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私たちはNostimiaをいかにして設立したか

ことの起こりは1980年代のイギリスでした。サルモネラ菌に汚染された卵を食べて多くの人が病気になったのです。 それらの卵は、ニワトリを単に卵を産む「機械」として、動く余地もないケージに入れて飼っていたいくつもの養鶏場の産品でした。 汚染された餌を与えられ、今度は卵が汚染されたのです。できる限り自然な環境でニワトリを飼っていれば決して起こらなかったはずのことでした。

その後の数年間、無数の国で同様な話が数多く明らかになりました。 英国では狂牛病、スペインではオリーブオイル中の発ガン性添加物、中国では過度な量の抗生物質の入った蜂蜜や、ほうれん草の中の殺虫剤などなど……。
欲望のある限り、利益のためならなんでもする人間たちがでてくるのです。

ひとつには上記のような理由から、そしてひとつには、ギリシャがおそらくヨーロッパで最後の「自然のままである国」であることを知っていたことから、 私たちは日本に来て「ノスティミア」を創立することを決意したのです。

それがチャレンジの始まりでした。何百通もの手紙、eメール、ファックスをギリシャの生産者たちに送り、そのほとんどから返答を得ました。 カタログや価格表、その他の資料が山積しました。あらゆる情報を集めてから私は車で長い旅に出、それらのすべてをひとつひとつ訪ねて回ったのです。 1ヶ月間、1万キロの旅の果て、私は望んでいた製品を得ました。

製品は他の多くを却下した中から選び抜いたものです。それぞれ有機農法、あるいは自然を大切にするやり方で生産されたものであり、 栽培にも生産工程にも化学物質は一切用いていません。太古の昔から生産してきたのと同じ伝統的な方法で作られるものばかりです。 彼らの土地や伝統に深い愛を持ち、そこに住み着いて働き、人間と自然を大事にする仕方でその土地からの贈り物を手塩にかけている人々によって作られるものばかりです。

誇りと自信を持って私は彼らの産品を皆様に差し出します。それらをもって両親は私を育ててくれました、そして私はそれらで娘を育て、娘はまたそれらで子育てをするでしょう。なぜなら私の生まれた土地で生産されたそれらが、健全で、純粋で、美味であることを知っているからです。

20年後ノスティミアが2001年に設立してからもうすぐ20年目に入ろうとしています。
設立したての頃、私たちはとても大きな未知の世界におそるおそる足を踏み入れました。
未知とは未来であり、未知とは日本でのギリシャ商品でした。未知とは私たちが選択した商品へのお客様、バイヤー、シェフ、ソムリエの皆さんの反応でもありました。
簡単なことなど一つもありませんでした。たくさんの時間をかけて商品紹介のためにお店からお店へ転々と歩き続けました。ギリシャの商品?誰が聞いたことある?ギリシャ?ギリシャってどこ?たくさんの人がギリシャワインや、ギリシャのオリーブオイルを認識していませんでした。私たちの行先を方向づけるような、ブランドさえ1つも存在していませんでした。
それでも自分たちの選択した商品の品質を信じ、またギリシャでそれらを一生懸命造っている生産者の人達のためにも、私たちは辛抱しました。売り上げのない日々が何カ月も続きました。それでも私たちは進み続けました。ゆっくり、少しずつ小売店やレストランが私たちの商品を購入してくださり、徐々に取扱店が増えていきました。設立2年目を迎えるころには少数のお客様とそれに比例する売り上げがありました。
とても繊細で素材の持ち味を大事にする日本食を通して、日本人の舌はとても繊細な味覚を持っています。この繊細さが良い食品を簡単に見極めることができるのです。そのため、私達の商品を食した日本人の皆様から、たくさんの嬉しいコメントをいただきました。ノスティミアはゆっくりと離陸していきました。年々取扱う商品にも幅が広がり、設立当初から共に支えあっている生産者の大半はその後もずっと一緒に、また、より専門の知識を蓄え、より良い商品を加えながら、ノスティミアはお客様と共に毎年成長してきました。

今日、高品質なギリシャ産エキストラヴァージンオリーブオイルの知識を持つ人たちが増え続けていることに私たちは誇りを持っています。濃厚でクリーミーなギリシャヨーグルト、フェタチーズやカラマタオリーブのことも彼らは知っています。そしてギリシャワインの独自性を高く評価しています。
これから更に何年ノスティミアを通して皆様にギリシャのすばらしさを発信できるのはわかりません。ただ一つだけわかっていることは、継続できる限り設立理念でもあった『ギリシャの一番を日本の皆様へ』ご紹介し続けていくことに変りはありません。
長年に渡る生産者の苦労の末の商品が私たちに誇りをもたらし、それらがお客様からの信頼を得るものとなっています。


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