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流浪の食微録

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知られざる美味の探求と出逢いを求めて彷徨う、ロンリー・ミニマリストの食紀行。
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#小樽

小樽の余韻を辿る、あんかけ焼きそばの灼熱。

小樽の余韻を辿る、あんかけ焼きそばの灼熱。

「小樽あんかけ処とろり庵 エスタ店」2020年12月11日(金)

冬の風が吹く小樽の坂道を下ってみたい夢を見た。
冬靴で滑らぬように、しっかりと、ゆっくりと。
弾むような綿雪を踏みしめる音に耳を傾けながら…

振り返ると、そこに思い出だけ残っている。ここでもしその店の看板に出逢わなければ、虚しい心に震えていただろう。

札幌駅を結ぶ地下1階をそぞろ歩くと、小樽名物のあんかけ焼きそばを供するカウン

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未知なる美味が集う、小樽の夜の至福。

未知なる美味が集う、小樽の夜の至福。

「酒処 ふじりん」2020年11月28日(土)

列車の轟音、鄙びた商店街、静かに降り積もる雪。
知らない街だというのに、どこか懐かしいくせに、
賑わいのないそのどこかに、世界の没落を夢見る不埒な欲求を心の隙間に垣間見る。
歳を積み重ねるとは、そんな心象風景の繰り返しなのかもしれない。

謎めく小樽を巡る最後の店に入ると、意想外の混み様であった。
しかも客層は程々に若々しく、世界の没落など幻想に過

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静謐の雪が舞う小樽、唯一無二の焼鳥を求めて。

静謐の雪が舞う小樽、唯一無二の焼鳥を求めて。

「伊志井焼鳥店」2020年11月28日(土)

日本酒でほんのりと暖まったところで、次なる店を求めた。
本格的に小樽で酒を飲み歩くという行為は初めてであるせいか、小樽の奥処へと足を向ける時の到来に、いっそう心踊った。

駅前には、おそらく札幌での宿泊を回避した旅人らしき人々が散見された。
キャリーケースの車輪に雪が絡んで前に進まない姿に、
どこか羨望の眼差しを以て眺め過ぎた。
振り返ると遠方への旅

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車窓に映る雪、日本海、そして小樽角打ちの哀愁。

車窓に映る雪、日本海、そして小樽角打ちの哀愁。

「銘酒角打ちセンター たかの」2020年11月23日(土)

小樽は、物寂しい冬が似合う。
友とともに小樽に行くことを決めてから、心躍る日々が続いていた。
そしていざ、空席の目立つ列車に乗り込む。
日本海に近づくと、雪化粧された世界が突如として現れた。

それにしても、小樽に降り立つのは何十年ぶりであろう?
JRに乗りさえすれば30分もかからずに着くというのに、いつでも行けるという意識がずっと小樽

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