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Leica IIIf について


Ernst Leitz社が第2次大戦前の1933年に発売したフィルムカメラのLeica III型。
戦後、諸々の改良点を反映させた、III型の集大成ともいえる機種がこのLeca IIIfとなります。

Leicaに関しては既に世間で語りつくされており、ネットにも情報があふれかえっていますが、自分なりに使ってみた感想を記します。
ちなみに私はLeicaを使うのはフィルム、デジタルを含めこれが初めてですが、他社のフィルムカメラを何台か所有しており、それらの機種と比べての見方をしてしまうことはご承知ください。

良い点

工作精度の高さ

Leicaを語るときに必ず用いられる表現に、工作精度の高さ、があります。
確かに、同時代だけでなく、より新しい他のカメラと比べても、がたつきや軋みが少なくスムーズな動きを実感できます。
フィルムの装填や巻き上げ、フィルムカウンターやシャッターボタンなど、一つ一つの操作がスムーズに、かつ確実に行えます。
操作することに楽しみを感じられるカメラです。

作りの良さ

私の所有する俗にいうライカコピー機であるZorkiと比べると、デザインは全く同じはずなのに、見た目からして別物とわかる作りの良さがあります。
クロームメッキによる表面処理や、文字の刻印、墨入れなどが明らかに異なり、手間とコストがかけられていることをうかがわせます。
例えばフィルム巻き上げノブの滑り止めのローレット加工一つとっても、巻き上げていると指が痛くなってくるほど刻みが鋭いZorkiにくらべ、Leicaはしっかりと滑り止めの効果は発揮しつつも痛みは感じない、よく考慮されたデザインとなっていることを感じます。
工作精度の高さと相まって、一つ一つの操作をストレスを感じることなくごく自然に確実に操作できる、当たり前のことを同時代のカメラと比べ高い次元で実現しているカメラと感じます。

コンパクトなサイズ

一眼レフはもちろん、M型Leica等のレンジファインダーカメラと比べても、一回りコンパクトです。
片手に持って持ち運べるサイズでありながら、小さすぎて操作しにくいということもなく、持ち歩くのにちょうど良いサイズです。
私のLeica IIIfはセルフタイマーがない機種ですが、カメラ前面にセルフタイマーのレバーが無いおかげで片手で持ちやすくなるという意外なメリットがあります。

操作のしやすさ

フィルムを巻き上げるために軍艦部に目をやると、そのまま自然にシャッター速度、ピント位置、絞り、撮影枚数が目に入り、次の撮影に必要なすべての情報が得られます。
そのままカメラを構えてファインダーをのぞけば、ごく自然に両手がカメラを保持し、シャッターを探して指が迷うこともありません。
現代となっては珍しくもない、ごく当たり前のことなのですが、この時代のカメラで実現できている機種は多くはありません。
ユーザーインターフェースという概念がなかった時代の製品とは思えない、ユーザーに寄り添ったデザインがなされていると感じます。

いまいちな点

ファインダー

フレーミングとピント合わせは、隣りあった別々のファインダーで行います。
ピント合わせ用のファインダーは小さく暗く、現代の視点ではお世辞にもピント合わせしやすいとは言えません。
フレーミング用のファインダーも同様で、私が眼鏡をかけているせいもあってか、一目でフレームの隅々まで見渡すことはできません。
M型Leicaの一体型ファインダーがいかに大きな進歩であったか、実感します。

フィルム装填

慣れれば難しくはないのですが、やはりフィルム装填は緊張します。
Zorkiでは薄いカードを挟んで装填していましたが、Leicaではなぜか上手くいかないため、マニュアル通り、フィルムをはさみで切ってベロの部分を伸ばす方法で装填しています。
Zorkiと比べフィルムの巻き上げスプールがしっかりとフィルムを挟んで保持してくれるため、装填をやり直すことは大幅に減りましたが、確実に巻き上げられているのか不安な気持ちになることには変わりありません。

まとめ

M型Leicaの紹介でよく書かれているとおり、レンジファインダーカメラは、一眼レフのようにカリカリにピントを合わせ、きっちりとフレーミングして撮影するタイプのカメラではありません。
コンパクトなサイズとスムーズな操作で、スナップ撮影にその力を発揮するカメラです。
Leica IIIfはM型よりも一回り小さく軽く、一方でファインダーが見えにくいことから、よりスナップ撮影向きのカメラと実感しています。


以前から、Leicaはそのブランドイメージと価格の高さからか、とかく好評も悪評も誇大になりがちな傾向があると感じていました。
Leicaを使ったからと言って魔法のように良い写真が撮れることはなく(それを全く期待していなかったと言えば嘘になりますが汗)、何か飛びぬけてすばらしい機能があるわけでもありません。
同時代のカメラと比べても、あくまで、90年前の技術で作られた良いカメラ、それ以上でもなくそれ以下でもない、というのが率直な感想です。

もしかしたらLeicaのレンズを使えば魔法がかかるのかもしれませんが、あいにく、私の持っているL39マウントのレンズはニコンとキャノン、それにソ連製の3本のみです。
これらのレンズはどれも良いレンズであり、今のところLeica製レンズを購入する予定もありませんので、本当のところはわかりませんが、まぁ、魔法は存在しないと思っておく方が良いでしょう。

フィルム撮影において必要な機能が過不足なくそろい、撮影者を煩わせることなく撮影が可能、という点で、Leica IIIfは確かに良いカメラです。
そして、持っているだけで感じられる作りの良さとコンパクトさで、積極的に持ち歩こう、という気分にさせてくれます。
カメラを持ち歩く機会が増えればその分だけシャッターチャンスも増え、確率論的に良い写真が撮れる可能性も増えるでしょうし、そうなれば撮影が楽しくなりまたカメラを持ち出す。

そんな好循環を後押ししてくれる、それがLeicaの凄さなのではないか。
今更の凡庸な感想かもしれませんが、Leicaを初めて使うことで感じた正直な感想です。

フィルム価格の高騰が著しい昨今、なかなかお財布的にこのサイクルを回すのも楽ではないのですが、これからも散歩のおともに、活躍してくれそうです。

Leica IIIf , Nikkor-H•C 5cm f2 , Ilford XP2 Super400

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