見出し画像

公務員サークルに入ったら公務員の課題が見えてきた。「よんなな会、オンライン市役所とか色々あるけれど」

 2020年10月に初めて出版した著書にも書きましたが、自治体(市役所、町役場、村役場)同士は「同業他社」でありながら情報の連携が信じられないほど行われていて、2018年に四條畷市で公式LINEの立ち上げの目玉として全国初の試みを行ったところ、ざっと30以上の自治体から視察やヒアリングに来ていただきました。ある自治体での良い取り組みが他のところに波及するのは、住民利益の広がりという意味ではとても良いことであり、そうしたところから国全体が良くなっていくのだろうと思っています。

 さらに志の高い公務員の皆さんは、休暇でも横のつながりを作り積極的に活動をしています。民間ではあまり知られていないけれど、公務員サークルがオンライン・オフラインで乱立と言って良いくらいたくさんあって、日々の業務に活かそうと奮闘している様子が見られます。

 自分も2017年から2020年までの公務員時代にこうしたサークルに誘っていただき、何度か参加させていただきました。普段の職場では仕事に対するモチベーションには職員ごとの違いがあって当たり前でしたが、こうした場では皆がどうすれば住民利益になる仕事ができるかを真剣に考えていて、もっと多くの人、とりわけ一般市民とされる行政や政治から縁遠い人にも知られたらいいなと思っていました。

 これら公務員サークルに関わることはメリットが多いのは当然ですが、一方でその存在自体が公務員の課題を映しているという側面も多くあります。

公務員の志や能力が1%上がったら、社会がもっとよくなる

 たとえばあるサークルでは、「公務員の志や能力が1%上がったら、社会がもっとよくなる」ということを標榜して活動しています。その通りと感じる反面、元民間企業で公務員を経験した人間からすると、ある面においてはたかだか1%ではまったく足りないと思うのです。ある面と指すのは、社会を動かしているサービスや商品の背景知識のような、専門的な知識やそれを動かす経験です。このあたりは民間と公共では知識差が非常に大きいと感じていましたが、ある意味では当たり前です。なぜなら、自治体はものづくりもサービス開発もしないからです。そのため、高めるべき能力とは時代を大きく捉えることで、住民が何を求めていて今が何ができるかを見極める能力、つまりはマネジメントだと思います。ビジョンを描く能力は首長など政治家に求められているような印象がありますが、実は公務員一人ひとりが高めるべきだと考えますが、そのためのノウハウは足りないように感じました。

「脱お役所仕事」は民間を見習うことではない

 ではそうした能力を高めるために民間企業や公務員以外の世界にそのノウハウを求めれば良いかといえば、そうではないと思います。なぜなら、民間においても大きなビジョンを描いてそれに基づいて今日明日を動いている人などほとんどおらず、短期的な競争の積み重ねで長期的な繁栄を考えるしかないくらい、余裕がないからです。とはいえ、大局的な視点に立つために専門知識を少しでも多く取り入れたり、最新のトピックを掴んでおく努力は必要なのでその点で民間企業とのコミュニケーションは必須です。要は、公務員以外の世界に何を求めるかを明確にすべきだということです。

 残念なのは、こうした公務員サークルは公務員以外を排除する傾向が見られるばかりか、なぜか学生を巻き込む方に力点を置きがちという点です。これは自分の経験に基づくものですが、そのようにする理由として「公務員同士だと安心して意見交換ができる」ということが挙げられていて唖然としたものです。普段、公務員が接している相手、平たく言えば顧客は公務員以外であることが多いにも関わらずです。結局、意識の高い公務員同士が日々の業務で感じるストレスを分かち合い、同じ考えを持つ人がいる安心感で明日のモチベーションを高めるということならば、何のために余暇を業務の延長に費やしているのだろう、と思ってしまいます。

公務員の強みを最大化し役割分担を

 これまで積み上げてきた公務員の強みを考えると、法律や条例などをもとに社会の秩序を保ち、方向づけをしてきたという点に尽きると思います。公務員には、ルールを守る、という点ではどの業種よりも長けたところがあるのです。今ある課題を解決し、これからの社会・地域を良くしていくために条文をどう読んでいけばいいか、どうしてもネックになるところをどうすれば改良できるのか、そのあたりにスコープを絞って成長することを考えることが、公務員全体の成長と社会の課題解決や成長とリンクするのではないでしょうか。

 公務員が成長して地域が良くなり国全体が良くなっていくことが、もっとも良いシナリオなのだから、そのためにはどうすれば良いのか、私も再び民間人となった立場からこれから考え提言していきたいと思います。


サポートいただける方は、どんな記事をご所望かを是非お伝えくださいませ。日頃の発信に活かし、還元させていただきます。