細く長く確実に、のポジション
華やかで大儲けしているポジションより、地味で目立たないがしっかりと収益を上げている、そんなポジションの方が個人的には好きである、という話
ここ数年、生活習慣がガラリと変わったせいもあり、あまりテレビを見る機会がなくなった。特に視聴率がいいとされているゴールデンタイムの時間は何かしら用事をしているか、早めに就寝してしまうので稀にテレビを見るとすれば早朝の時間となる。
この時間帯のテレビ番組には低視聴率ながら長く続く長寿番組が少なくない。ゴールデンタイムのバラエティー番組のような派手さはないが、どれも静かに地味な構成でありながらそこそこの視聴率を長年キープし、そこそこの知名度のある有名人が粛々と番組を進行していく。
驚くようなハプニングや過剰な演出は皆無だが、決まった構成を進める安心感が一定の視聴者の心を確実にリーチしている。
そしてその番組の関する書籍やグッズ、出演者の講演会のオファーなどがこれまた大きな話題にならないまでもある一定数、継続的に求められているのである。
そして出演者だが、曲がりなりにもテレビに出る有名人というポジションでありながら、テレビには活動の軸を置かず、あくまでもテレビは他の活動のための宣伝的な役割とし、人柄や専門性などを演出して浸透させるまでにうまく留めている。
そして丁度いい知名度と演出された巧みなキャラクターさえあれば、書籍やグッズの販売、または講演会などキャッシュポイントはいかようにも広がりをみせるのである。
料理研究家やコメンテーターなどの文化人、舞台俳優などのポジションはこの様な戦略をとるのに向いている。そしてテレビなどのメディアで第一線ではない、というポジションなので週刊誌などに足元をすくわれる様な心配も少ないだろう。
実にいいポジションだ。そしてこの手の番組や有名人は飽きがこない。時代に即して絶妙なチューニングはしているだろうが(できていない番組や出演者は消えていく)視聴者からは安心安定のいつもの番組なのである。
これらの番組が戦略的に作り上げられているかは不明だが(ここまでの考察はあくまでも私の妄想だ)一般のビジネスにおいてもこの様ないい塩梅のポジションをキープすることで他社に刺激されずのびのびと経済活動ができるのでないだろうか。
表向きは脆弱さを装い、地味に腰の低い姿勢を強調し、内部では他社が追いつけないほど強固な仕組みやスキルが積みあがっている、なんて理想的だと思う。
能ある鷹は爪を隠す、を地で行く会社は強いと思う。そしてそういった会社とは対照的にメディアに出ることを好み、有名になることに軸を置いてしまい自滅していった会社もまた多く存在する。
有名になること自体は否定はしないが、会社の、と言うより経営者の価値軸が有名になることで承認欲求を満たしていってしまうと非常に危うい。
うまくいっているときはいいが、まわりに本音を言える人間がいなくなってしまうといよいよ会社の転落が始まる。違和感に気づける経営者ならばいいが、出たがり、目立ちたがり屋の経営者にその様な感覚を持っている人は極めて少ないように思う。
どのポジションでどのような経営を展開するかは経営者次第だ。太く短く、打ち上げ花火の様にド派手にパッと散る一過性の大流行を刻むのも一つのスタイルだと思う。そしてその一方で細く長く、確実に積み上げていくスタイルも存在する。
私は個人的には後者のスタイルでありたい。
大きな花火こそ上げられないが一定数の顧客に細く長い価値提供を継続できるような会社として自社を日々磨いていきたい。
なんだか色々と考えてしまった早朝のテレビの前であった。
広く知られている面が必ずしも正しいとは限らない。物事には多面的な視点が必要。目立たないところにこそ強みがある、かも