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経営に活かしたい先人の知恵…その27

◆チームプレーについて考える◆


 『易経』に、「甲乙の二人が、本当に同心一体になれば、その鋭利さは、固い金属をも断つことができる」とある。これは「断金の交わり=固い友情」の語源であり、どんな優秀な人間でも個人の能力には限界があって、それを打破するのがチーム(組織)の力なのだと、解釈すればいいだろう。

 私が信奉する経営思想家、ミュラータイム氏も同様の指摘をしている。「それぞれが50キロの力を持っているとすると、一人では50キロの石しか動かせないが、二人が同時に力を合わせれば、100キロの石を動かせる」。

 一人が50キロ、もう一人が50キロを別々に動かしても、計100キロを動かせるのだから、二人が力を合わせるのと同じではないか。そう思われるかもしれないが、それは違う。一人で50キロ動かせる者が何人もいれば、その価値は高くない。ところが、100キロを動かせる人はより少ないであろうから、その価値は高くなるのだ。

 アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏は、「偉大なことはチームで成し遂げる」と説いているが、これはアップルに限った話ではない。業績に秀でたGAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル)と呼ばれる企業群は、そのいづれもが、チーム力を駆使して、素早く製品なり、新たなサービスを世に出すことで、好業績を手にしている。今のように変化の激しい時代には、チーム力を高め、組織として、スピーディに仕事を遂行することが大きな武器になる。

 「ウーダループ」の著者チェット・リチャーズ氏は、戦いにおける空中戦を例に、「敵に先んじる1分が勝利を呼び込む。スピードが最大の武器。スピードを有効活用することにより、規模や技術などの敵側の物理的な優位性を相殺し、最終的には無力化できる。量的優位性は勝利の優位性にならない」と語っているが、これは企業経営でも同じだ。それを証明しているのが、GAFAのような企業群だと考えればいいだろう。

 チームプレーには長けていたはずの日本企業の多くが、なぜ海外の企業に遅れをとっているのか。その原因は、和気あいあいと仲良く仕事をすることがチームプレーだと錯覚しているところにあると、私は考えている。日本では、チームプレーには和が大事だとされている。これに異論はないが、和の意味をどう捉えるかによって結果は変わってくる。

 和とは仲良くすることではない。本来の和は、「主体性を持った個人が調和する」ことで生まれるものなのだ。互いに切磋琢磨する風土がなければ、レベルの低いチームプレーとなり、勝利を手にすることはできない。

 それに比して、GAFAのような企業たちは、高い目標を掲げ、その実現のために、お互いが意見をぶつけ合いながら、一致協力してチームで仕事を遂行している。ゆえに、目標が短時間で達成でき、大きな成果を挙げることができるのだ。

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