[RIZIN40]キム・スーチョル VS. フアン・アーチュレッタ 考察
全面対抗戦3枚目のカードもメインイベントクラスの組み合わせとなっている。
キム・スーチョルは韓国の団体「ROAD FC」のフェザー級王者であり、一度は戦線を退いていたが、復帰してから王座を目指し再びその腰にベルト巻いた実力者である。
とにかく前に出てアグレッシブに戦う選手で、スタミナとパワーに加えて気持ちの強さと打たれ強さがストロングポイントとして挙げられる。
一方のフアン・アーチュレッタはBellatorのバンタム級で一度王座を獲得している元世界チャンピオンだ。
王座を失った後もランキングの3位に位置している強豪であり、トップクラスの選手と渡り合えるだけの実力を持っている。
レスリング能力が高く、フルラウンドしっかり動くことが出来るだけのスタミナもあり、攻め手の引き出しも豊富な選手である。
「スタミナがあってアグレッシブに動く」といった点で近いファイトスタイルを持つ両者だが、シンプル且つ強力なスーチョルに対してアーチュレッタは多彩で対応能力が高い。
スーチョルは前へ出ることで攻めながら距離を潰して相手の攻撃を防ぎ、嫌がって強引に攻めてきたらタックルでカウンターを取ってテイクダウンを狙いにいくなど、常に攻め手を重ねていくことで主導権を握る展開を作っていく。
それがハマれば勝利する確率は高く、スタミナが落ちる後半に入ってもポイントで優勢に立っている分、余裕を持って動くこともできる。
しかしその流れの何処かで綻びが出てしまうと、立て直すための選択肢に広がりがないので、押し切るだけの攻めが展開出来なくなるところがある。
アーチュレッタは独特なステップで踏み込んで打撃を振ったり、上下の打ち分けや蹴りを混ぜたコンビネーションで打撃をヒットさせ、時には意表を突く動きも織り交ぜるトリッキーさもある。
場合によってはそれが雑な動きに繋がることもあるが、相手に対応させるための選択肢を広げることにもなる。
またアーチュレッタは速く真っ直ぐなジャブも持っている。
もしかしたらこれがスーチョルの前進を鈍らせる一つの武器になってくるかもしれない。
それを活かしてスタンドの攻防でアーチュレッタが優勢を取ったとしたら、スーチョルはリズムを取り戻すのに苦労することになるだろう。
何故ならスーチョルの攻撃の起点がそこで抑えられてしまうからだ。
仮にその展開から抜け出そうとタックルを狙いに行ったとしても、レスリングに長けたアーチュレッタからテイクダウンを奪うことは難しいだろうし、組みの攻防でも上手を取られたらアーチュレッタを崩すのはより厳しくなる。
仮にテイクダウンを取ったとしても長い時間キープ出来るかどうかは怪しい。
ただ今回はRIZINルールでの戦いなのでいつものケージとは違う分、起き上がり方も変わってくるので、もしかしたら抑え込むことも出来るかもしれない。
しかしタックルを切られてしまえば、分が悪いと感じているところで戦わなくてはいけなくなるので、気持ち的にも余裕がなくなり一発一発の攻撃が身体的なダメージ以上に重くのしかかることになるだろう。
ただ仮にそうなったとしてもスーチョルには希望が持てるポイントがある。
それは「打たれ強さ」
スーチョルは判定と一本負けは経験しているが、KO・TKOでの敗戦はない。
アーチュレッタは優勢を取っていても一発をもらってしまったことで落とした試合もある。
スーチョルが最後まで前へ出続けることが出来たとしたら何処かでKOまでいかずともダウンを取るだけの一発を当てることが出来るかもしれない。
それがもしヒットしたらパウンドアウトでの逆転勝ちが生まれる可能性もある。
相性によってはその一発が生まれる可能性が低い場合もあるが、個人的にこの二人の組み合わせはその一発が出る可能性がある組み合わせだと思う。
スーチョルは距離を詰めて手を出すだろうし、アーチュレッタはそれに対応する動きを取るだろう。
お互いが激しく消耗して後半戦に組んで膠着を繰り返す展開にならなければ、最後までスリリングな戦いが見られるのではないだろうか。
アジアでトップクラスの実力を持つオールラウンダーとBellatorのチャンピオンクラスのファイターとの一戦。
RIZINやONE、そしてROAD FCで見せたスーチョルの脅威は果たして北米のBellatorまで届かせることは出来るのだろうか。
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