ノコサレタモノ
恋人が死んだ。先週の日曜日、朝テレビで桜の満開が告げられた日だった。
皮肉な程に晴れた日で、家の窓から見える川沿いが淡いピンクで彩られ、反射した白い光が眩し過ぎて両手で顔を覆いたくなるそんな日。
彼は白い布を顔に被り、その下の表情は " 思い残す事は何もないよ " なんて感じに柔らかかった。
些細な事で眉間に皺を寄せる癖があった彼の顔には深い皺が刻まれていたけれど、そんな所も愛おしくて……今年の夏、向日葵が咲く頃に結婚しようなんて話をしていた。
酸いも甘いも嚙み分けて、いつも手を繋いで歩いていた川沿いを今私は一人傘をさして歩いている。
彼の残したカメラのフィルムを現像へ出しに……
「現像するまでどんな写真が写ってるかわからないのが良いんじゃないか」
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1,036字
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短編の詩集です。
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