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[詩]ザクロ中毒

電気をつけるか迷う午後3時 ひとり
まぶしい冷蔵庫にザクロ ひとつ
物珍しくて買った得体の知れない果物、らしきもの

スマホで食べ方を調べよう
ふと指を止める
スマホの奥に得体の知れない実が ある

ザラザラと赤い 得体の知れない実
歪な まる 

たこさんウインナーみたいな足 
ポキポキ折ってシンクへ散らす
やみつきになる
中は どんなだろう

包丁の刃 入れると変な感触
きもちわるい
親指 切れ間にぐっと押し込む
メリメリ裂ける 
親指の爪 果肉を覆う薄膜を破る
あっけなく破る
爪と肉の間 赤い汁がたまって

きもちわるい

残暑の嫌な汗 背骨をまっすぐ這って
走る いやな 緊張の蛇

荒々しく裂かれてしまった得体の知れない実
やさしく実の肉を取り出そうとするのに
どうにも襞が邪魔をする
得体の知れない実 大きくなる
こわい こわい

こわい なりふり構わず かぶりつく
はじける甘酸っぱさ
苦く渋い甘酸っぱさ

口いっぱいの種
にがい にがい
シンクに吐き出す

かぶりつく 吐き出す かぶりつく 吐き出す
抜け殻になった 得体の知れない実
シンクへ投げ出される

色のないシンク
垂れる 実の血
染まった手

また のどが かわいた

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