【ティール組織検証#6】「経営会議を全社員にライブ配信してみた」組織改革リアルストーリー
2018年2月にヒエラルキー型からフラット型組織へと移行するプロセスで生まれた生々しいリアルストーリーを、当事者たちへインタビューしながら全7回で発信しています。(Work Story Award 2018「W学長賞」受賞ストーリー)
こんにちは!編集部のしのぶんです。
前回に引き続き、ヒエラルキー型→フラット型組織に変革したリアルストーリーの第6回をお送りします。
今回は、#5「議論と意思決定がフラットになるまで」の続きで、会議での議論や意思決定がフラットになった結果、社内での「情報の開示」が急速に進み、経営会議のライブ配信や会議自体の廃止が実行されたストーリーをお届けします。ここから一気に「組織のフラット化」が加速していきます。
▼#5「議論と意思決定がフラットになるまで」
〈当事者意識を育てるため、情報開示をとことんやったー経営会議がライブ配信されるまで〉
当時経営会議の運営を担当していた近藤に、会議オープン化のリアルな経緯を聞いてみました。
近藤 香菜子
2012年新卒入社。経営管理部に配属され、アメーバ経営の浸透に従事。マネージャーとして経営会議の運営等も担当し、2018年には女性が自分らしく働けるよう応援するプロジェクト「racisa」の立ち上げに携わる。9月より産休・育児休業中。
ーどのようなきっかけで、経営会議がオープン化されていったのですか?
近藤:
もともとは、社外取締役の茂木の「当事者意識を引き出すために一番大切なことは、情報の開示だ」という言葉がきっかけでした。この言葉を聞いた時に「確かにそうだよな」と思ったんです。
会社が以前から導入している「アメーバ経営※」の真髄も、「メンバーの当事者意識を引き出すこと」なんです。でも実際は、経営会議の議事録はマネージャー層にしか公開されていませんでした。もちろんそこには「余計な混乱を起こさないため」という理由があったのですが、#4「ホラクラシーを単独部署で試験導入してみた」にもあるように、『ティール組織』解説者の嘉村さんから新しい組織のあり方についてお話を聞いたりしていたので、「いつまでこんな階層組織を続けるの...?」という思いが私自身の中にふつふつと湧き始めていました。ティールやホラクラシーについて聞けば聞くほど、居心地の良さみたいなものを感じたんですよね。
階層を超えて情報を開示できるよう、まずは私にできることから少しずつやっていこうと思い、経営会議のオープン化に取り組み始めました。
※ アメーバ経営:
フィロソフィ(理念)の浸透と独自の会計管理手法で経営する方法。現京セラ名誉会長・稲盛和夫が考案。企業の人員を6~7人の小集団(アメーバ)に組織し、アメーバごとに「時間当たり採算=(売り上げ-経費)÷労働時間」を算出し、時間当たり採算の最大化を図る。(参考: https://bit.ly/2FLdgG7)
ー経営会議をオープン化するために、具体的にどんなことをしたのですか?
近藤:
具体的には2017年の夏頃から、まずは小さなことから取り掛かろうと思って、経営会議で話し合われた内容の要約を模造紙にまとめ、全社員が参加する全体会議で発表し、模造紙をその後1ヶ月間社内で掲示してみました。それがすんなり受け入れられたので、10月くらいに「議事録を公開したい」ということを経営会議で参加メンバーに相談しました。
ー小さいことから取り組むのって大切ですね。周囲から反対などはありましたか?
近藤:
何人かから「やめた方がいいんじゃ...」という懸念の声が上がりました。ただ、私もなぜか「ここは引いちゃいけないポイントだ!」という気持ちが強くなり、「そしたらいつまでも変わらないので...」と強めに出ました。幸いにも社外取締役の茂木も後押しする発言をしてくれたので、なんとか「議事録の公開」の承認を得ることができ、議事録がメンバー全員にメールで一斉送信されるようになりました。
ー議事録の公開にこぎつけるのもなかなか大変そうですが、なぜ「ライブ配信」という流れになったのでしょう?
近藤:
#4「ホラクラシーを単独部署で試験導入してみた」にあるように、当時同じ時期に、経営企画部という新規の部署でホラクラシーを導入していたんです。その部署のマネージャーの安部やメンバーの井上と話している中で、「いっそ経営会議に社員もオブザーバーで参加しちゃえばいいんじゃない?」というアイディアが出て、経営陣も「世の中の流れとして、情報の公開や階層のフラット化は必要だよね。まずはどんどんやってみよう」というスタンスになっていったので、経営会議のオープン化が加速していきました。
そんな流れで、社員がオブザーバー参加する経営会議を数回開催した後、より参加のハードルを下げようとのことで経営会議のライブ配信にも1度挑戦しました。ライブ配信では無記名で自由にコメントが投稿できるようにし、しかもそのコメントが配信画面にリアルタイムで流れるという仕様を取り入れ、なかなか面白い取り組みになりました。
〈とことんオープン化したら経営会議が廃止になった〉
ー社員の無記名コメントがリアルタイムで流れる経営会議のライブ配信ってすごいですね(笑)その後すぐに経営会議が廃止になったと聞きましたが、それはなぜでしょう?
近藤:
ちょうどこの時期に「組織のフラット化」への変化が急激に加速していて、「マネージャーを廃止しよう」という議論があったんですよね。そもそも経営会議の目的はマネージャーの育成だったので、マネージャーがなくなるならば経営会議もいらないだろう、ということで廃止になりました。
ーいきなり経営会議が廃止になってどう思いましたか?
近藤:
正直不安でした。経営会議の目的はマネージャーの育成ですが、重要な機能として「情報共有、危険の察知、数字の担保」も含んでいました。今の組織の状態で、数字が傾いた時にティール組織みたいに各メンバーが自律的に動けるのかどうか、まだ信じ切れていなくて恐かったです。
でも、実際には「アメーバ経営」で鍛えられた数字に強いメンバー、過去の経験から「赤字に対しての危機感」を持っているメンバーも多いため、マネージャー不在の今も回せているのだと思います。
〈情報が開示されたことで、現場でやっていることへの納得感が増したー現場メンバーの声〉
現在営業として活躍しており、組織全体の運営サークルにも所属し、外部の組織関連のイベントにも多く参加している中西に、当時経営会議がオープン化されていった時の所感を聞いてみました。
中西 正也
2014年中途入社。以来、チェーン展開する企業に対し、サイン全般のセールスを担当。新規開拓、既存顧客深耕を行う過程で、新商材開発も経験。現在は、メーカー販促領域における施工系プロジェクトのセールスにも従事。
ーオープン化した経営会議は自由参加だったようですが、参加しましたか?
中西:
オブザーバー参加の回に1度参加しました。もともと営業報告で1度オープン化前に参加したことがあったので雰囲気はなんとなく分かっていましたが、「自分が参加しないところで議論されて結果だけが知らされるのってちょっとな...」と思っていたので、オープン化はいい流れだと思いました。
・どの程度オープン化するのか
・本当に社員みんなにとって意味があるのか
などが気になって参加してみました。
ー経営会議に実際にオブザーバー参加してみてどうでしたか?
中西:
自分が現場でやってることへの納得感をすごく感じました。僕はもともと全体の情報が欲しいタイプで、会社がどの方向に進んでいて、自分の頑張りが何に繋がっているのかを知ることがモチベーションになるので、そのインパクトは大きかったです。
あとは、当時はメンバーとマネージャーの間でものすごい情報格差があったんですよね。その壁が少しずつ崩されていくきっかけになったなぁと思います。ただ、経営会議で話し合われていた内容は前回までの会議から継続して審議されているものが多かったので、その回だけ参加しても分からない内容も多くて。改めて情報格差の大きさを実感したタイミングでもありました。今では「組織のフラット化」に合わせてコミュニケーションツールのSlack上にほぼ全ての情報が上がるようになり、拾おうと思えばいくらでも自発的に拾えるので、情報格差はだいぶ少なくなってきた印象です。
〈当時役員が感じていたことーメンバーへの信頼が高まっていたからこそできた覚悟〉
萩原 典子
常務取締役。2005年リクルート時代、代表西坂に声を掛けられ創業メンバーとして参画。創業初期は経営管理全般を支えつつ、主要な顧客を獲得し、プロジェクトマネジメント事業の基盤を構築。現在は事業推進部(管理部門)責任者として、社員が幸せに働くための環境作りに尽力している。
経営会議のライブ配信ではどんなコメントが書かれるのだろうかと心配もありましたが、前向きな内容が多く、GCストーリーってやっぱりいい会社だなと思った記憶があります。とはいえ、マネージャーの廃止を皮切りに、いろいろなことが変わり始め、私は母親的な心配性思考で、不安を感じていました。
ちょうどその頃、信頼する社外の方々に会社の状況や自分の葛藤を相談する機会がありました。そこで皆さんに、会社にとっても私自身にとってもその葛藤は素晴らしいと絶賛され、「それなら経営会議もなくしたほうがいいよ!」とアドバイスされたのです。今思うと、若干面白がられていた気もしますが(笑)、私の中で「本当に大事なものを見極めよう」という覚悟ができた瞬間でした。
そして翌日、経営会議廃止を提案しました。本当に必要であれば、自然にまた経営会議が立ち上がるし、または別な形の何かが生まれるかもしれないと思ったのです。心配性な私からの提案にみんな驚いていましたが、流れ的にもやってみよう、という判断で経営会議も廃止になりました。今思うと、ライブ配信などをやってみてGCのメンバーへの信頼が高まっていたからこそ、できた覚悟だった気がします。
<編集後記>
強固な信頼関係があったからこそ踏み切れた経営会議のオープン化、ライブ配信、そして会議自体の廃止。小さな変革から地道に取り組んだ現場担当者と、その動きを葛藤と共に受け入れた経営陣。最終的には「組織のフラット化」という大きな改革に繋がっていくこの動きは、小さな変化と変革の積み重ねと信頼関係から成り立つのだと実感しました。次回はいよいよ最終回、組織のフラット化に向けて一気に加速していく変革と大きな混乱についてお届けします。お楽しみに!^^
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取材・文・構成・編集・デザイン/蓮池 しのぶ 撮影/熊谷怜史
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