アボカド大好き

都内在住。読書とレアル・マドリー。

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  • アボカド大好きの【読書記録】

    読書録であり、備忘録です。

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    基本、レアル・マドリード です。

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【読書記録7】「論理」と「考える」は、別物。

 皆さんいかがお過ごしでしょうか?  今回紹介する本は、野矢茂樹著『哲学な日々 考えさせない時代に抗して』(講談社)です。  論理学や哲学の著作を多く出している野矢茂樹氏のエッセイです。もともと野矢氏の著作は他の哲学者とは違い、比較的平易な言葉を使うので読みやすいものが多いのですが、このエッセイはさらに読みやすいので気軽に読めると思います。 なぜ論理が必要なのか このエッセイの面白さは、哲学や論理などの難しい話が平易な語り口で語られるために、読者も身構えてこわばることな

    • 【読書記録15】鋭い洞察と美しい文章でページをめくる手が止まらない。圧巻の稲作体験記。

       皆様いかがお過ごしでしょうか。今回紹介する本は、近藤康太郎著『アロハで田植え、はじめました』(河出文庫)です。 『アロハで田植え、はじめました』は、タイトルの通りの稲作体験記です。ですが、この体験記が何よりも素晴らしいのは、その文章のうまさと切れ味です。著者の近藤康太郎氏は朝日新聞の記者であり、ライターとしてもいくつかの著作を出版しています。 ライターとして生きていくためのオルタナ農夫  著者の近藤氏は、朝日新聞で地方への異動を希望し、オルタナ農夫として生きていくこと

      • 【読書記録14】「あとがき」まで美しい、最果タヒの現在地。

         皆様いかがお過ごしでしょうか。今回紹介する本は、最果タヒ著『愛の縫い目はここ』(リトルモア)です。  本書『愛の縫い目はここ』は、詩人であり、小説家の最果タヒ氏による詩集です。  全体を通して、最果氏の生への肯定、日常への光への眼差しの優しさを感じました。最果氏の感受性は、その鋭敏さゆえに、何かがこの世に生まれることに対して愛を感じると同時に、その生命がいずれは終わりを迎える、あるいは自分が先にこの世を去るために、終わりまで見守ることができないことの悲しみにまで、想像が

        • 【読書記録13】愛すべきヘンテコSF群像劇! 森見登美彦・著『四畳半タイムマシンブルース』(角川文庫)

           今回紹介する本は、森見登美彦・著『四畳半タイムマシンブルース』(角川文庫)である。  著者の森見登美彦は唯一無二の人である。難解で上級な語彙が多用される硬派な文章ながらも耳心地の良いリズミカルな文体で、京都を舞台とした数多くの作品を世に送ってきた作家である。原作の幾つかはアニメ化もされ、アニメから森見登美彦を知った人も少なくない。  そんな森見登美彦の代表作の一つに『四畳半神話大系』(角川文庫)がある。この作品は鬼才・湯浅正明監督の手によってアニメ化されたことで、人気が加

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        【読書記録7】「論理」と「考える」は、別物。

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        記事

          【翻訳】ロマン・アブラモビッチ氏の戦争犠牲者のための基金は、ウクライナ人だけに送られるのではない

           今回は、ガーディアン紙の記事の翻訳です。  ジェイコブ・スタインバーグ氏による2022年3月3日付の記事『Roman Abramovich’s funds for war victims will not only go to Ukrainians』を訳しました。  記事の後に要約を付しました。次の行より、記事の全訳です。 ロマン・アブラモビッチ氏の戦争犠牲者のための基金は、ウクライナ人だけに送られるのではない・チェルシーのオーナーは、「すべての戦争の犠牲者」を助ける

          【翻訳】ロマン・アブラモビッチ氏の戦争犠牲者のための基金は、ウクライナ人だけに送られるのではない

          【翻訳】ロマン帝国:アブラモビッチの破滅の種は最初からあったのか

           今回は、2022年3月3日付けのガーディアン紙の記事の翻訳です。イギリスのジャーナリストのデビッド・コン氏による記事『Roman’s empire: how the seeds of Abramovich’s demise were there all along』です。  もちろん、記事のタイトルの「Roman’s empire」はローマ帝国とロマン・アブラモビッチのファーストネームを掛けています。  この記事は、アブラモビッチがチェルシーを買収してから売却するまでの顛末

          【翻訳】ロマン帝国:アブラモビッチの破滅の種は最初からあったのか

          アブラモビッチとプーチンの関係についての覚書

           皆さんいかがお過ごしでしょうか。  フットボールが好きな人の中には、フットボールが国際政治の影響を受けたり、逆に影響を与えたりしてきた歴史を知ってる人は少なくないと思います。今回はロシアのウクライナ侵攻の欧州フットボールへの余波についての話です。 アブラモビッチがチェルシーと距離を置く 現地2022年2月26日に、ロシア出身の大富豪・アブラモビッチ氏がチェルシーの管理・運営権を譲渡することが明らかになりました。アブラモビッチは事実上経営から身を引く見込みとなりましたが、

          アブラモビッチとプーチンの関係についての覚書

          【読書記録12】現代思想を使いながら学べる稀有な本

           皆さんいかがお過ごしでしょうか。今回紹介する本は、難波江和英、内田樹著『現代思想のパフォーマンス』(光文社新書)です。 本書の狙いと構成 『現代思想のパフォーマンス』は他の現代思想に関する書籍とは一線を画す特異な本です。なぜなら、本書は現代思想をただわかりやすく解説しただけのものではないからです。  本書の企図は「まえがき」で説明されています。  『現代思想のパフォーマンス』では6人の思想家が紹介され、それぞれに案内編、解説編、実践編が付してあります。本書で紹介されてい

          【読書記録12】現代思想を使いながら学べる稀有な本

          データで見る「PSG vs Real Madrid 1st Leg」

           皆さんいかがお過ごしでしょうか。  今回は、21-22シーズンのCL Round 16屈指の好カードである「PSG vs Real Madrid」の1st Legをデータで振り返ります。なお、この記事を書くにあたって、「WOWOWサッカーアリーナ」のデータを参照しました。  私はレアル・マドリードのファンですので、本記事はマドリー視点のものとなっています。ご了承ください。 PSG vs Real Madridのスタメン 両チームともフォーメーション表記すれば[4-3-3]

          データで見る「PSG vs Real Madrid 1st Leg」

          【読書記録11】それは突然に、なんの前触れもなく。

           皆さんいかがお過ごしでしょうか?  今回紹介する本は、村上春樹著『女のいない男たち』(文春文庫)です。  2021年公開の映画「ドライブ・マイ・カー」は、本書『女のいない男たち』の村上春樹による同名の短編小説を基に、濱口竜介が共同執筆・監督したものです。  本映画は、第74回カンヌ映画祭で脚本賞受賞ほか全四冠に輝いています。 『女のいない男たち』(文春文庫) 本書『女のいない男たち』(文春文庫)には珍しく、「まえがき」があります。まえがきにおいて、本書は短編作品集で

          【読書記録11】それは突然に、なんの前触れもなく。

          レアル・マドリードの5バック攻略を振り返る。

          動機 アンチェロッティ率いるレアル・マドリードは現在21-22シーズンのラ・リーガで首位独走中で、CLのグループステージも首位突破。昨シーズンとは見違える素晴らしいシーズンを送っている。  ところが、今シーズンは5バックで引かれた相手に対しては二の足を踏んでいる。5バック相手にはオサスナとカディスにスコアレスドロー、2022年の初戦となるヘタフェ相手に0-1で敗北と、惨憺たる結果となっている。  もはやマドリーが5バックをどのように攻略したのかが遠い記憶になりかけていたので、

          レアル・マドリードの5バック攻略を振り返る。

          【読書記録10】抜群に面白い!梅崎春生のユーモア溢れる文章に触れよう。

           皆さんいかがお過ごしでしょうか。  今回紹介する本は、梅崎春生著『怠惰の美徳』(中公文庫)です。  私は『怠惰の美徳』という題名に惹かれて本書を購入しました。ゆえに、勉強不足で本書を読むまで梅崎春生という作家の名前を知りませんでした。そこで、梅崎春生について知らない方もいると思うので、まずはそこから始めます。 戦後派を代表する作家 「戦後派」とは、一般に第2次大戦後に登場した作家や批評家の一派のことです。梅崎春生以外には、大岡昇平や埴輪雄高などがいます。彼らの特徴とし

          【読書記録10】抜群に面白い!梅崎春生のユーモア溢れる文章に触れよう。

          【読書記録9】〈じぶん〉とは何者か?をめぐる哲学的思索。他者との危うい関係を考え直すきっかけにも。

           皆さんいかがお過ごしでしょうか?  今回紹介する本は、鷲田清一著『じぶん・この不思議な存在』(講談社現代新書)です。  本書は、臨床哲学などを専門にしている鷲田清一氏による〈わたし〉に関する論考です。200ページに満たない小著ですが、読み応えのあるやや難解な議論が続きます。ですが、ひどく晦渋な文章というわけではありません。読者の固定観念を揺さぶる知的好奇心に富んだ書です。 女の子は「女装」によって女になる 「じぶんとはいったい何者か?」を人生の中で自問したことがある人

          【読書記録9】〈じぶん〉とは何者か?をめぐる哲学的思索。他者との危うい関係を考え直すきっかけにも。

          【マッチレビュー】ベティスVSレアル・マドリード

           皆さんいかがお過ごしでしょうか?  ラ・リーガ第3節のベティス戦。ベニート・ビジャマリンでのアウェーゲームです。ベティスは今シーズン、EL(ヨーロッパリーグ)に出場し、古橋選手のいるセルティックとも対戦します。ペジェグリーニ体制2年目で、一筋縄ではいかない相手です。  私はマドリディスタなので、今回もマドリー目線でマッチレビューを行います。また、戦術に関しては勉強中なので、戦術に関心のある人は他の人のマッチレビューをご覧になってください。 試合結果 主審はラ・リーガで

          【マッチレビュー】ベティスVSレアル・マドリード

          三島由紀夫と学生たちの教養主義

           皆さんいかがお過ごしでしょうか?  先日、『三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜』を観ました。現在、AmazonPrimeVideoで無料配信中なので、私もそれで観ました。  感想としては、すごく偉そうに聞こえるかもしれませんが、それなりに楽しめました。三島由紀夫と東大全共闘との討論の映像は、細切れで見たことはあったのですが、これだけの尺の映像は見たことがなかったので貴重でした。  さて、この映画を観て意見や評価が分かれるのは、討論の内容の分かりにくさだと思いま

          三島由紀夫と学生たちの教養主義

          【読書記録8】未来を創造するために古典を読もう

           皆さんいかがお過ごしでしょうか?今回紹介する本は、桑原武夫編『日本の名著―近代の思想 改版』(中公新書)です。  本書はなんと記念すべき中公新書の第1刊目です。初版発行は1962年です。本書は、明治維新から1962年当時にいたるまでの日本人による50冊の名著を紹介した本です。福沢諭吉『学問のすゝめ』から丸山真男『日本政治思想史研究』までが、解説を加えて紹介されています。 なぜ過去の思想から学ぶのか  本書の冒頭、「なぜこの50の本を読まねばならないか」で、編者の桑原氏は

          【読書記録8】未来を創造するために古典を読もう