【写真撮影】
50人くらいが集まったある催しで、写真係になっていた僕は張り切って1眼レフカメラを持参していた。
スナップ写真を適当に撮った後、集合写真も無事に撮り終えてホッとしていたところへ、75歳になった知り合いのご婦人がやってきて、写真を撮って欲しいと頼まれた。75歳とは言うものの若ぶりで中々綺麗な女性である。
「あっ!〇〇君!悪いけどアタシの写真を撮ってくれなぁい?」
僕は快く受けた。
「はい!いいですよ❗️」
すると彼女が言う。
「アタシもさぁ、とうとう後期高齢者になっちゃったからねぇ。遺影を撮っとかないとね!遺影を」
「遺影❗️」
「最近写した写真が無いのよね」
どうやら彼女は本気で遺影を撮ってもらおうと思っているようだ。
死期を悟っているとは考え難いほど元気イッパイである。当分の間は死にそうにない。
〈そんだけ元気だったら死ぬのはまだまだ先のことでしょ、いま撮っても無駄ですよ。早過ぎて〉
とは言えずに黙ってシャッターを切った。
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