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インタビュアー蒲田健の収録後記

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収録後に感じたこと考えたことを語ります!
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2018年3月の記事一覧

蒲田健の収録後記:星野智幸さん

絶望から希望へ

星野智幸さんの最新刊「焔」

舞台はそう遠くない近未来と思われる日本。危機的な環境の中、焚火を囲む者たちが

各々の物語を語りだす。語られる物語は9つ。あらゆるものが極端な方に流れ、

行き着いた先は混とんとした世界。

元々は東日本大震災の前に書かれたものから昨年書かれたものまで、かなり長い

スパンの中で発表された独立した短編。連作にする意図はそもそもはなかったと

いう。だ

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蒲田健の収録後記:高野秀行さん

過ぎたるは及ばざるよりずっといい

高野秀行さんの最新刊「間違う力」

それまでに無い価値というのは 「違い」から生まれる。それは 「間違い」で

あるかもしれない。決して故意に「間違う」わけではない。

しかし後に、それは有効利用できるものになり得る。

飄々とした語り口で、驚愕のエピソードを次々と披露する高野さん。

その骨頂はトライアンドエラー 。

トライしてるからこそ、一つ一つのエピソー

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蒲田健の収録後記:柴田元幸さん

「声」が良い作品

柴田元幸さんの新訳による「ハックルベリー・フィンの冒けん」。

ヘミングウェイをして“今日のアメリカ文学はすべてこの作品から出ている”と

言わしめる、マークトウェインの不朽の名作。

その大きな特徴は、自然児ハック自身が書いているかのような、

語っているかのような、一人称の口語体。正規の学校教育を受けていない

ハックのそれは、つづり間違いだったり、事実誤認だったり、とにか

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蒲田健の収録後記:門井慶喜さん

わらすのかわりに童話を生む

門井慶喜さんの最新刊「銀河鉄道の父」

誰もが知る巨星・宮沢賢治。その偉大なる才能はどのような背景があって

生まれえたのか。それを彼の父親の視点から描きあぶりだした、

直木賞受賞作の今作品。

決して立派な聖人君子ではない、だからこそ逆に人間味を感じる新しい賢治像が

描かれている。

裕福な家庭に生まれ育った、いわゆるお坊ちゃまである賢治。その出自に関しては

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