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人を殺したいと思ったことがない

いままでいろんなことがあったし、
大嫌いな人間もたくさんいたけど、
おれはそれでも、
誰かのことを殺したいと思ったことはない。

「いなくなれ」
「死ねばいいのに」

そんなふうに思うことはある。
でも自らの手を汚してまで人間を殺めたいと思ったことは、この50年の人生で一度もない。

別にいい人アピールじゃなくてさ。
ただ思ったんだよ。

そこまで人を強く憎んだ人しか、
たどりつけない場所があるんじゃないかって。

憎しみは悪い感情だっていうじゃない?
それに身を乗っ取られてはいけないっていうじゃない?

でもおれは、別にいいと思うんだよ。
誰かを強く強く、殺したいほど憎んでもいいし、
目に映るものすべてを呪ってもいいと思う。
そういう強烈な経験をしてもいいと思う。

なんでかっていうと、それは人間としての深みになるから。

誰かのことをそこまで憎むこと。
殺してしまいたいほど憎むこと。
あるいは、本当に殺してしまったこと。

そういう経験を持った人にしか、
たどりつけない境地があると思う。

そこまでの強い強い執念、怨念を、手離す。解放する。
憎しみが天に昇華していく。完全に消え失せる。

その瞬間というのは、とてもしあわせだし、
最高に気持ちがいいんじゃないかな。

それは、お花畑に住んでいる住人には一生わからない感覚。
醜い経験、汚い経験、最悪の経験をした人にしか訪れない瞬間が、くる。

みんなが知らないことを、いつか必ず知ることになる。
あなたはこれから、あなたにしか理解できないしあわせを経験していく。

誰もがたどり着けない場所に、あなただけがたどり着く。

今まですごくつらい経験をしてきた人は、
そのぶんだけ誰もが経験したことのない素晴らしい経験ができる。

それはもう、決まってるんだ。
あなたの人生はこんなところで終わらない。

人を強烈に憎んだ人は、
いつの日かそのぶんだけ、
人を大きなちからで愛せるようになる。

最初っから持ってるものなんて、たいしたことないのよ。

この100年足らずの短い時間の中で、
得て、そして消えていく、はかないもの。

そこにすべてがあるんだ。

あの世に、死後の世界に、天国に、楽園に、涅槃に、しあわせがあるんじゃない。

このセミのように短い人生に、
吹けば飛んでいくような頼りない人生に、
すべてのものが備わっている。

今という瞬間。
今日という一日。

そこにすべてが凝縮されている。

あなたは、過去の自分を救う必要はない。
未来の自分を救う必要もない。

今のあなたを、
今日を生きている自分を、
しあわせにしてあげてください。


過去の不幸も、未来の不安も、
そのために存在しているんです。

すべては、いま。
いまのあなた。
今の自分。

それをしあわせにするために、すべてが配置されている。

それだけが答なんです。
ほかに答はないんです。

未来の自分を救うのはなぜ?
過去の自分を救うのはなぜ?

それが、いまの自分を救うことにつながるからでしょ?

回り道をする。
人は遠回りをする。
すべてのことが徒労に終わる。

でも立ち止まって自分自身を見たら、
すべて報われるんだ。

全部わかる。

生まれてきた意味も、
つらかった過去も、
見えない未来も、
なんでそうなのか、わかる。

わからないのは、こころがここにないから。

こころがどっかいっちゃってる。
上の空になってる。
ぼやーっと、過去や未来に生きている。

だから見失う。

ここに戻ってきて。
すべてを取り戻そう。

失ったものは大きいけど、
でもそのぶん、
あなたはこれから大きなしあわせを得ていくんだよ。


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