見出し画像

こぼれちゃうってなんだよ/メイドインアビス-深き魂の黎明-レビュー

先日映画館で1本の映画を観て、そして泣きました。そんなつもりはなかった。この映画の名前は、メイドインアビス-深き魂の黎明-

存在は知っていたけど、まともに原作もアニメも見たことなかった。Twitterでみんなの感想を見る限り、見た目のわりにとんでもない作品だと分かった。

そこで観に行くことにした。映画館に行くと、思いのほか女性のお客さんが多かった。やっぱ可愛いキャラクターが出てるから女性人気も強いのかな?と思ったりもした。

そして上映が始まった。


無邪気で健気な主人公達

主人公であるリコ、レグ、ナナチはみんなとても無邪気で感情豊かだ。いちいち1つ1つの動作が可愛い。これのどこがR指定なんだ?と思った。プルシュカもすぐにリコと仲良くなって、いい雰囲気だった。

特にナナチが可愛かった。女の子っぽい感じがしつつも、緩い感じがいい。ぬいぐるみも是非ほしい。

しかし突如ナナチが顔色を変えた。

ボンドルドというやつは、過去に相当の恨みをナナチから買ってしまったらしい。紳士な雰囲気を醸し出しつつも、コイツはヤバイやつだなと初見ながらに思った。

例のシーン

画像1

そして予告編にもあったこのシーン。この映画の本性があらわになる瞬間。

レグの周りのやつらはめっちゃ興味津々だったが、僕は思った。「お前ら頭おかしいだろ???」

これがマッドサイエンティストというやつなのかと思った。悪意は微塵も伝わらない。純粋に興味に赴くがままに「ほしい、ほしい」と連呼していて、これは夢オチじゃないのかとも思った。

このシーンは思わず半目になった。前評判はあれど、これほどとは思いもしなかった。多分近年観た映画で1番キツイシーンだったと思う。特にあれだけ幼い子どもが、あんなにも残虐な行為を受けてるっていう描写を見たこともなかったからこそ、余計だった。

他のシーンにも言えるけど、めっちゃ痛い目に遭った後に、傷は負ってあれど、ケロッとなってるのはすごいなと思った。この子達のメンタルは、絶対俺より強い。

プルシュカのいう女の子

最初は気のちょっと強い無邪気な女の子だとしか思わなかった。でもボンドルドと一緒にいながら、ここで育ったというなら、その過去はある程度察しはついた。案の定その予想はあたった。

ボンドルドを酷い奴だと思うことはできても、その憎悪をプルシュカに向けることはどうも出来ない。彼女の過去を知ると、一概にボンドルドに思う気持ちを否定は出来ないからだ。ひな鳥が生まれて初めて見たものを親と思うように、プルシュカにとってボンドルドは、自分の常識そのものだったのではないのか。

僕らとはズレた価値観

この作品そもそもに言えることだが、いわゆる普通と呼ばれる価値観とは明らかにズレた価値観を、彼女達は持っている。人間の手によって生み出される数多の物語は、一般人の価値観、嗜好にある程度似通っている。それが共感を生み、感情移入のトリガーとなる。

しかし、この物語のキャラクター達の価値観は、一般人には理解しがたい。確かに彼女達の辛さや痛みは、嫌というほど共有出来る。しかし、それは共感には程遠い。辛さや痛みも限度を越せば、共有したいと思えなくなる。その結果、彼女達がどうしてそこまでしてアビスの底に行きたいんだ?という疑問に悩まされることになった。

登山家の中には、莫大なお金を時間を費やして、エベレストやキリマンジャロといった世界最高峰の山々に登ろうとする人がいる。彼らは無事戻ってこれない可能性だってある。何なら戻ってこれない可能性の方がずっと高い。それでも彼らは山に登るのをやめられない。「そこに山があるなら登るしかないじゃないか」と言わんばかりに、頂上めがけてアタックする。

彼女達も登山家の同じマインドを持っているんだと思う。自分達の行く先々には何が待っているんだろう?その好奇心が、ありとあらゆる危険やリスクさえも打ち消している。

そして最後のシーンで僕は泣いてしまった。散々ひどい目にあって、お互いボロボロになるまで戦った上で、仲良くしようなんて無理な話なのに。心のどこかで、あんな理想像を思い浮かべていたのかもしれない。

ここからはネタバレ全開で書きたいので、申し訳ないけど、有料にさせてもらいます。
しっかりネタバレ全開で「僕が泣いた理由」を書いていく。


ここから先は

820字

¥ 100 (数量限定:残り 5 / 15)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?