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「救急車」のサイレンが 聞こえたら!

突然ですが 皆さんは「シャーデンフロイデ」
という言葉をご存じですか?

ドイツ語ですから  知ってる方は少ないかも
知れませんね

それじゃ この言葉に近い日本語があるんですが
「他人の不幸は蜜の味」なら  どうでしょうか?

この言葉なら ご存じですよね?

次は 私が中学3年の時に経験した  この言葉に
まつわる出来事
ですので どうかその話を聞
いてください


私は  高校受験を目前に控えた 2月のある日
ドジな話ですが 入院してしまったのです!
(今までの人生で 入院したのは この一度
きりです

最初は ただの風邪だと思ってたんですが …
一週間 経っても熱が下がらず…そのうち全身
黄疸おうだんが出て  白眼まで黄色くなったため
このA病院で 検査した結果  すぐ入院することに
なってしまいました

原因は 肝機能が完全にダウンしたためでした

治療の一環で 500mL「ブドウ糖注射液」
毎日2本ずつ  総計 200本
も 左右の腕の静脈
に1日交替で針を刺して  点滴したのです

そして治療の甲斐あって 2ヶ月もすると症状
が改善して  病院内をゆっくり歩ける状態まで
どうにか回復しました

A病院「救急病院」でしたので  様々な患者
毎日のように 救急車で運ばれて来ました

ただ  急患専用の搬入口無かったことから
一般の患者と同じ正面玄関が 使われていました

一方 病院の入院患者といえば  皆 基本的に
ひま」です
から  不謹慎な話なのですが 毎日
救急車で運ばれてくる人に対して 興味津々
遠巻きに見物するのを 日課にしていました

そのため救急車のサイレンが聞こえて来ると
大部屋では  こんな会話が交わされたのです

 患者A:「どうだ?来るか?」

   〃 B:「来るなぁ…こりゃ!」

   〃 C:「いける  大丈夫だ!」

そして何處どこが悪くて入院しているのか?
と頭を捻りたくなるほど 俊敏な動きで  2階の
病室をとび出す
と 定員10名のエレベータに
駆け込んで 
1階にあるエントランスホール
まで移動し  救急車が到着するのを 今や遅し!
と待つ訳です

そこへ 救急車が到着! 救急隊員は患者を
乗せた「ストレッチャー」
を病院内に運び込み
迎えに出た看護師らと短い会話を交わします

どうやら  この急患は 2台の乗用車が側面衝突
した事故の 片方の車の男性らしい かなりの
大ケガ
を負っている様子!

20名程の入院患者らは 固唾を飲んで見つめ
ますが「ストレッチャー」に横たわる男性は
微動だにせず 目も閉じたまま
です

入院患者らは  特に面白みが無いと思ったのか
「帰ろう」と囁き合った  その時でした

今まで  ぐったりしていた男性が   いきなり
「グァー」と大声を上げた後 ストレッチャー
の上で  くるりと寝返えりを打ったのです!

すると男性の後頭部から背中に掛けて  深い傷
あらわになり 大量に出血している様子

ハッキリ見えました!

それを  目の当たりにした入院患者らは 皆
フリーズ状態
になり  急患の男性を  呆然と
見送ることになった
のでした

その後  皆は  2階へのエレベータに乗ったの
ですが「凄かったな~」とか「酷かったぁ…」
などと  皆 少し嬉しそうに●●●●●話す姿は とても
異様な感じ
がしました!

「人の不幸は蜜の味」という言葉は  まさに
この 入院患者達のためにあったようなものでした!



ところが
実は   この話には
まだ続きがあったのです…




その日の面会の終了時刻 ぎりぎりになって
同じ部屋の入院患者 造園業の水野さん(仮名)
のところに
 奥さんが面会に来たのです

そして 何やら深刻そうな 表情で  水野さんに
ひそひそと 話しかけていましたが 突然

水野さんが「えっ!」と言ったきり 下を
向いてしまいました

奥さんはもう面会時間が終わるからと言うと
すぐに帰られたのでした

皆が心配して 「何かあったの?」と恐る恐る
尋ねると…水野さんは  重い口調で  こう言った
のです…

水野さん:
  
さっき  背中をケガした患者を  見たよな…
  あの事故の相手って …  俺の息子らしいんだよ
  B病院に運ばれてさ … 重傷で …

  更に…

  
他人の不幸じゃなくて…俺の…
  バチが … 当たったな…


と消え入るような 小さな声で
言ったのでした

私は 水野さんには とても
声は 掛けられなくて
でも その代わり…こう思いました

「今度 もし救急車が来たって
 絶対に  見に 行ったりしないから
 だから  水野さん  元気出して!」

 …と。

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