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WEEK 11: アメリカの「共同親権」制度 - ダディ、もう日本人でいちゃ、ダメなの? / NYCで「実子連れ去り」の被害にあった子供たち

CHAPTER 26: ORDER TO SHOW CAUSE 2

 日曜日

 最高裁からやっと、口頭審理の日にちが決まったと連絡が入りました。
次の月の最後3週目。
 「緊急」ということで申し出たのに、まだ一ヶ月以上も待たないといけません。
 ここで、先週最高裁に申請した理由開示命令(Order to Show Cause)に関して、少し説明したいと思います。

 最高裁に離婚の申請をする。そして、その次にやらないとはいけないのは、離婚とそれに伴うこちらの主張を、証拠を添えて裁判所に提出する。それが、今回の理由開示命令(Order to Show Cause)でした。

 アメリカでは基本共同親権ですから、単独親権になる可能性は極めて0に近いのはわかっていたんですけど、こちらから要求したのは、単独親権。今住んでいるところも、父親がキープして、子供たちをここで育てる。その理由は、といった感じで、色々と母親の問題点などを、証拠とともに提出したということです。
 これに対して、最高裁から出た返答は、父親側のリクエストを全て認めることにするが、これに対して異議があるのでしたら〇〇月〇〇日に最高裁へくるようにといった書き方でした。
 今回の離婚のために雇った弁護士ではなく、普段のことを相談しているわたしの弁護士も、これを読み、いつものように正式な法的アドバイスではないけど、と前置きし、こう説明してくれました。
 「裁判では『立証責任(Burden)』があっち行ったりこっちにきたりするもんだからね。次はあちら側次第ということだね」

 月曜日

 いま働いている日本食屋の、水曜日の昼間のシフトに入りたいし、他にも仕事を探したいから、次男をデイケアに預けることにした。
 だから水曜日のピックアップの場所と時間を、学校で2時40分ではなく、グランドセントラル駅で3時30分に変えて欲しいと、母親の弁護士からわたしの弁護士にメールが来ました。
 仕事を探すのはいいことだけど、家で仕事をしているわたしが子供の面倒を見れるのに、デイケアに2歳の次男を入れる必要は全くないと思いました。
 しかも子供たちの親権はまだ双方にあるのだから、子供たちに対して一方的な判断を下してはいけないと言われているのに、そんなことをどうでもいいというのもおかしい。
 それに今でも子供たちとは週に一回、24時間も一緒に過ごせないのに、なぜまた更にその時間を減らさないといけないのか。

 そう考えたわたしは、弁護士に、ノーと答えて欲しい。
 時間の変更に関してダメだけど、場所はどこでもいい。
 そして子供の親権は双方にあるのだから勝手にデイケアに入れるのはおかしい。
 そう返信して下さいと頼みました。

 水曜日

 グランドセントラル駅のホールの真ん中にある時計の前で、2時40分に子供たちを引き取りました。
 母親とはなんの会話も交わさないために、いつも、引き渡しはこんな感じです。
 10メートルぐらいまで近づくと、長男がわたしに気付きます。
 そしたら母親にハグして、次男の乗っているストローラーを押して、こちらに向かってくる。
 このやり方だと、周りに人がいるんで、何かあったらすぐに介入してくれる人たちは五万といますし、お互いに一切言葉を交わす必要はないんで、一番健康的なやり方だと思っています。

CHAPTER 27: A CALL FROM A FRIEND FROM TOKYO

 土曜日

 東京に住んでいる、50代の親友から電話がありました。
 今、わたしに起きている状況に関して相談している、数少ない友人の中の一人です。
 この方は、サラリーマンから10年ぐらい前に独立。とにかく仕事が忙しい人で、あまり家庭を顧みない、典型的な「昭和タイプ」です。
 彼は、わたしにこう言いました「〇〇ちゃん、僕ならもう諦めるね。だって実際、仕事もあるし、そんなに子供の面倒も見れないし。追っかけるだけ泥沼になり、お金だけかかりそうだし。一ヶ月に一回でも半年に一回でも会えればいいと考えるしかないよ」
 この友人には奥さんもいますし、娘さんも大学を卒業し、今は就職しています。
 けど日本の法律だと、子供に会えなくても、ずーっと婚姻費用とか養育費とか色々と払い続けなくちゃいけないんだよ、金払うのなら、会いたいと思わない?とわたしが説明すると、彼はびっくりして「え?それは、たとえば奥さんに非があっても?」と聞いてきたんです。
 色々と説明したら「奥さんが不倫して、男のところに行っても払わないといけないの?」「自分から出て行ったんだから、それはおかしいでしょ?」と矢継ぎ早に色々と聞かれました。
 実際に離婚経験のない人は、こんなもんなんだと思います。
 
 友人に、長々と説明しました。
 アメリカは日本と違って、子供の利益最優先だから、奥さんが浮気しようが旦那が浮気しようが関係ないんだよ。破綻主義と言って、子供の利益を考えた時に、父母の闘争理由は関係なし、ということなんだよね。
 父母が単独親権でいいからと合意して、たとえば母親だけに親権を持たせようとしても、裁判所は却下することが圧倒的に多いんですよ。
 子供をこの世に出した責任は、ちゃんと両親でしっかりと取りなさい、その過程の中で、子供を傷つけることは絶対にタブー。そうなると、世界で一人しかいない、お父さんでもお母さんでも、会えない、ということは絶対にあり得ない。もちろん子供を虐待したりするケースは別だけど、それ以外は原則共同親権で、ちゃんと定期的に両親が、十分に「子育ての時間」を持てるようにする。それが子供にとって一番だし、たとえば、これならどちらかの親から子供が虐待されていたら、片方の親が気づくだろうし、子供を守るという意味でも一番という考えなんだよね。 

 友人は、そうなんだぁー、と言うと少し黙ってしまい、最後に、まぁ、いずれにせよ、〇〇ちゃん、頑張ってね、僕は応援してます、と言ってくれました。

 結局、単独親権制度に慣れている日本人の一般の感覚は、こんなものだと思うんです。
 経験したことないから知らないのは当たり前だし、日米の法律の違いを聞くと、言葉に詰まる。
 
To be continued…..(続く)

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