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【スポーツ】『BORN TO RUN -A Hidden Tribe, Superathletes, and the Greatest Race the World Has Never Seen-』【#2】

こんにちは、げんちゃろです。

私は趣味でよく山を歩きに行くのですが、今年の3月は休日にいろいろな予定が入っていたりちょっと忙しかったりで、あまり山に行けていません。
でもその分、積読からの脱却は少しずつ進んでいます。

今回ご紹介したい一冊はこちら。
『BORN TO RUN -A Hidden Tribe, Superathletes, and the Greatest Race the World Has Never Seen-』(クリストファー・マクドゥーガル著、2010年、NHK出版)

アメリカではベストセラーになっており、日本人でも知っている方は多いと思います。

・概要
私は、正月に実家に帰省した際に、半ば押し付けられるように母から勧められて読みだしたのですが、読んでみるとまぁ惹きつけられる。

この本のジャンルを端的に言い表すのはちょっと私には難しいのですが、筆者の体験を通して人類と「走る」こととの関係を考察したエッセイのようなものでしょうか。

概要としては、ライターを生業としながらもウルトラランナーでもある筆者が、度重なる脚の故障に悩まされて、医者からも走ることをやめるよう忠告されていたところ、メキシコの峡谷の奥深くに人目を避けて暮らす、走る民族・タラウマラ族との出会いによって、これまで常識とされていたランニングに関する知識が根底から覆されるとともに、様々なランナーの体験や学者の経験を通して、人類は走るために生まれてきた種族なのだということを明らかにしていきます。

・覆されるランニングに関する常識
まず、この本の帯の裏にも書かれている衝撃的な事実、「最高級シューズを履くランナーは安価なシューズのランナーよりもけがをする確率が123%も大きい」。

少し前の箱根駅伝では出場選手の間でのシェアをナイキの厚底シューズがほぼ独占していたくらい、パフォーマンス向上のためにはクッション性の高いシューズを履くのが当たり前だったと思います。
ですが、人間の足はいくつもの骨や筋肉で組織された非常に完成度の高い代物で、裸足でこそその機能を最大限に発揮できるのであり、厚底シューズを履くのは足にギブスを付けて走るようなものだというのです。

この本では、数々のランナーや研究者たちが次々に登場し、その名前を一人一人覚えることはもはや不可能なのですが、脚の故障に悩まされていたランナーが裸足でトレーニングをしたところけがを克服したというエピソードも登場します。

こんな風に。大きなシューズメーカーがスポンサーをやっているテレビなどでは到底放送できないような事実がいくつも明かされています。

・走るために生まれたホモ・サピエンス
この本では、進化人類学的な研究内容も惹きつけられる魅力的な文章で述べられており、この部分が個人的には最も興味深かったです。

我々人類、つまりホモ・サピエンスは、屈強な身体を持つネアンデルタール人が絶滅した中、どう見ても体格的には彼らに劣るにもかかわらず、なぜ現在まで生き残ることができたのか?我々ホモ・サピエンスに狩りなど可能なのか?

実は、ホモ・サピエンスは、走るために生まれた種族、といっても過言ではありません。
ホモ・サピエンスは、無毛の皮膚と汗腺のおかげで熱発散がしやすく、直立二足歩行により走りながらでも呼吸を整えやすいという特徴を持っています。スピードこそインパラなどの動物には敵わないものの、優れた呼吸器と熱発散のシステムのおかげで、走り続けられる距離では人類が勝っている。獲物を長距離にわたって追い回し続け、オーバーヒートして倒れ込んだところを仕留める。我々ホモ・サピエンスは、ネアンデルタール人のように大型の動物を倒すことは難しくても、そんな方法で狩猟をして繁栄してきたのですね。

こういう進化人類学的な話は、個人的にすごくそそります。

・ウルトラランナー vs タラウマラ族
この本の中では、名だたるウルトラマラソンのランナーたちや走る民族・タラウマラ族が、ウルトラマラソンのレースでしのぎを削る場面が描かれています。その場面では、薄っぺらいサンダルを履いてマントをはためかせたタラウマラ族が、軽快に、速く、力強く、そして心の底から走ることを楽しみながら、地面を蹴り駆けていく様子が描写されていて、筆者がこれを目の当たりにしたときの感動が伝わってきます。

また、レースに参加するランナーたちが、筆者を含むほかのランナーたちを気遣い、思いやるシーンには心を打たれます。走ることの本質は順位を争うことにあるではなく、むしろ協力することにある。ランナーたちの美学のようなものも感じました。

この本を読んだ後は、無性に外に繰り出してあてもなく駆け出したい、そんな気持ちを皆さんも抱くことと思います。

・小括
普段は人に勧められて本を読むことはあまりないのですが、これは本当にのめり込んで読みました。上記のとおり、登場人物が多い割に、それらのエピソードが後で収斂していくという構成でもないので、最初はちょっと読みづらいと感じるかもしれません。が、これらのエピソードから得られる気づきも多いですし、特にレースのシーンは引き込まれること間違いありません。

私は、この本を読む以前から、普段からVivoBareFootのベアフットシューズを愛用していて、本来の足の機能を取り戻すということに興味はあったのですが、この本を読んでさらにその意気込みが高まっています。その意味で、このタイミングでこの本をゴリ推ししてきた母に感謝するとともに、ベアフットシューズをゴリ推ししていこうと思います。

ではまた!


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