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[詩]川辺のスケッチ

ふと、「創作大賞」に応募してみようかなと思い、これまで書いた詩(のようなもの)をまとめてみました。まだまだ、こなれていない感はあるけど、これからも詩のようなものを書いていきたいなと思っています。
※再掲にあたり、少し表現を変えています。

5月のさんぽみち

いつもの川辺を散策していたら
どこからか「あなたは全部持っている」
という声が聞こえた

どういうこと?
問い返したら、ニセアカシアの白い花が揺れて
甘い香りが漂った

白い花はすまし顔で言う

「必要なものは持っているから
そのまま歩いていけばいいんだよ」

水の循環

天から降り注ぐしずくが軒をつたい
みずからの重みに耐えかねて
静かにしたたり落ちる

ポトポトとただ土を打つ
その音に耳を澄ませる

目を閉じて、心地よい音に身をゆだねていたら
どこからかカワセミの声。バラがサッと香った

「雨の音って、落ち着きますね」
と、穏やかな声。目を開けると緑

旅するチョウ

野鳥のさえずりに耳を澄ましていたら
胸元にチョウが飛び込んできた
不思議な模様の翅をひらめかせて

「アサギマダラですよ」
案内人の方が教えてくれた

チョウは風に流されるように
木漏れ日揺れる
森へと消えていった

アサギマダラ
旅するチョウ

いつか私も…

循環2

古民家の軒下で見上げた雫は、大地に染みて
やがて地表へ湧き出て、渓谷を流れ、川となり、滝となり
緑に栄養を届け、川辺で瞑想する僕を癒し、海へ流れつく
僕らを生み出し、涙をつくる
また、ある者は水蒸気となって天へ還り、また雫となる

僕らは自然の一部なのだ
ふと、そんなことを思った

5月のさんぽみち②

木立の中を歩いていたら
白く輝く緑の葉がわたしを呼びとめた

光を受けて白く輝く
この緑と緑の間に
たいせつな秘密があるの!

わたしは胸を躍らせた
そうなんだ
探してみるよ!

そう言って、動いた瞬間、光は消えた

自然の微々たる移ろい

夕日の沈む時間がほんの少し遅くなり
道を這う屑のツルが昨日より数ミリ伸び
昼顔のつぼみが少しだけゆるみ
風がはらむ熱が少しだけ高くなり

それはほんのわずかな変化
だけど、確実に季節はうつろう
微々たる移ろいを確実に感じて
とらえて、味わって日々を過ごすのだ


真夏へ…!


川辺の草むら
ウグイスの谷渡りに交じり
ひっそりと虫たちのカルテットが練習してる
(オーケストラがやって来る日もそう遠くない)

青空にジージーという独唱が響く
僕は汗をぬぐった
今は独唱だけど、もうじき大合唱
張り切ったセミたちが真夏の「歓喜の歌」を奏でる

川辺の生と死

雨上がりの川辺を歩く
丸々と太ったミミズが身をくねらせ
小さなカタツムリが這いつくばり
小さなゲジゲジがコンクリートに渦を描く
その本能のみの貪欲な生

その数日後
日差しが照りつけるコンクリートに
ひらびたミミズがへばり付き
乾いたカタツムリの殻が転がり
蟻がゲジゲジを運ぼうとしている

コンクリート法面で繰り広げられる
この容赦ない生と死

金色の光の中で

川辺にはいろんな生き物が来る
毛虫がフサフサの毛並みを輝かせながら
懸命に白い法面を渡ろうとしている

防波堤の上から、不服そうな顔で
わたしをにらみつけているのは
キツネかタヌキかハクビシンか?
「ナワバリ荒らすんじゃねえよ!」
と言いたげな顔で

自信たっぷりのカラスは
わたしが近づいても逃げやしない
「だから何?」と言いたげな表情で虫をついばむ
虫の死骸をセッセと運ぶ働き者のアリさん
わたしの視界を邪魔するブヨ
そっと花の蜜を吸うチョウにスマホを向けたら
逃げられた
「人間って無粋だわ!」と言われた気がした

目には見えないけど、存在を主張する野鳥たち
求め過ぎるカエルたちの愛の大合唱(ちょっとうるさい)
「わたくしは上品よ」と優雅にウグイスが鳴く

ぎんいろのたび

雨上がり、お出かけしたら
アカツメグサの葉っぱに銀色のかけら

道路の右にも左にも畑の作物にも
緑の上、一面にキラキラと銀色のカケラ

君たちは何万年前に山奥の大地を出発したの?
どんな旅をして、今、ここにいるの?

いつか、そっと、ボクにだけ打ち明けて

再生

きしむ襖と埃だらけの障子を開けたら
日本庭園の緑が目に染みた
伝統的な日本家屋に風が吹き抜けていく
積年の埃が舞い上がり、庭へ
空へと舞い上がり、ちぎれていく
やがて、その古い家は
3Dの立体映像のように回転しはじめる
真壁がゆっくりと外へ倒れ
柱が引き抜かれ、床がはずされていき
すべての部材が新緑の中に溶けていく

風だけが吹き抜けていく
わたしの中に

半夏生

せせらぎがベースのように響く葦原に
オオヨシキリがバスの音色を響かせる
そっと混じる虫たちの涼しげなカルテット

突然、茜色の空を切り裂くように
森の奥から短調の音色が響きわたり
僕を不安にさせる

半夏生だというのに、空気を晩夏に染めて
「夏やすみはもう終わり」と現実をつきつけ
「何か忘れてはいませんか?」と問いただす

半夏生のヒグラシに僕は訴える
「もう少し僕に夏のうつろいを味あわせて!」

物悲しげな音色が答える
そう思うのなら、「今、ここ」を楽しめと
不安に怯えている時間などないのではないか?

頷くしかない彼の正論
僕は立ち上がり、歩き出した
茜色の空気の中へと

7月のマインドフルネス

雨上がりの曇天を眺めていたら
灰色の雲を背景に隊列を成して
ブンブン飛ぶものたち

やあ、トンボくん!
無事に川辺で羽化をして
今はパートナーを探してる
いずれ川辺で恋をして、2人で飛んで
命を次世代へとつないでいくんだね

炎の浄化

雲が燃えている
マジックアワーというには、鮮やか過ぎる
赤い色を溶かした空気を吸い込み
禍々しさを感じた自分を笑う

これは焔の浄化
水の浄化よりも激しく、強く
苦しみや憎しみや悲しみや
ネガティブな感情を燃やし尽くす
天のしわざ

だから明日はもっと良い日


水の浄化

静かに流れる涙のような雨が降る
それは天から地へと落ちる嘆きか
それとも天から地へ還る喜びなのか

ふと、あるブログの言葉が目に止まった
「雨があなたの心を浄化する」

目を閉じて、雨音に耳を澄ます
やさしい癒しの音色が染みていく

今日もきっといい1日


次の作品もよろしかったら…


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