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二刀流、鈴木千裕。

RIZINアゼルバイジャン大会でフェザー級チャンピオンのヴガール・ケラモフに挑戦した鈴木千裕は敵地で見事TKO勝利を挙げ、王座の獲得に成功した。

これで鈴木千裕はキックボクシングと総合格闘技、二つのベルトを手にすることになり、兼ねてから口にしていた二刀流をハッキリとした形で体現してみせた。

敵地で輝いた野生とブレない芯


引用元:©︎RIZIN FF

鈴木千裕はここ最近の数試合でとても濃厚なキャリアを積んでいる。

クレベルには圧倒的な差を見せ付けられてしまったところはあるが、キックで南米の強豪マルコス・リオスを倒し、MMAではパトリシオ・ピットブルとヴガール・ケラモフに勝利するというとんでもない戦績を築いた。

しかもどれもフィニッシュでの勝利となっている。

そんな鈴木は今回、未だに残る「MMAファイター鈴木千裕」の懐疑的な要素をヴガール・ケラモフというフェザー級No. 1ファイターと戦うことで払拭することが出来るのかどうか、その真価が改めて問われることになっていた。

負ければ「まだまだ」と見られ、勝てば「本物」と認められる。

相手は頭一つ抜けた実力を示し続けているケラモフであり、場所は彼のホームのアゼルバイジャン。

恐らく多くの人がケラモフの勝利を予想していたのではないかと思う。

私もケラモフの勝ちは揺るがないだろうと思っていたし、勝敗によって生まれる両者への評価もそれで妥当なものになると考えていた。

しかし結果は鈴木千裕の勝利、しかもTKOでケラモフを沈めている。

目を疑うくらいの衝撃だったが、限られた勝ち筋を確実にものにした見事な勝利であったことを知り、鈴木千裕が紛れもない「本物」且つ「持っている」選手であることを理解した。

立ち技出身のファイターがMMAを行う際にぶつかる大きな壁を彼は何故こんなにも早く飛び越えることが出来たのだろうか。

そこには彼の強みであるブレない芯の真っ直ぐさと野生的な力強さが関係しているのではないかと個人的には思っている。

アウェイだったことがむしろ彼の野生的な力強さを引き出し、「試合」というよりも「戦い」に臨む姿勢を作ることに繋がり、海外の選手と渡り合えるだけのハングリー精神を育んでいたのではないかと思う。

また、「勝つ」という気持ち以上に「倒す」姿勢を忘れないところも鈴木の強みであり、そこが彼の気質の力強さと合わさることで、クリティカルな一撃を様々な局面の中で引き出していくことが出来ているのだと感じている。

日々の鍛錬や辛い練習を乗り越えて培ってきたものが結果に繋がっている、という部分が主な所なのだとは思うけれど、そういった努力以外の「気質」といった部分も大いに関係してきているのではないか思う。

どんな相手・状況でも臆さず勝ちに向かって突き進む、言うのは簡単だけれど実行するのは非常に難しいこと、それを彼は日々の研鑽と自身の気質を活かすことで実現していたように感じた。

それが理性と迷いを払拭し、良い意味でシンプルになれることで「強敵+アウェイ」といった状況下の中でも大胆な一手を打っていける状態に持っていくことが出来たのではないかと思う。

アンダードッグの強かさを感じる対策


引用元:©︎RIZIN FF

恐らくMMAのスキルセットでは鈴木千裕よりもケラモフの方が良いものを持っているだろう。

今回の一戦も勝てる確率自体はケラモフの方が高かったのではないかと思っている。

そんなケラモフの大きな武器となるテイクダウンを全ラウンドを通して凌ぎ切ることは難しいと鈴木サイドは恐らく感じていたのではないかと思う。

だからこそ倒されることを前提にして、その状況から出来る反撃を作り込んでいたのではないだろうか。

ある程度の力量差を客観的に捉え理解し、計算した上での作戦形成に鈴木千裕のチームが持つ冷静さと強かさを感じる。

結果的に下になった状態からの三角をフェイクとすることでケラモフに距離を取らさせて、下から打撃を当てるという予測したような反撃チャンスを作り出している。

鈴木千裕には単純明快なガチンコ勝負を仕掛けていくイメージがあるが、強者との勝負ではその苛烈なファイトスタイルの下に打ち倒すための崩しがちゃんと用意されており、思い切りの良さと強かさを併せ持っていることが窺える。

そこからはファイターを勝たせるため準備を整えることが出来る鈴木チームの優秀を感じ取ることも出来る。

だからこそ立て続けにジャイアントキリングとも言える劇的なアップセットを起こすことが出来たのかもしれない。

首を狙われる側


引用元:©︎RIZIN FF

RIZINフェザー級のベルトを獲得した鈴木千裕はこれでキック以外の舞台でもその首を狙われる存在となった。

RIZINでこれまでにフェザー級の王座が防衛されたのは牛久絢太郎の1回のみ。

恐らく鈴木は次戦でクレベルに勝利した金原正徳とタイトルマッチを行うことになるだろう。

またしてもMMAの完成度が高いファイター、加えてキャリアの分厚い大ベテランが相手となるが鈴木はそこを乗り越えることが出来るのだろうか。

それ以外にもパトリシオ・ピットブル・ヴガール・ケラモフ、クレベル・コイケに斎藤裕など錚々たる面々が、そのベルトを奪いにやってくることになるわけだが、未だ成長途中と鈴木は王者としてどこまでやっていけるのか。

タイトルマッチを通して更なる進化を遂げていくことが出来るのかどうかという点も含めて、今後に大きな注目が向けられる。

火の玉の意思を継承する稲妻ボーイの活躍がどこまで轟くのか、これからの活躍が非常に楽しみである。


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