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映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記➀ ~企画の種が蒔かれたとき~

孤高の天才写真家・森山大道

世界中からリスペクトされる
写真家・森山大道さんは、言わずと知れた
「ストリートスナップの帝王」であり、
世界的トップブランドとコラボレートする
「スタイリッシュな巨匠」でもあります。
同時に、菅田将暉さんや宇多田ヒカルさん、
木村拓哉さんやONE OK ROCKさんの撮影を行うなど
後続のポップアイコンから絶大な支持を集める
「憧れのヒップスター」という側面もあります。
現在81歳。
そのフットワークは衰えるどころか、
ますます加速し、
毎日毎日街のどこかでハンターのように
ただひたすらスナップを重ねて
次々と新作写真集を発表し続けています。
世界中に数多くファンが存在し、
近年はフランス文化勲章を受章したり、
昨年は写真界のノーベル賞といわれる
ハッセルブラッド賞を受賞したりしています。
とにかく、文句なしにかっこいい
現在進行形の写真家です。

企画の種が蒔かれる瞬間


さて、映画のお話です。
もし企画の種というものがあって、
種が蒔かれる瞬間や場所があるとするならば…
この映画の場合は…
2016年冬の一つの会話だったように思います。
それは、初対面の人からかけられたこんな言葉でした。

「岩間さんは、20年前に
森山大道さんのドキュメンタリーを作りました。
それから20年の時が流れて、
写真を取り巻く状況は激変しています。
なのに、なぜあなたは
今の森山大道さんを撮らないのですか?」

僕は1996年に、一本のテレビドキュメンタリーを制作しました。
日本テレビの「美の世界」という枠で放送された
「路上の犬は何を見たか? 写真家・森山大道1996」という番組です。
それから20年。
2016年冬。
放送からちょうど20年たったことを記念して、
あるイベントが企画されました。
同じタイミングで、月曜社から大道さんの写真集「OSAKA」と、
大道さんとグラフィックデザイナーの鈴木一誌さんの対談集
「絶対平面都市」が発売されたこともあり、
森山大道さん、鈴木一誌さん、そして僕
という顔ぶれで
恵比寿のNADiff a/p/a/r/tや都内のギャラリーで
20年前の映像を見ながらお喋りをする
限定トークイベントが開催されたのです。

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上映も終わり、三人の鼎談も無事に終了して
質疑応答に移った時のことでした。

僕なんかに質問は来ないだろう。
そうのんびり構えていたら、
会場のお客さんの一人から
突然冒頭の質問が飛んできたのです。

あなたはなぜ今現在の森山大道を撮らないのか

鮮烈でした。
いわく「写真はアナログからデジタルに
大きく様変わりした。
カメラももちろん、
記録媒体もフィルムからカードへ、
作品も暗室作業での焼きつけから
今やプリントアウトへと大変化を遂げた。
なのに、森山大道さんは
以前とまったく変わることなく
スナップワークを続けている。
あなたはなぜこんな面白い状況の
『今現在の森山大道』を撮らないのか」と。

頭をガーンと殴られたような気がしました。
僕は答えに窮し、
思わず横に座っていた森山大道さんの
顔を覗き込むと…(②につづく)

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