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【人生最期の食事を求めて】福岡の夜を飾る定番屋台バーの穏やかなひととき。
2024年10月5日(土)
屋台バーえびちゃん(福岡県福岡市中央区)
小倉を発ち、博多へと足を踏み入れたのは、15時を回った頃であった。
地下鉄に乗り込み、天神方面へ向かう。
幾度訪れてもこの街が放つ活気と人々の脈打つ生命の息吹は、私を否応なく捉え、心を魅了してやまなかった。
新たに屹立し始めた巨大なビル群の姿も、この都市が持つ不屈の活況を象徴しているかのようだ。
それこそが“天神ビッグバン”
【人生最期の食事を求めて】その名を全国に轟かせた焼きうどん発祥の地へ。
2024年10月5日(土)
お好み焼き いしん(福岡県北九州市小倉北区)
秋を迎えた南国の夜明けを遅い。
6時、ようやく窓辺が仄かな明るみを帯び始めた。
外はさすがに幾分ながら肌寒さを感じたが、それでも半袖でも耐えられる早朝だった。
ひと気のない街中を歩いた。
中央公園を掠めて西郷隆盛像に辿り着く。
まるでその存在自体が巨大で威風堂々としていたことを物語るその像は、この国の現状を嘆いているかの
【人生最期の食事を求めて】かっぽうぎ姿の庶民的安らぎと鹿児島焼酎の奥深さ。
2024年10月4日(金)
小料理 みづき(鹿児島県鹿児島市山之口町)
天文館の中心に位置する大型商業施設の一角でコーヒーを飲みながら、道行く人々を眺め続けた。
窓辺から見せる人並みは、どこか寛容な微笑みと気さくさ、陽気そうな振る舞いが誰からも滲み出ているに思えた。
10月の20時になろうとしているのに皆一様に半袖で、若者たちにいたっては短パンにサンダルという身なりが大半だった。
『法の精神』
【人生最期の食事を求めて】鹿児島愛が溢れ出る郷土料理との逢瀬。
2024年10月4日(金)
天文館 吾愛人 本店(鹿児島県鹿児島市東千石町)
黒田清輝、伊地知正治、五代友厚、大久保利通、西郷隆盛といった日本の歴史を語るうえで欠かせない人物たちの像が街の処々に、鹿児島を見守るように静かに佇んでいた。
薩摩藩の勃興と隆盛、そして戊辰戦争という数々の苦難を刻んだ街を歩くのは、実に感慨深い。
時折過ぎ去る電車の擦過音が小雨の降る天文館に轟いていた。
天文館という地
【人生最期の食事を求めて】安寧と華麗と手際の良さに酔う金沢の夜、再び。
2024年9月22日(日)
木倉町さんぼ(石川県金沢市木倉町)
“弁当忘れても、傘忘れるな”
“曇っていても、雨が降っていなければ『晴れている』”
そんな風説通り、金沢は雨が降っては止み、『晴れて』は雨が降るを繰り返す。
無料サービスの置き傘プロジェクトや100円の運賃で観光スポットを巡るまちバスも、雨の多い街には最適なアイディアだとつくづく思った。
香林坊に降り立ち、コーヒーを飲みながら雨を
【人生最期の食事を求めて】豪奢と品格を保つ金沢名物というバイアス。
2024年9月22日(日)
金沢まいもん寿司金沢駅店(石川県金沢市木ノ新保町)
福岡は深夜未明に雷が鳴り響き、雨が強く降り続けていた。
私は次なる目的地に向かうべく、早朝の博多駅へ向かった。
博多駅から福岡空港駅へはおよそ5分で到着する。
国内でこれほどまでに空港への交通利便性の高い街は福岡以外にないことを再認識した。
7時20分の福岡空港発、小松空港着の便は天候調査中となっていた。
1月1
【人生最期の食事を求めて】裏天神の劇場が放つ華麗なる演出と漲る活力。
2024年9月21日(土)
すみ劇場 むさし坐(福岡県福岡市中央区)
餃子を愉しんだ後も、私の腹部にはまだ余白を感じ取りながら、夕刻に歩いた天神南のか細い路地裏に再び惹き込まれていった。
細い路地裏の薄っすらと濡れた歩道に、洗練を纏った真新しい店の点ずる灯りが転々と反映し、それを踏みしめる人々の足は路地裏の四方へと散らばり、時が経つにつれてその人影は増えていった。
過去にもこの通りを歩いた記
【人生最期の食事を求めて】大衆性とモダニズムを兼ね備えた巨大餃子店の出現。
2024年9月21日(土)
餃子屋 弐ノ弐 渡辺通店(福岡県福岡市中央区)
唐突に雨が降ったかと思うと、唐突に止む。
かと思うと傘が役立たないほどの土砂降りになる。
9月下旬を迎えるというのに、まるで梅雨のようだ。
夕刻の頃合いになっても蒸し暑さがいっそう増し、日常生活では生じない部位にまで発汗し、肌の節々はベタつく。
そんな強烈な暑さと深いな湿度が街中に沈殿し続けていた。
天神駅を抜け、薬院
【人生最期の食事を求めて】福岡屈指の回転寿司が誇る本領の試み。
2024年9月21日(土)
ひょうたんの回転寿司(福岡県福岡市中央区)
朝食を終え、当て所なく彷徨って辿り着いた場所は警固公園だった。
天神エリアの中心の象徴でもあり、天神駅の寄り添うまさに都心の公園でもあった。
私は福岡に訪れる度に警固公園にも足を伸ばすが、最近では“福岡のトー横”“警固界隈キッズ”と呼ばれるようになるほど治安が悪化しているという。
と言っても、土曜日の午前中ならそんな印象の
【人生最期の食事を求めて】骨の髄まで吸い尽くす鯛の誘惑。
2024年9月21日(土)
福魚食堂(福岡県福岡市中央区)
地下鉄「赤坂」駅を降りて外に出た。
早朝の空は今にも雨が降り出してもおかしくはない雲行きで、さらに季節を度外視した蒸し暑さが体全体をすぐさま覆った。
8時30分を過ぎていた。
日常において朝食を食べることはないのだが、この地はその日常を容易く破壊する。
私の足は、過去に幾度か訪れた市場会館へと向かっていた。
近づくほどに潮の香りが近づ
【人生最期の食事を求めて】福岡の夜に欠かせない屋台バーのパイオニア。
2024年9月20日(金)
屋台バーえびちゃん(福岡県福岡市中央区)
大名から天神へと歩いた。
もはや歩き慣れ親しんだ道のようにも感じられた。
強烈な蒸し暑さにもかかわらず、天神駅前に点在する屋台には行列や殷賑が絶えず、しかもまた新しい屋台にはバスを待つ人々のような長蛇の列を生み出していて、街全体がどこにもない繁華な雰囲気を発していた。
私の足は中洲方面に向かって、強い意思のような力で歩き進
【人生最期の食事を求めて】空腹の限界突破がもたらす蕎麦の至福。
2024年9月10日(火)
正直庵(北海道札幌市南区)
明治時代の自然主義作家、島崎藤村の代表作『夜明け前』は、「木曽路はすべて山の中にある」という書き出しから始まる。
それに比すれば、札幌は約6割が森に囲まれている。
四季の移ろいは明確で、人口約200万人が暮らす街は世界でも稀であろう。
最近はヒグマの出没が頻繁に報道されるが、だとしてもこの大自然を間近にして暮らすというダイナミズムは、ここで
【人生最期の食事を求めて】個性が踊る大名エリアの路地裏に佇む和の粋。
2024年9月20日(金)
ごはんや松毬(福岡県福岡市中央区)
9月下旬とは思えないほどの狂おしい暑熱と蒸し暑さに覆われた。
日中の気温は35度を超え、天神の信号機を待つ間にも夥しい汗が額や脇、そして膝裏にまで浮かんだ。
真夏と変わらない暑さでも、交差点を交錯する人々の表情はどこか涼しげでいながらも、きっとこの暑さには辟易としているのだろう。
商業施設に足を踏み入れると、強烈な冷房が汗ばむ全身
【人生最期の食事を求めて】八丁堀の路地裏に見出す居酒屋の慈愛。
2024年8月4日(日)
お食事処いち(東京都中央区八丁堀)
満ち足りた疲労感のせいだろうか?
それとも熾烈な炎を浴び続けている日々のせいだろうか?
極端に減らしているアルコールを求めて、私は慣れない街を歩き続けた。
隅田川と亀島川とが交錯する町、八丁堀。
江戸時代初期に八町の長さの堀が作られたことから、まさに文字通りの町名が名づけられたという。
この地には江戸町奉行所に司法を担う与力や警察