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読書感想 京極夏彦 狂骨の夢

天才京極夏彦さんの「百鬼夜行シリーズ」の三作目にあたる作品です。
以前にも書いたのですが、わたしははじめてこの作品を読んたとき、「こんなミステリー小説を書ける作家さんがいるなんて……!」と驚愕しました。


トリック(というのかな?)は秀逸ですし、
ストーリー展開も申し分ないです。そして何より登場人物の描写がとても魅力的です。

きちんと物語のあらすじが整ってる三人称の小説なのに、登場人物の心情描写までしっかり書かれているんです。
登場人物に感情移入できるくらい、その心理がみずみずしく丁寧に描かれているのですね。

魑魅魍魎がたっくさん出てくるのですが、それを描写出来る知識といい、筆力といい、
素晴らしいと思います。

わたしは、作中で朱美さんがお酒を飲みながら伊佐間に自分の過去を語るシーンが好きですね。
伊佐間の目から見た朱美さんがとても艶っぽく魅力的に描かれています。でも全然現実離れしてなくて、自然とその姿が目に浮かぶような感じです。

京極夏彦さんは、女性を魅力的に描くのがとても上手な作家さんだと思います。
あくまで男性から見た描き方なのですが、なんていうんでしょう、フェチがないというか、
女性が読んでも自然と魅力的に映るニュートラルな描き方をすると思います。


上手く説明できないのですが……。


「人の気持ち、人の心、いいえ、人の魂は、死ねばそれまでとも思いますけれど、もしもそれが骨に宿っているのなら、ならばそれは骨と共に永遠に残るものでございましょうか。妾の浅ましい妄念も執念も、永遠に残ってしまうのでございましょうか」
朱美さんは伊佐間に問いかけます。

 遺骨を大切にする日本では、
きれいな状態で骨が残るよう緻密に調整しながら火葬を行っているそうです。
高温で骨まで灰にするほうがよっぽど簡単みたいですね。



ほんの少しでも遺骨にその人の魂が宿るとするならば……。
先祖のお墓参りをすることは、本当の供養に繋がりますね。
都会に住んでいるとお墓参りは義務的に感じることもあるかもしれませんが、お墓に足を運ぶことで故人の魂に触れることが出来ると考えると、やっぱり大切にしていかなきゃいけない習慣なのかもしれませんね。



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