齋藤源太

みんなに通ずるあの感覚みたいな話を書きます。

齋藤源太

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最近の記事

『育ちが悪い子』

 ユキって箸の持ち方変じゃない?  口に運ばれるはずの鶏の照り焼きが途中で行き場を失ってしまった。 「え?そうかな?」 「こうじゃなくて、こうじゃない?」 「え〜初めて言われた」 「まじ?結構変だけど」  彩音の顔はマジだった。  もう一度自分の箸の持ち方を眺める。そして彩音の箸の持ち方を観察する。 「……おなじじゃない?」 「どこがよ」チョップが飛んできた。  大学の食堂は席との間隔が狭い。できるだけ大勢の人が座れるようになっているのだろう。彩音は後ろの人の椅子に気を遣い

    • 対価

      高校生 藤宮有紗 女    『あ、まただ』  ドアが開くと地下鉄ホームの軽快な音楽が電車に流れ込んできた。それに人は逆行して崩壊したダムのように駅構内へ押し出されていく。彼は次の次の次くらいで降りるから、私は決して流されてはいけない。  我先にと最前列を目標に動き出す人の群れ。大嫌いなはずの会社へ一目散と走り出す。前が詰まると自分よりも前にいる人間にプレッシャーかけている。目の前の人を一人二人追い越したとしても、到着する時間なんてさほど変わらないというのに。  私は人間の

      • やっぱりやっぱりやっぱりnoteが続かない

        無理や。 短文でも無理。 続かん。 承認欲求が少し満たされたらもうおしまい。 目的がダメなんだろうなぁ。 『noteを諦めず続ける方法』とかもうええわ。 やったやった、全部。 ほんで、自分の投稿した作品見返す時しんどすぎ。 こんなおもんないんかい。 才能ないやろ。 他の人すごすぎ。 自分のダサすぎる。 ああーもうやーめた。 これの連続。 やっぱりやっぱりやっぱり。 noteは続かない。

        • 10年後に1行

          腹減った。

        『育ちが悪い子』

          今日の1行

          今日娘が覚えた言葉は、サル。

          今日の1行

          『保育士がどうか明日も生きられますように』

           保育士は神様です。  嘘じゃありませんよ。  本当に神様です。 「センセェ!」 「愛美先生ェ!!」 「抱っこォ!」  私を求めているその顔はまるで近所の子犬にそっくりです。 「じゃあ先生の言うことを聞いたら抱っこしてあげる」そう言うと子犬は一斉に首を縦に振ります。  「お部屋のおもちゃを片付けた数が一番多い人だけ抱っこしまあああす!」  すると、子犬達を叫び声を上げながら、片付けを始めます。  神様が何かを命令すればこの子達は言うことを聞きます。なんの疑いも

          『保育士がどうか明日も生きられますように』

          『どうせみんなコオロギ食を食べるようになる』

          西暦 2121年 9月  コンビニ弁当を食べる。うまい。当然うまい。  慣れ親しんだこの味は、恐らく母親の弁当よりも食べただろう。そして母親の弁当よりも遥かにうまい。というか味がする。この謎のタレが大量にかけられた謎の焼肉。さらにそれにかけるちょっと辛いマヨネーズ。少しばかりの漬物もものすごくご飯に合う。大量のタレの下敷きになっているのは、かつて真っ白だったはずのご飯。これだけで食べても間違いなし。  舌全体に広がるこのストレートな味は。    私の全細胞を唸らせた。  

          『どうせみんなコオロギ食を食べるようになる』

          第一話 手からビームが出た

           朝起きて欠伸をしたら、伸ばした右の手の平からビームが出た。  屋根を突き抜けて、そのまま空高くビームは飛んでいった。私の手の平は熱く火薬のような匂いがした。  手の平の指先から手首の手前。手の平と呼ばれる場所全体から出ていた。私の右手の平は直径約15センチ。しかし放出されると溢れ出した水のように手の平よりも膨れた形で放出された。なので、直径約30センチ以上のビームが撃てた。そのため屋根に空いた穴はほぼ丸である。手型が屋根を突き抜けているわけではない。色は黄色だった。ワンピー

          第一話 手からビームが出た

          親父を殺してくれてありがとうございます

           そういえば親父が死んだ。  実感はある。ちゃんと死んだことを認識して自分の中で理解している。肉親が突然亡くなって、動揺して呆然とするようなことはない。この世にはもういなくて、明日も明後日も親父はいない。  葬儀において死を受け入れた人間は無礼者だろうか。  横一列に並んだ親戚等々に参列者が次々と悲しげな表情で頭を下げる。母に一言「お悔やみ申し上げます」とだけ述べて、席へと移動する。  先程からこの繰り返しを僕は見せられている。たまに号泣をして、喪服を涙で濡らし、ハンカ

          親父を殺してくれてありがとうございます

          スープカフェで子連れが来たので……

          ガタガタ 後ろからベビーカーが来た。 椅子を机側に引いて机と私と椅子はハンバーガーのようにプレスされた。 「あ、すみません、、」 「いえいえ」とだけ返した。 「こら!!リント!走らない!」 母親の息子だろうか。コップを持ってドリンクバーにはしゃいでいる様子だった。 ところでリント?とはどういう漢字を書くのだろう。 「リント!言うこと聞いて!お店の中では静かにするっていっつも言ってるでしょ!」 その子の母親の声が店内に響いた。少しだけみんなの目線が親子の方に行

          スープカフェで子連れが来たので……

          寿司をペロペロして大炎上した彼をSNSで叩いた何様なあなたへ

          澤口 和也 22歳 大学生 セックスをしている時、一番気持ちいい瞬間がある。それは、女が完全に服従している時だ。 首を絞めて、女が本気で嫌がるそのとき、俺の股間はみるみる力を得る。パンパンに膨れ上がった肉棒を相手の膣内に捩じ込む。 首を絞めると、膣内も力が入りより圧迫される。 この時の脳に渡るまでの電撃的な興奮で俺は絶頂を迎えてしまいそうになる。 「ご、ごめん、、も、もう、、許して、ください」 「和也く、、ん、もうだめ、」 「ちゃんと謝らないとだめ」 「ご、ご

          寿司をペロペロして大炎上した彼をSNSで叩いた何様なあなたへ

          ファーストガンダムTV版を視聴しました。 シャア!!

          でででーーん でででででーーん シャア!! 最高です。 もっとも好きなシーンは ギレンとデキンの会話で『貴公、知っておるか、ヒットラーという男を』でしたね。 びっくりです。 ちゃんと我々の歴史の延長線にガンダムがあるんだと思い知るシーンでした。 本当に政治的要素を含んでいる作品ですね。 独裁がいかに失敗を繰り返してきているのかが、ガンダムを通してもわかります。 好きな回は『第8話 戦場は荒野』でしたね これは戦争です。 戦争のアニメだ。 ジオンとは敵な

          ファーストガンダムTV版を視聴しました。 シャア!!

          少年ジャンプみたいな友達

          「雄大!今週のジャンプ読んだか?!」 朝の7時半。道路を挟んで向かいの歩道から、今にも飛び出してきそうな正弘がそこにいた。 「読んだよー」 正弘が走ってきた。 横断歩道が無い場所で通勤時に車通りが多い道路だが、正弘は野原の一本道を駆け抜けるかの如く向かってきた。 「享楽が卍解したよ!ついにさ!」 「知ってるよって」 かっけぇよなぁ!と言いながら前を歩き、そのキャラクターのモノマネをする正弘。 犬とおじいさんがすぐ横を通ったがお構いなしの正弘だ。 こうやって、

          少年ジャンプみたいな友達

          同期よ 余計なお世話だ

          「同期がいい人ばっかりでよかったぁ」 あなたを助けてあげてる。みたいな顔だった。 私は弁当箱をすぐに閉まって、席をずらした。 隣に座って美咲はコンビニ弁当を広げる。 まるで男の子のような食事だった。 初めての同期に興奮しているのか、美咲はこれからの人生は楽しいものだと確信しているようだった。 初めての同期。 初めての社会人。 初めての仕事。 初めての給料。 初めての一人暮らし。 初めての会食。 これからやってくる初めての出来事に美咲はちっとも恐れ慄いていない。

          同期よ 余計なお世話だ

          パワハラとは胸ポケットにナイフを忍ばせていること

          私の会社に口の悪い上司がいる。 部下がヘマをした時、大きな声で怒鳴っていたのを一度だけ見た。 その時の内容を詳しくはわからないですが、男性社員が同僚の作業着に下ネタの落書きをした。とのことだった。 それに対し、パワハラ上司は怒鳴っていた。 「なんでそんなことをしたんだ?」 「聞いてやるから言えって」 「なぁああ!!」 普段静かな事務所なので、その時は私もビクッと身体が反応してしまった。 叱られた男性社員はひたすら「すみません」を繰り返すのみだった。 私はこの

          パワハラとは胸ポケットにナイフを忍ばせていること

          あなたといるとつまらない

          吉くんといるとつまんないんだよね。 藍田さんは人を殴っても殴られたのは私の方だみたいな顔をした。 つまんない。 僕に向けて突き刺した言葉は、刺された自覚がないくらい一瞬のことで、上手に痛いと思えなかった。 「そっか」 時間を置いて少し考えて、何もそこまで言わなくても、と僕は思ったが、同時にまあ、そりゃそうだよなと、直ぐに納得をしてしまうのがまた自分らしいなと思った。 そんなにつまんないのか。 つまらない。この言葉を言われて傷つかない人はいるのだろうか。 おそら

          あなたといるとつまらない