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#49. 育児を楽しむって何?

「育児、楽しんでって言われて、どうしたらいいか分からない」
そう言うお母さんの話を聞いて、
ウンウン、と首がもげるほど縦に振った。

子育てサロンで、保育士さんと子ども連れのお母さんたちと雑談をしている。

順番がきて、私に話を振られた。
「どうですか?楽しんでますか?」

「私は、私は……楽しく、ないですね……」
喋り終わらないうちに喉が詰まって、それ以上話せなくなってしまった。
目に溜まる涙を拭くためにタオルを探す。

状況を察してもらえて、話は次の人に流れていった。

楽しくない。
全然楽しくない。
今は胸を張って言える。
(胸を張って言うことじゃない)

在宅勤務の夫が幼稚園のお迎えに行ってくれていた時期はいつの間にか終わり、「今日は出社だから」「ごめん今日も迎えお願い」毎日、一歳の娘を連れて自転車に載せ、3人乗り自転車で帰ってくる。
帰ったらテレビをつける。
テレビを見させておく間にご飯の準備。
娘の前には一人で手づかみで食べれるご飯を置いておく。

「ご飯できたから食べるよ、テレビ消すよ」
「いやだピタゴラスイッチ見たい」
「じゃあそれ終わったら食べるよ」

毎日の攻防戦。

テレビを消して食べてくれるときはまだマシだ。
約束していたのに消したら消したで怒ったり、
その前からすでに不機嫌で
こっち来てと呼ばれたり、
離れようとするとしがみ付いたり、
妹に授乳しようとすると怒ったり、
毎日何のスイッチで不機嫌になるか分からず
対処の方法に苦戦する。

ご飯を食べるところまできたら
お腹がいっぱいになって機嫌が戻る息子。
自分の部屋に閉じこもって遊んだり
妹のおもちゃを奪ったりして遊ぶ。

今度はお風呂に入るまでの修羅場が待っている。

遊び始めたら「お風呂に入る」というタスクに頭が切り替わらないようだ。

「8時になったらお風呂入るよ」
「あと10分ね」
「先にお母さん入っちゃうよ」

機嫌を損ねないようにあらゆる手を尽くして
お風呂に誘導するが、頑なに動かない。

もういやだ
何なんだコイツ
もう知らない勝手にして

私の頭の中に広がる闇。

眠くなってぐずる娘。

「「うるさいなもう!!!」」

子どもに負けない声で怒鳴る。

実際に子どもを置いて一人でお風呂に入っていたこともある。
二人とも我関せず、それぞれ好きに遊んでいただけで
母が怒っていることを何も気にしていない。

泣いて怒鳴り散らして、
寝室に一人閉じこもって鍵をかけたこともある。

お風呂に子どもを入れて
鍵をかけて閉じ込めたこともある。

子どもを中に残して玄関ドアから外に出たこともある。
娘の泣き叫ぶ声が外まで聞こえる。
これが続いたら、通報されるんだろうか、
とうっすら考えた。

寒すぎてすぐに中に入った。


泣いていた私に、子育てサロンを主催している子育て支援員の先生から声をかけてもらい、ちょっと話してみましょう、と個別に話を聞いてもらう機会をもらった。

世間話から始まり、
今度復職すること、
お兄ちゃんが手に負えないこと、
仕事を頑張りたいけどいまはできないこと、
夫はブランクもなく仕事を続けていて悔しいこと、
子どもや家から逃げるために仕事をしたいと思っていること、
子どもを怒鳴ったり引っ張ったり閉じ込めたりしたことがあること、

涙を拭いては拭いては、話をした。
自分が、泣いて喋れなくなるときが
本心を話せているんだなということが分かっている。

「そういうことをやってしまって、自分を責めてしまうんでしょう?」と聞かれ、
「……どうだか、分からない。」
「でもよくないって分かってるから、涙が出てくるんでしょう。」
そうですね、と言いながらまた泣く。

どうやら今日のところは時間切れのようだ。
また来週来れる?と言っていただき、約束をして帰った。

やっぱり、相当、心配されてるんだろうな。


いただいたアドバイスは2つの選択肢。
一つは、少しでも心を落ち着ける時間が持てるように、一番辛い時間帯に、30分だけファミリーサポートの人に来てもらうこと。
もう一つは、具体的な声掛けの方法を心理士の人に聞くこと。

とりあえずは、
もう十分やっているから、それ以上何もしなくていいよ、そのままでいいよ
と言ってもらえた。


子育てって大変ってみんな分かってるはず。
一人でできないって分かってるはずなんだけど
どうして母親が一人で抱え込む状況になるんだろう。
母親は母親であることから逃げられないのに
父親は父親であることから逃げれるのだ。

悔しいよな。

先生に、ホントはもっと仕事をしたいのに、と話したときに言ってもらえたのは
昔よりも長く働けるようになったから、
今は育児を選ばなきゃいけない時間だけど、
もう一度必ず仕事ができるようになる。
またその才能を活かせるようになるときがくるから、
大丈夫。

ついこの間の転職活動で
出張が出来ないことを理由にお断りされたことも
記憶に新しいために、
よけいに心に傷に染みる言葉だった。

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