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学会にくるアンケートに思う日本の未来と少子化

 学会からアンケートに答えてくれ、という一斉メールがきた。そういえば前も似たような案内がきていたような気がするな、と思ってアンケート先を開いてみたら、男女共同参画とダイバーシティに関するアンケートだった。まぁ、テーマはいいんだけどね。ただ、これに対応するために各学会内でも委員会を立ち上げろとか、WG作れってなって大学と二重に仕事が増えていくんだろうなという暗い未来を予想して憂鬱になる。こんなんなら学会は法人化なんか辞めて、任意団体に戻った方が絶対にいいんじゃないかとすら思う。国から助成金なんてびた一文もらってないのに。

 大学の委員会は減らず、増える一方である。なので会議も増える一方で、議事録や報告書の作成数も増える一方である。お偉いさまから届く調査依頼も増える一方である。思わず叩きつけたくなるようなExcelの書類を、毎年、毎年、いくつ穴埋めをしなければいけないのかと憂鬱になる。減ることはない。雑用とかいたフォルダの中に、どんどんサブフォルダが増えていく。書きづらいExcelファイルの見本市みたいなフォルダだ。これで、何がワーク・ライフバランスだ、働き方改革だと叫びたくなる。

 どうせ働き方改革で有給を取得させたかとかもアンケートやら何やらするんだろう?教員に対して「休日をどのように使いましたか?」とか「家族と過ごす時間は増えましたか?」とかいうくっそアホみたいな質問が来る未来が見える。本当にバカバカしい。しかもバカは一度始めると止めることを知らないので、それを何年も何年も繰り返すのだ。継続したアンケート調査とか、どうせ謳うんだ。PDCAサイクル?ふざけんな。その繰り返しが教員を、事務を疲弊させていることに奴らは気づかない。自分の部署での短い任期中に一つでも成果を出すために大学を使うんだろう? アンケート考えて、神Excel作って、大学に投げて、集計して報告書を書く。1年目は実態把握とか謳って控えめな結果にして、そもそも分かりきっていた問題点を洗い出したことにして、翌年はそれがちょっと良くなったように見える報告書を作ることで、何かがうまくいっているようにみせかける。ものすごく書き込みづらいExcel書類に教員が研究時間をつぶして書き込んで、事務が夜中に集計している姿なんて奴らは思い浮かべない。

 そんな状況で、学会にまでアンケートをするのが当たり前になってくると、もう本当にバカも突き抜け始めたとすら思う。学会に何を求めているんだろう?どうせアンケート結果に基づいて上から(提言という名の)偉そうな御提案をするんだろう?上から下に"御"提案したら、またどうせ来年も学会員にアンケートとるんだろう?どれだけ改善したかを自分の業績にするんだろう?くっだらねーな。研究者を、学会を、貴様らが昇進するための業績にするんじゃねぇ、と叫びたい。

 ・・・だいぶやさぐれてしまった。さて、ここで私が去年に一番、腹の底から笑ったニュースを紹介して終わりたいと思う。 

 このニュースの笑いのツボは、下記に集約されると思う。

“厚労省人口動態・保健社会統計室は「令和になった5月の婚姻件数は18年の約2倍あり、令和婚現象自体はあった。結婚を先延ばしした夫婦の出産時期も後ろズレしたと考えられ、その分、20年以降に出産が増える期待はある。動向を注視したい」としている。” 
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53727740U9A221C1MM8000/より引用

 これ、まじでいってるんだよ。本当に凄い。結婚と出産のタイミングの感覚が昭和のまんまだ。で、5月の結婚件数は2倍だとして、年間としてはどうなんだよ?

令和元年(2019) 人口動態統計の年間推計 - 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei19/dl/2019suikei.pdf

 実質的に変化はないじゃないか。つまり5月に多くの人が結婚しただけ?婚姻数が変わらずに、出生数が減ってるから来年は令和ベイビーが増える?令和ベイビーが令和2年の上半期にたくさん誕生したとしよう。それで年間出生数も上昇すると本気で思ってるんだろうか?今の若者の行動を昭和の感覚で計れると思ってやがる。しかも「増える期待はある」って期待すれば、出生数は上がると思ってるのだろうか?で心から言いたい。バカじゃないかと。子供を作らない理由をさんざんアンケートしてきただろう?

結婚と出産に関する全国調査 - 国立社会保障・人口問題研究所
http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou14/doukou14.pdf

少子化対策についてだってアンケートしてきただろう?

 得意のPDCAサイクルはどこにいったんだよ。何も結果を生み出せていないし、解決策の糸口さえ見えない中で「増える期待はある」ってのが厚生労働省の公式な見解だ。 出生数が上がらない理由をさんざん繰り返し繰り返し若者に聞いておいて、これだ。凄い。本当に感心した。去年で最も輝かしいニュースだった。

 僕らがここから学ぶべき事象は、つまりは学会だろうが、大学だろうが、お偉い人からやってくるアンケートからは何も価値なんて生まれないし、何かが改善するということも滅多にないということだ。アンケートに答えても僕らの声は奴らに届かない。だからこそ学会はこういうアンケートを無視する勇気を持たなければいけない(大学は文部科学省から来たら断れないだろうから、せめて学会ぐらいは無視してほしい)。もはやこの国ではお役人に何かを期待しても無駄なのだ。アンケートなんてくっそくらえだ。



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