は考えています。


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