絶対に採用してはいけない人物を見極める方法
はじめまして、エンパワーメント株式会社執行役員/人材事業部責任者の廣田です。
前回、候補者への求人メッセージの訴求の仕方についてnoteを書いたところ、「メッセージを改善して応募がたくさん来ても、候補者の見極めが難しい。以前に採用した人材が全く活躍せずに辞めてしまったことがあり、トラウマになっている」という声をいただきました。
そこで今回は、候補者の見極め方をテーマにnoteを書きました。
「採用した人材が入社後に思うようにパフォーマンスを発揮しなかった」「組織に悪影響を与えるような人を採用してしまった」そんなご経験をお持ちの経営者/採用担当者の方はよろしければご一読ください。
絶対に採用してはいけない人物を採用してしまうと
「面接の時の印象と全然違う」…期待を込めて採用した人材が入社後に全然活躍してくれない、採用に長く携わっていると、こんなことは必ず経験していると思います。
不適切な人材の採用は、組織全体の生産性を下げる大きな要因となりえます。新しく入った人材が想定以下のパフォーマンスを発揮してしまうことによって、マネジメント・育成工数の増加、周囲のモチベーション低下など、様々な問題を引き起こす可能性があります。
私が採用を支援しているクライアントで、絶対に採用してはいけない人物を採用してしまった会社の事例をご紹介させていただきます。
優秀な営業パーソンを採用したが…
とある人材紹介会社のX社では、優秀な営業パーソンのAさんを採用しました。
Aさんは、大手人材紹介会社で高い実績を出してきた営業パーソンです。法人営業として、大企業をはじめとするアカウントを担当し、部内でもトップの営業成績を積み上げてきました。
リーダーとして5名のマネジメントも経験しており、X社では幹部候補として高い期待を寄せて採用しました。
鳴物入りで入社したAさんでしたが、実際は入社後に全く活躍できなかったどころか、周囲への愚痴や不満をオープンにするタイプの方でした。Aさんは周囲のモチベーションを下げてしまうなど、部門全体に悪い影響を与えた上で早期に会社を退職しまったのです。
何が合わなかったのか…
Aさんは過去の実績を偽っていた訳ではありません。Aさんの前職の実績は事実でした。
しかし、そこで培ったスキルはX社で求められるスキルとはマッチしておらず、さらにAさんはX社のカルチャーにも合っていなかったのです。
では、具体的にどのようなアンマッチがあったのでしょう。
スキルのアンマッチ
Aさんは前職の大手人材企業では法人営業を担当していました。しかし、X社で求められたのは法人も候補者も両方対応できる、いわゆる両面のエージェントとしての働き方でした。法人営業としての経験も豊富だったため、対人コミュニケーションに自信があったAさんは入社前に候補者対応の業務は上手くやれるだろうと自信を持っていました。しかし、前職のように会社のブランドがない状態で初対面の候補者と信頼関係を築き、転職における課題をヒアリングし、課題を解決できる求人を提案するというプロセスを適切に行うことは、Aさんには難しかったのです。また、大手で活躍したという経験はAさんに不要なプライドを植え付けてしまい、周囲のアドバイスを素直に受け止めることができなくなっていました。
カルチャーのアンマッチ
Aさんの前職の大手人材企業は、結果主義・合理主義的な傾向が強く、かつ直接的なコミュニケーションが重んじられており、正しい意見は誰に対しても主張することが善しとされるカルチャーでした。数字が出ない営業社員は上司から詰められますし、「顧客が間違っていたので詰めた」という経験を武勇伝のように語られる雰囲気がありました。 一方、X社は周囲との調和や相手を慮ったコミュニケーションが重視されるカルチャーで、部下に対しても上司は寄り添い、顧客に対しても強い口調で反対意見を述べることはしない、いわゆる優しい人が多い会社でした。
Aさんは、法人営業としては一定のスキルを持っており、そのノウハウを周囲のメンバーに教えるという役割を入社後から担っていました。しかし、顧客に対して物申すAさんの法人営業のスタイルに違和感を覚える人は社内にも多く、また顧客からもAさんの高圧的な態度に対してクレームが入ることもありました。自分が教えたやり方を実践しないメンバーを容赦なく詰めるAさんは社内から反感を買うようになり、次第に孤立していったのです。
鳴り物入りで入社したものの数字を上げられないAさんの焦りは苛立ちに変わり、周囲に馴染めない孤独感は不満に変わっていきました。Aさんは、自分が活躍できないことを環境のせいにするような言動を繰り返し、やがて入社から一年を経たずに辞めてしまったのです。
絶対に採用してはいけない人物の見極め方
Aさんは優秀な人材ではあったものの、強い成功体験を持ち、かつその成功体験がX社の求めるスキルやカルチャーとマッチしていなかったために、X社にとっては採用してはいけない人物だったのです。
では、絶対に採用してはいけない人物を見極めるためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。
私は以下三つのポイントが重要だと考えています。
明確な評価基準
そもそも、選考において候補者をジャッジする目的はなんでしょうか。私は、「候補者の入社後パフォーマンスを予測すること」だと考えています。候補者の入社後パフォーマンスを見立てることで、合否の判定ができ、適切な提示年収を割り出すことができ、かつ入社後の適切な配属やオンボーディングの設計を行うことができます。
そして、パフォーマンスを予測するためには、パフォーマンス発揮に必要な要素を定義し、その要素を評価基準を設けることが必須です。
適切な評価方法
評価基準を決めたあとは、その評価基準に従って具体的にどのような方法で評価すればよいのか、を決める必要があります。書類選考で見るべきポイントは何か、面接でどのような質問を投げればよいか、適性試験やケーススタディは必要か、といったことを評価基準に基づいて設計するとよいでしょう。
リスク最小化の取り組み
評価方法に含まれますが、採用リスク最小化のためにリファレンスチェックなどを行うことも重要です。今は様々なリファレンスチェックのサービスがあり、オンラインで完結し候補者や推薦者に負担をかけないようなものもありますので、比較検討してみるとよいでしょう。
魔法のように人を見極める方法はない
採用をやっていると、スカウターのようなデバイスや、ライブラのような魔法はないものかと夢想してしまうときがあります。
人事界隈でも、魔法のようなTIPSが出回っているときがあります。例えば、自社のことを「うち」と呼ぶ人は当事者意識が高く、「この会社」と呼ぶ人は他人事のように捉えている、そこで見極めることができる、というようなTIPSです。魔法のような方法を提示するかのような煽りタイトルとなっている中申し訳ないですが、(あくまで私個人の所感として)真剣に採用に向き合っている人からそのような話を聞いたことはありません。
一時間の面接を2、3回繰り返したところで、その人を完璧に理解することはできません。ましてや、たったひとつの質問への回答や、何気ない言葉のチョイスでその人を見極めることはできません。
採用に関わる人間として私にできることは、魔法のようなやり方を夢想することではなく、可能な限り正確な評価基準と評価の方法、そしてどうすればリスクを最小化できるのか、といった現実的な取り組みをコツコツと地道に続けることだけです。
まとめ
今回のまとめです。
選考における評価の目的は「候補者の入社後パフォーマンスを予測すること」
目的達成のためには、「明確な評価基準」「適切な評価方法」「リスク最小化の取り組みが重要」
人を見極める魔法のような方法はない
前提として、良い評価基準を作るためには要件定義が重要だったりするのですが、その話は機会があれば書きたいと思います。
以上、駄文にも関わらずここまでお付き合いいただきありがとうございました。
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