疋田文明

「経営ジャーナリスト」と検索してください。トップに表示されるのが私です。  1986年…

疋田文明

「経営ジャーナリスト」と検索してください。トップに表示されるのが私です。  1986年の独立以来、ひたすら経営の世界を取材してきました。経営の現場は知恵の宝庫です。そうした活動の成果を活かすべく、いまは元気印企業が増えることを願って『元気塾』を中心に活動しています。

最近の記事

経営に活かしたい先人の知恵…その22

◆有能なリーダーと無能なリーダーの違いはどこに◆  有能なリーダーの共通点として、より多くの人の声に耳を傾けるということが挙げられる。  唐の二代目皇帝太宗が、側近の魏徴に「どのようなのを明君(優良なリーダー)、どのようなのを暗君(無能なリーダー)というのであるか」と聞いた際の答えは、次のようなものだったと『貞観政要』に記されている。  「多くの人の意見を聞いて(兼聴)、そのよいものを用いるのが明君であります。逆に、一方の人の言うことだけを信じる(偏信)のが暗君であります

    • 経営に活かしたい先人の知恵…その21

      ◆上意下達型組織の弊害◆  昨年の話で恐縮だが、「経営層が若手社員に教えを請うリバースメンタリングが最近広がっている」(日経新聞2023年3月29日夕刊)との記事があった。そこには「新発想で下意上達に」とのサブタイトルがつけられていた。  大企業や有名大学のスポーツクラブで不祥事が次々と起こった数年前、盛んに上意下達型組織の弊害が指摘されたものの、現状なかなか是正されているとは言えない。その反省もあってか、下意上達に目が向くようになったのだろうが、「今さら」という気がしない

      • 経営に活かしたい先人の知恵…その20

        ◆忖度が組織を滅亡させる原因となる◆  帝王学の書として知られる『貞観政要』に、「個人的に不和となることを避けたり、相手の面目を失わせることを気の毒に思って、明らかに非であることを知っても正すことをせず、そのまま施行するものがある。これは大きな弊害を招き、組織を滅亡させる原因となる」(唐二代目皇帝太宗)とある。忖度して、言うべきことを言わない風潮が広まると、組織は滅亡に向かうとの指摘だ。  昨年から問題になっているトヨタグループの相次ぐ不祥事の原因も、「忖度」にあると私は考

        • 経営に活かしたい先人の知恵…その19

          ◆管理過剰は組織を衰退させる◆  組織は、どういう状態に陥ったときに衰退に向かうのか。孔子の編纂と伝えられる「春秋左氏伝」に、「国の亡びんとするは、必ず制多し」とある。国が亡びるきっかけは、制度や法令が増えてくるところにあるとの指摘だ。  これは会社組織にも同じことが言える。スポーツ選手のマネジメントとマーケティングを行う会社IMGを設立し、アメリカビジネス界の異端児として知られたマーク・マコーマック氏は、会社が成長する上での最大の問題は、「経営を少しでも容易に、円滑にす

        経営に活かしたい先人の知恵…その22

          経営に活かしたい先人の知恵…その18

          ◆見識のない人間に部下を持たせてはならない◆  中国の古典『書経』に「徳に懋(つと)めるは官に懋めしめ、功に懋めるは賞に懋めしむ」とある。 「徳」のある人間には官職(地位)を与え、仕事で実績を残した人間には金銭を与えるとの教えだが、これは西郷隆盛の「南洲翁遺訓」の第一に紹介されてもいる。 〝経営の神様〟のほか〝人事の名手〟とも呼ばれた松下幸之助さんは「人事の要諦は」と、聞かれた際、次のように答えている。「功労があった社員には賞(金品)で報いるべきで、地位を与えてはならない

          経営に活かしたい先人の知恵…その18

          経営に活かしたい先人の知恵…その17

          ◆戦略と戦術の使い分け◆  『良い戦略、悪い戦略』の著者リチャード・P・ルメルトは、ジョブズ氏の「捨てる戦略」(その16参照)を紹介した後、「戦略を立てる時には、『何をするか』と同じぐらい『何をしないか』が重要である」と指摘している。企業経営で何より大事な戦略も、決断同様、二者択一の意思決定だとまず理解しておきたい。  しかし、いかに良い戦略を立てても、行動に移さなければ意味がない。行動するとは、戦術を考えるということだ。戦略(決断)と戦術(行動)についてどう考えればいいの

          経営に活かしたい先人の知恵…その17

          経営に活かしたい先人の知恵…その16

          ◆指導者に必要な「捨てる勇気」◆  『管仲』は、指導者の役割として「決断力」(その15参照)を挙げている。逆に言えば、優柔不断は指導者には禁物ということだ。『孫子』も「軍(組織)を統率にあたっては、何より排すべきである」と指摘している。  では、決断できる指導者と、できない指導者の違いはどこにあるのか。それは、「捨てる勇気」があるかどうかにあると言っていい。  ユニクロとアップルを例に説明したい。ユニクロの場合、1998年の原宿店オープンまでは、「ナイキ」「アディダス」等

          経営に活かしたい先人の知恵…その16

          経営に活かしたい先人の知恵…その15

          ◆欠点のない指導者はいない◆  中国古典、とりわけ儒教系の本には、指導者層に対して厳格な教えが説かれているように思われるかもしれないが、決してそんなことはない。どんな人間にも長所と短所があることを認めた上で、人物評価においては、寛容なところが結構ある。  春秋時代(紀元前770~前403年)に、最初に覇王になった(諸侯のトップ)斉の桓公と臣下の管仲の問答が示唆に富んでいる。  桓公は管仲に、「私の身には、狩猟が好き、酒が好きで昼も夜も飲み続ける、色を好むという、大きな三つ

          経営に活かしたい先人の知恵…その15

          経営に活かしたい先人の知恵…その14

          ◆指導者に求められるのは「才」か「徳」か◆  中国・北宋の歴史家、司馬光は自著『資治通鑑』で「才」と「徳」について、興味深い指摘をしている。 「才と徳とは違っているのであるが、世人はこれを区別することができず、皆これを賢という言葉で表現しているが、この才こそ、その人物が人の支持を失う原因なのである。もともと知恵優れ意志強固の人を才能の士といい、正しく素直で中庸の道の和やかな人物を徳ある者というのである」  司馬光は、こう指摘したうえで、人物を次の四つのタイプに分類している

          経営に活かしたい先人の知恵…その14

          経営に活かしたい先人の知恵…その13

          ◆指導者の役割◆  組織の成否はリーダー次第と言えるが、リーダーが果たすべき役割はどのようなものなのか。中国古典のなかで、最も的を射ていると思えるのが『管仲』の指摘だ。  「時勢に応じた対策を立てられるのが指導者としての条件であり、公平無私であることが治めるものの徳なのです。多くの臣下を統率して、その能力を最大限に発揮させなければならないのです」(『管子』=管仲の言行をまとめた本とされている)。  これほど、指導者のあるべき姿を、端的にズバリ指摘している言葉は、私の知る限

          経営に活かしたい先人の知恵…その13

          経営に活かしたい先人の知恵…その12

          ◆先人の知恵を活かした二宮金次郎の「地域再生法」◆  二宮金次郎の地域再生の手法は、先人の知恵を活かしたものだと、私は理解している。金次郎は再生に取り組む前に、その地域を綿密に踏査して、再生計画案を立案するのだが、その際、参考にしたと思われるのが、『礼記』の「入るを量りて出ずるを為す(収入の額を計算し、それに応じた支出を行う)」の教えだ。  残された資料によれば、金次郎は600を超える地域で復興を成し遂げているが、その仕法(金次郎の手法を意味する)の基本は同じだった。金次郎

          経営に活かしたい先人の知恵…その12

          経営に活かしたい先人の知恵…その11

          ◆組織の発展・衰退はリーダー次第◆   帝王学の書とされる『貞観政要』に、「昔の理想とされたリーダーたちは、前の悪い時代の人民を残らず取り替えて治めたわけではではありません。そのときの人民を教化する、そのやり方いかんにあるだけです」と、側近の魏徴が太宗(唐の二代目皇帝に)語ったとの記述がある。  「リーダーの考え方・リードの仕方が変われば組織は変わる」というのが、私の持論だが、過去、弱体化していた組織を再生したリーダーたちは、魏徴の指摘にあるように、民や部下を入れ替えたわけ

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          経営に活かしたい先人の知恵…その10

          ◆利他の大欲◆  老子は「足る(満足する)ことを知る者は、心の豊かな人である。いかに千万の富を積んでも、満足を知らず、なおも欲しいと望む心がある者は、心の貧しい人である」といっている。  仏教には「少欲知足」との教えがある。欲望は苦のもとになるものだから、欲望は程々にして我慢せよ、という。  しかし、本来人間には、長生きしたい、お金持ちになりたい、幸せになりたい等々、無限と言っていい程の欲がある。我々は、日常生活を送るに際して、欲とどのように付き合えばいのだろうか。私が共

          経営に活かしたい先人の知恵…その10

          経営に活かしたい先人の知恵…その9

          ◆危機的状況に陥らないために、いい状況の時に危機意識を持つ◆  「安きにありて危きを忘れず、存続しつつも亡びることを忘れず、治に居ても乱を忘れない。こうあってこそ、その身は安らかで国家の安泰を保ち得るのである」(『易経』)  これは孔子の発言とされているが、帝王学の書として知られる『貞観政要』にも、この言葉が複数回出てくる。組織を長く存続させるためには、いい状況の時にこそ、危機意識を持って、統治しないといけないということだろう。  しかし、これほど難しいこともない。明君

          経営に活かしたい先人の知恵…その9

          経営に活かしたい先人の知恵…その8

          ◆失敗から学べる人と企業が成長する◆  中国古典・『漢書』に、「前車の覆るのは、後車の戒めとなる(前人の失敗をみて、後人は戒めとすべき)と言われております。始皇帝の秦は極めて速やかに亡びてしまいましたが、いかにして亡びたかの轍の跡は見ることができます。しかるに、その轍の跡を避けないならば、後からゆく車もすぐに覆ることでしょう。国家の存亡、治乱の鍵は実にここにあるのです」(賈誼)とある。  この教えは、失敗から学ぶことの大切さを説いている。事業家で成功を手にできた人も、多く

          経営に活かしたい先人の知恵…その8

          経営に活かしたい先人の知恵…その7

          ◆人材が育たなければ、100年企業に成り得ない◆  孔子より100年近く前に生きた管仲の言葉をまとめたとされる『管子』に、「1年の計画を立てるとしたら、その年内に収穫のある穀物を植えるがよい。10年の計画をたてるというのなら、木を植えるがよい。一生涯(100年)の計画を立てるのなら、人材を育てることだ」とある。  穀物は、苗を植えると1年以内に収穫できる。木を植えれば、何年か経つと一定期間果物を収穫できるし、木材として活用できるものもある。しかし、長い将来を考えるのなら人

          経営に活かしたい先人の知恵…その7