水辺あおい

子供のころから本が好きで、文芸誌に投稿を続けてきたけれど受賞がかなわなかった人間です。…

水辺あおい

子供のころから本が好きで、文芸誌に投稿を続けてきたけれど受賞がかなわなかった人間です。このあたりで書き方を変えてみようと、noteを始めることにしました。まずは掌編小説と読書エッセーを投稿するのが目標です。もし良かったら、のぞいてみてください。

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結局、新人賞が受賞できなかった人の話

■ 市川沙央さんの話に心を打たれました  先日、『ハンチバック』で芥川賞を受賞した市川沙央さんは、重い障害を抱えながら20年、投稿生活を続けたそうです。『ハンチバック』は、それまでの書いてきた小説の作風を変え、純文学的なものに振り切って賞をつかまれました。  世の中には、人知れず投稿生活を続けていらっしゃる方がいるんだなと改めて思いました。私も何を隠そう、なんだかんだと言って15年近く、小説の投稿を続けたかもしれません。でも、どれ一つとして引っ掛かることはありませんでした

    • バチェラー5最終回を見ましたか【注意:思いっ切りネタバレあり】

      ■バチェラー、最終回までみたよ!  みなさん、こんにちは! 毎日まだ残暑が厳しいですが、いかがお過ごしでしょうか。わたくしの方は五週目にして、とうとうさぼって小説の更新をやめてしまいました。えっ、意識が低い? だから言ったでしょう。僕は飽きっぽくて、何だって必ず長続きしないんだって……。  ところで、バチェラー最終話の配信を見ましたか。ここからは、思いっ切りネタバレをしていくので、まだ見ていない人は自分で判断をしてください。青春時代を運動部にささげ、見た目も美しくてウエディ

      • 【愛恋掌編④】青い錠剤

         年を取るということは、恋愛、もっとはっきり言えば、性愛が、抽象化していくことなんだと思う。  好意を抱かせる女性が目の前にあらわれたとする。以前ならば直線的に反応していた体の動きが鈍い。異性と恋愛することの目的は性愛ではないけれど、究極のコミュニケーションが体の触れ合いにあるとするならば、最後の頂点に達することができないのではないかと、不安を覚える。  そもそも自分は話すことも、話を聞くことも下手ではないか。これに肉体の不如意も加わったとすれば、一体、自分は何をもって女

        • 小説を書く才能がない人の話

          ■ 自分には、才能がないともう言い切ってもいいと思う  自分には才能がないというと、そんなこと簡単に言うなとか、本当に努力をしたのかとか、すぐに言い返してくる人はいるはずだ。私自身も、若いころにはそう思っていた。そのような自嘲に浸るくらいならば、少しでも小説と向き合っていい作品が書けるように努力をするべきではないかと考えていた。  でも、この年になってくると、「才能がない」という言葉は、一種の福音のようにも聞こえてくるのだ。いつまでも、努力をするのは苦しい。一生、芽が出な

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          【愛恋掌編③】扉を閉められないホアさん

           部屋の扉、引き出し、押し入れ、窓ガラス。ホアさんは、家のあらゆる締めるべきものを、少しだけ開ける癖がある。わざと開けているという雰囲気でもなく、ふわっと閉めて、最後まで閉じきらないような感じだ。玄関のドアはさすがに、防犯上の理由から閉めるけれど、乱雑には扱わない。  特に、内側から鍵を掛けるときは、大きな鍵音が響かないように、細心の注意を払ってゆっくりと金属の器具をまわす。    ホアさんは、僕たち同世代の日本人からは想像がつかないくらいとてもしっかりした人だ。日中はコン

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          バチェラー5を語りたい!

          ■恥ずかしながら、バチェラーにはまっています  打ち明けるのが少し恥ずかしいのですが、アマゾン・プライムの「バチェラー」を見るのが好きです。夏風邪を引いて寝込んでいるのをいいことに、「バチェラー5」を配信中の6話まで一気に見てしまいました。  自分の人生では決して行けそうにない最高のリゾート地で、美しい女性たちが、恋に旅に明け暮れて……これ以上の治療薬が世の中にあるでしょうか。  今回の出演者もみんな、かわいかったなあ。我らがツートップ(?)、誰もをハッピーにしてくれる

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          【愛恋掌編②】面倒くさい男と別れる方法

              僕の数少ない趣味は、休みの日に家の近くのドトールに出かけて、人の話を聞くことだ。古い商店街の一画にある店では、必ず面白い話が耳に入ってくる。休みの日のたびに競馬新聞を持って予想をしているおじさんとか、高校の同窓会帰りのおばさんたちとか、若い女性が中年にネットワークビジネスの勧誘をしている様子とか。(でも、これは、かわいい年下の女性への下心のためだまされている中年男性の姿が自分と重なるから、あまり好きではない)  何といっても聞いていて心が浮き立つのは、今ではもう接

          【愛恋掌編②】面倒くさい男と別れる方法

          【愛恋掌編①】 先生とリボン

               人間は、自らの命の危険にさらされたとき、最も大切な人の名前を呼ぶという。僕がそれを知ったのは、あの大きな地震があった日だった。  その日は春休みで、東京の大学に進学していた僕は里帰りをしていた。いい大学生が旅行もせず、友達とも遊ばず、実家でごろごろするなんてと思われるかもしれないけれど、みんなが大学生になったからといって、急にきらきらした人間になれるわけではない。東京に行っても、僕は僕のままだった。  両親は大学進学とともに、一人っ子だった僕の子育てに興味を失った

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