*33 井の中の蛙大海を夢に見る
誕生日を境に世界ががらりと変わる事などある筈も無いとは解っていながら、それでいて何かに期待している自分がいたのであるが、これは何も胡坐(あぐら)を掻いてただじっと待っていれば今に心地の良い風が吹くんだからそれまで退嬰(たいえい)を謳歌しようじゃないかという他力本願な態度を肯(うべな)いたいわけではなく、私が漕ぎ出した船の上に私が立てた帆を孕ませるような追い風が吹くのを期待しているのに他ならなかった。喩え長閑(のどか)な水面を撫でる風さえ吹かなかったとしても、だからと言って甲