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[試合分析レポート②] 2023.9.9 ヨーロッパ選手権プレイオフ トルコ vs スロベニア

この試合分析レポートでは、国内や海外のバレーボールの試合を自分なりに分析をしていくというものです。
レポートは下のマガジンにまとめていくつもりなので、ぜひ見ていっていただきたいです!


お久しぶりです。9月末~10月2週目でオリンピック予選が開幕します。
日本はグループBに分けられていて、計8チームから2チームが選ばれます。

主な強豪国は、アメリカ、セルビア、スロベニア、トルコですね。
この中でもスロベニア、セルビア、トルコは先日行われたヨーロッパ選手権に出場していて今のうちに対戦データを取っておきたいところ。

ということで今回は、日本のオリンピック出場のカギを握るスロベニアとトルコの試合を観ていこうと思います。


なお、スタッツの見方や用語の解説は以下の投稿に詳しく書いてあります。


主要メンバー・結果

主要メンバー

トルコ(TUR)

画像:Volleybox


セッター(S):10番エキシ
オポジット(OP):12番A.ラグンジア
アウトサイドヒッター(OH):8番スバシ、11番グルメゾル
ミドルブロッカー(MB):7番ブルブル、77番サバス
リベロ(L):19番バイラクタル

スロベニア(SER)

画像:Volleybox


セッター(S):16番ロプレット
オポジット(OP):19番モジッチ
アウトサイドヒッター(OH):17番ウルナウト、18番チェブー
ミドルブロッカー(MB):2番パイェンク、4番コザメルニク

結果

      トルコ : スロベニア
1セット目   25                 20
2セット目           25                 22
3セット目           21                 25
4セット目           23                 25
5セット目           13                 15

公式チャンネルからこの試合のハイライトがアップされています。



セット別スタッツ

1セット目・・・トルコのブロック炸裂!

図1:1セット目スタッツ①
図2:1セット目スタッツ②

スパイク総本数やスパイク決定数はスロベニアが断然多かったんですが、
結果としては1セット目はトルコが先取してスタートしました。

このセットのポイントとしては、
・S1、S5ローテでトルコのブレイク数がとても多くなっている
という所です。
詳しく見ていきたい思います。

図3:ブレイク状況。TURは明らかにS1,S5ローテでブレイクが多い
図4:トルコブレイク時のサーブ状況

まず、図3のS1,S5ローテについて見ていくと、ほとんどが連続してブレイクを取られていますね。
そして、図4を見るとそのほとんどがAまたはBパスになっています。
これらのことから、
・スロベニアは前半はレセプションが乱されていない。
・しかし、そのほとんどでブロックによりトルコの得点となっている。

ということが分かります。
そう、
前半でスロベニアは完璧に攻撃できる状態からブロックを食らっていました。
このシーン、とても衝撃的でした。
スロベニアはレセプションをうまく返して完璧にコンビを組めていたのに、3連続くらい「どシャット」(思いっきりブロックされること)を食らっていました。

トルコは不利な状態になっても、1枚ブロックで相手エースを抑え込んでしまうほどのブロック力がある。
そんなチームであるといえるでしょう。恐ろしいですね。

ここから流れはトルコに大きく傾くことになります。
バレーボールでは一度流れが傾くと、立て直すのには時間がかかってしまいます。
スロベニアはトルコの勢いに押されて多く失点してしまいました。

オリンピック予選では、日本代表がこのブロックに対峙したときに上手く対処できるのかがカギになりそうですね。

2セット目・・・トルコの得点が止まらない!


図5:2セット目のスタッツ①


図6:2セット目スタッツ②

2セット目は1セット目と同じく、トルコ中心の流れが続きました。
1セット目と同じで12番OPのラグンジアの得点が目立ちますが、
1セット目と違うのは7番MBのブルブルのスパイク本数が多くなっているところです。

通常クイックが基本攻撃であるMB(ミドルブロッカー)というのは、レシーブが綺麗に返球された時しか使えないので、打数が少なくなりがちです。
クイック攻撃が多かったということは、
レセプション(サブレシーブ)またはディグ(スパイクレシーブ)が正確に返っていたということです。
実際、図6からはトルコのレセプションでCまたはミスパスは2本しかないことが分かります。

ディグも見ていきましょう。
下の図7はスロベニアで1番打数が多かった19番OHモジッチのスパイクです。
トルコ11番OHのグルメゾルがブロックタッチしているかシャットしているのが多いですね。
トルコのブロック力が2セット目でも光っていることが分かります。

2セット目は1セット目と同様の流れでトルコにセットを取られてしまいましたが3セット目以降でうまく修正できるのでしょうか。

図7:スロベニア19番のスパイク

3セット目・・・スロベニアの反撃開始!


図8:3セット目スタッツ①
図9:3セット目スタッツ②

3セット目はスロベニアがセットを取りました。

このセットでのスロベニアのポイントは、

・相手エースラグンジアへの対処ができていた
・相手ブロックを利用した攻撃ができていた

という点です。詳しく見ていきます。

図8を見てみると、トルコのスパイク総本数と決定数がだいぶ減っていますね。トルコの主戦力である12番ラグンジアも決定数が減っているのが分かります。
スロベニアがうまくブロックタッチを取るシーンが多かったような気がします。

逆に攻撃に関しては図10でもわかる通り、相手のブロックを利用したスパイクができていたことが見て取れます。

なんとかトルコからセットを取れたスロベニアですがトルコは依然レセプションもブロックも調子がよさそうに見えます。
4セット目はどんな結果になるでしょうか。

図10:スロベニアのスパイク状況


4セット目・・・スロベニア粘りのバレーでフルセットへ


図11:4セット目スタッツ①


図12:4セット目スタッツ②

4セット目もスロベニアが僅差でセットを取りました。
ロングラリーになることが多いセットでした。それだけ両チームとも粘り強い攻撃を続けていたのかと思います。

このセットのポイントは、

・両チームともアタック数が多いものの、アタック決定率が低い

という点です。
3セット目と比べてトルコの打数が大幅に増えて、そのうち60%以上が12番OPのラグンジアのスパイクでした。
1人で1セット20本以上というのは驚異的な本数です。
ロングラリーの際は、トルコはOPにトスを集めていることがよくわかります。

そして、両チームともスパイク決定数がかなり低い数値ですね。
ラリーになると、得点にならないスパイクが増えるので必然的にスパイク決定率は下がります。

しかし、トルコとスロベニアではその内容は大きく異なります。
図13,14はスロベニアとトルコのラリー中のスパイクですが、黄色は相手のブロックタッチ、橙はリバウンドを取ったものです。

スロベニアはブロックタッチ3本・リバウンド6本であるのに対し、
トルコはブロックタッチが7本もありました。

ブロックタッチは相手側に柔らかく返るので相手のチャンスになることが多いです。
一方リバウンドとは、スパイクを相手のブロックに当ててもう一度体制を立て直すことで攻撃のチャンスを増やすことができます。

つまり、
同じくらいの本数を打っていても、スロベニアの方が相手ブロックをうまく使って、攻撃するチャンスを増やしていたのです。

第3,4セットはスロベニアが相手ブロックを利用した攻撃ができていたことが分かります。
最終セットはトルコのブロック力とスロベニアのアタック力、どちらが勝るのでしょうか!

図13:スロベニアのラリー中のスパイク。黄色はブロックタッチ、橙はリバウンド。
図14:トルコのラリー中のスパイク。黄色はブロックタッチ

5セット目・・・スロベニアの大逆転勝利!


図15:5セット目スタッツ①
図16:5セット目スタッツ②

5セット目、トルコは12番OPラグンジアにトスを集めましたが、乱れた状態でのトスが多く、決めきるには難しいボールだったと思います。
結果的にスパイク効果率は低くなりスロベニアが有利に試合を進めてられていました。

フルスタッツ・・・トルコの大エース


図17:フルスタッツ①

フルスタッツでまず見てほしいのが、
トルコの12番OPラグンジアの驚異の打数です。

なんと、全体の50%も打っていて総本数は61本です。
スロベニアで1番多いのが19番OPモジッチの48本で32%であることと比べると、群を抜いて多く打っていることが分かります。
それでいて34%ものスパイク効果率を維持したのは驚異的ですね。

合わせてスパイクコースについても見ていきます。
図19は試合を通じたライト側からのスパイクの着弾点ですが、
クロス方向と角度のあるインナー方向で多く得点している気がします。
特にインナー方向は前衛ライトの守備位置よりもさらに内側に決まっていますね。えぐいです。

図19:

全体を通して

今回の試合全体を通してみると、トルコとスロベニアのプレースタイルの違いが見えてきたと思います。

トルコは大エースラグンジアを中心に攻撃的なバレーを展開しつつ、個人個人の高いブロックで相手のコンビを封じていました。

逆に、スロベニアはブロックタッチでボールを落とさず、うまく返った時はMBのパイェンクの強烈なクイック攻撃を、乱れたときはウルナウトのブロックを利用したスパイクを繰り出していました。

実力が拮抗した両者だからこそ、お互いの良さが出ていたような気がします。

最後に

現在行われているオリンピック予選では、日本チームはトルコとスロベニアとの試合が非常に重要となります。
現在1勝1敗と、優勢とは言えませんが後半戦頑張ってほしいですね!



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