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遠野で続く祈りの形「ノ馬-nouma-」。荒川駒形神社公式の御守りへ。


はじめに

2017年から「to know(トゥーノウ)」という、『遠野物語』を中心とした遠野の豊かな地域文化資源や、この土地で脈々と継承されてきた物語を編み直してその魅力を発信する活動をしてきました。可能なかぎり土地をめぐってリサーチを大切に行い、そこからインスパイアされたフィールドワーク、ツーリズム、新しいお土産などの商品開発、本の制作などをしてきました。2020年5月からは、“物語を届けるセレクトショップ”「TONO MADE」も立ち上げました。

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祈り、ともに暮らすもの。馬っこをアップデートする取り組み「ノ馬-nouma-」ができるまで

その中で、馬産地・遠野に根付く藁細工「馬っこ」をリデザインした「ノ馬-nouma-」が生まれました。

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田植え直後に五穀豊穣を祈る「馬っこつなぎ」から生まれ、古くから育まれてきた馬と人の関係性を表す素朴な藁細工。この、「手仕事」と「馬と人の暮らし」が組み合わさった文化資源を、どのように継承していけるか。お土産としてのポテンシャルにも魅力を感じていたこともあり、2019年春より、馬っこを現代に合わせた形でアップデートすることを考え始めました。

考えた末、

①ブランディングによる適切な単価への引き上げと販路開拓
②売上向上による、この事業を生業とする後継者の発掘と育成 

この2つの目標を設定しました。

地域文化にブランディングの視点を入れることで適切な単価に引き上げて商品化し、生まれた利益を作り手(後継者)へ還元することで、文化は続いていきます。幸い、現在ノ馬を制作していただいている方は、我々のプロジェクト開始後に出会った作り手さんで、非常に丁寧なものづくりをされる、まさに後継者と言える方です。

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適切な場所で、在るべき姿で。
荒川駒形神社 公式御守りの誕生。

約1年この活動を続けてきた中で、この8月、皆さんにご紹介したいニュースがあります。この度、ノ馬のオリジナル版として、遠野市の附馬牛地区にあり、およそ700年前から馬を祀る「荒川駒形神社」の公式の御守りを制作させていただきました。この春、ご祈祷を受けたものです。

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古くから人に寄り添い、また「神の乗り物」としても神聖視されてきた、“暮らしと祈り”の場で活躍してきた馬。その馬を祀る神社には、今でも馬産祈願や馬の成長を祈るために人が訪れますが、現在はそれだけでなく、交通安全や旅のお供、そして人に寄り添い守ってくれる身近な存在としての役割があるといわれています。

今回、荒川駒形神社の宮司・佐々木精太郎さんと何度もやり取りさせていただき、駒形神社として、そして御守りとしてふさわしい佇まい・デザインにするべく検討を重ねました。色、大きさ、紙垂のデザイン・付け方、ハンコなど。研究を重ね、納得のいく形となったと思います。

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試行錯誤したデザイン(↓)

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紐の色味は白(霊力のある馬)と朱(魔除け)の二種類。

もともと荒川駒形神社では「白」が重要です。というのも、荒川駒形神社の地で馬産の神をまつるきっかけとなるエピソードがありまして、およそ700年前に東禅寺の無尽和尚が、境内に水をひきたいと早池峰山の神に祈願したところ、早池峰山の神様が祈願に応じ白馬に乗って現れ、東禅寺の境内に早池峰妙泉寺の水を分与したそうです。和尚は、現れた神様の姿を書き写そうとしたが写し終わる前に姿が消えてしまい、白馬の片馬を写し残してしまったそうな。その片耳が欠けた白馬と神様を描いた絵馬を奉納したところから信仰を集める場所となったとされます。

ここの祭神も「蒼前駒形明神(そうぜんこまがたみょうじん)」という馬の守護神であり、白く霊異ある馬だそうです。




御守りは、2020年8月29日(土)から販売予定で、荒川駒形神社のお札や御守りを委託販売している「吉田智理容店(岩手県遠野市附馬牛町上附馬牛13地割28-1)」でのみ販売予定です。オンラインでの販売はありませんが、実際に荒川駒形神社に訪れて土地の力を感じ、御守りを手にしていただければと思います。(販売価格:3,000円/体。タテ約15cm×ヨコ約12cm)


− 適切な場所で、在るべき姿として、最大限活かす。−

民芸としての馬っこも自信をもって販売していますが、遠野という土地の力がある場所で、さらに馬を祀る神社でこそ、ノ馬の価値は最大限発揮されると考えています。土地の力を最大限活かして商品に反映させることで価値が生まれ、継続性のあるプロダクトになると思います。今後は、同じく馬と人の暮らしが根付く岩手県内各地の駒形神社へと展開できたらと考えています。

なお、ノ馬はスタンダード版とオリジナル版の2種を制作しており、スタンダード版は湿気が落ち着く秋頃から制作を再開し、TONO MADEにて販売予定です。夏場は自分だけのノ馬をつくるワークショップも開催しました。今後も定期的に開催する予定ですので、TONO MADEのInstagramfacebookアカウントをフォローいただければと思います。


馬とともに生きてきた遠野の人々

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馬産地・遠野では、馬は生活に欠かせない大切な存在でした。

「南部曲り家」といわれる馬小屋と生活空間がつながった家屋で家族同様に大切に育てられ、農耕や林業、荷物の運搬や人の移動など、馬の力を頼りに生活してきました。そのため市内には馬を祀る神社が点在し、絵馬や馬のお札が今も残っています。田植え直後には五穀豊穣の「馬っこつなぎ」が今も行われています。『遠野物語』の中でも知名度の高い馬と娘の悲恋譚であり家の神様である「オシラサマ」も有名です。

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遠野は、馬と人がこれほどまでに近い存在であり、今もなお脈々と文化が続いています。ぜひ「ノ馬」を通して、遠野の風土と文化を感じてもらえたら嬉しいです。


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