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【猿と猟師】

小学校3年生の時だったと思う・・・

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友達数人で他愛もないことを話していた。すると、何故かだんだんと自慢合戦になっていくのだった。要するに他人ひとより目立ちたい訳である。

だから、僕はこうだ、いや僕はこんなことがあった、などと他人に負けないような話をするわけである。男の見栄の張り合いだ。

だから内容がどんどん大袈裟になっていくのも仕方がないことなのかもしれない。

すると、●●君が、おじいちゃんに聞いたという、こんな話をし始めたのである。

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『ある猟師が山鳥やきじを撃ちに行った帰りの山中で、猿の親子に遭遇する。猟の成果が芳しくなくて少々苛ついていた猟師は、こともあろうに猟銃の銃口をソ~ッと猿の親子に向けたのである。

気が付いた母猿が、一瞬、救けてと、拝むように手を合わせた時にはもう引き金が引かれていた。

「パ~~ン❗️」

撃たれた散弾は沢山の小さな鉛の粒に分裂して、数メートル先の猿の親子を襲った。

2頭の猿は死んだ。

・・・・・・・

それから暫く経った頃、お腹が大きかった猟師の奥さんが女の赤ちゃんを産んだ。

生まれた赤ちゃんは、猿の顔をした醜い赤ちゃんだったそうである。

猟師はハッ❗️として、あの時撃ち殺した猿の親子のことを思い出していた』

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という、そんな話であった。

話し終ると、友達がそれぞれの反応を示した。

「うわ~猿のたたりじゃのぉ」

「そうじゃそうじゃ、おそろしいのぉ~」

「でも、●●君、それホンマにあったことなんかぁ❓️」

「いや、僕はホンマにあったことじゃと思うでぇ」

多少は疑うヤツがいたのだが、●●君は普段から真面目な子だったので、本当のことだと思う者が多かった。

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今思うと、生まれた時は誰だって猿みたいな顔をしている訳だし、本当だったのかどうかと疑いたくもなるような話なのだが・・

いやしかし、なかったと証明することも出来ないのである。

況してや、幼い孫に、おじいちゃんがワザワザ嘘の話をすることも考え難いし、小学3年生の子供が、皆んなの前でアドリブの創作話を作れるはずもないのだから・・・


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