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展覧会ができるまで(美術館の舞台裏)vol.15 広報編

美術館で展覧会が開催されるまでの工程を、学芸員の立場からひとつひとつ解説していくコーナーです。工程を細かく切り出していたら、大長編になってしまいました。でもあとちょっとです。

前回の記事(↓)

全工程はこちら(↓)をご覧ください。

22. チラシ、ポスターを各方面に発送する

みなさんは、いろんな展覧会情報をどうやって手に入れていますか?

「たまたまポスターを見かけて」「たまたまチラシを手に取って」というパターンが案外多いのではないでしょうか。

もちろん自ら展覧会情報サイトで調べたり、美術専門雑誌で興味ある展覧会を探したりする人もいると思いますが、そういった積極的に情報を探す人はどちらかと言えば少数派です。
わたしの美術館でも来館者アンケートを見る限り、大半の人は、たまたまチラシやポスターを目にして興味をもって足を運んだ人たちです。

そうした意味で、広報物はやっぱり重要です。

デザイナーさんと協力して作ったチラシ、ポスターの出番です。

というわけで、いざこれを各方面に発送しましょう。

発送先は、当然美術館ごとにリストがあります。
おつきあいのある近隣の美術館・博物館はもちろんですが、さらに全国の美術館・博物館まで広げるかどうかは展覧会の規模次第ですね。

北海道の人が、京都でやっている展覧会のチラシを地元で目にして「お、ちょっと行ってみるか」とはなかなかならないので、闇雲にばらまけばいいというものではありません。

美術館以外でも、図書館や自治体の文化施設にはよく送りますね。ある程度、客層がかぶっているところに狙いをつけるわけです。

それから、展覧会が子ども向け企画だったら、近隣の全小学校または中学校にもチラシ、ポスターを送ります。
近隣の商店に持参して、店頭にポスターを貼ってもらったりもします。

新聞社や出版社などのマスメディアには、すでにプレスリリースを送っている場合もありますが、あらためて広報物を送ることもあります。

あとは関係者枠ですね。美術館運営に関わりのある個人や団体、また大学の研究者や他館の学芸員などなど。内覧会の案内や招待券を同封して送ります。

さて、実際の発送作業ですが、アルバイトやパートの人がやってくれるところもあれば、そんな人員がいないため事務職員も学芸員も総出で封入・発送を行うところもあります。
大型企画展などでは、共催に入っているメディアの方で広報を請け負ってくれるので、この場合はリストだけ担当者に渡して発送はまるごとお任せすることになります。

23. ホームページに展覧会情報を掲載する

美術館の公式サイト(ホームページ)にも、展覧会情報を載せなくてはいけません。

展覧会会期中は、この展覧会ページを多くの人が参照することになります。
各種メディアで紹介されるにしても、SNSで拡散されるにしても、そこにリンク先としてURLを掲載できる展覧会ページが必要なのは言うまでもないですね。

さて、このホームページの更新は、誰がするのかというと、多くの場合はWEBサイトの保守運営の業務委託を受けている会社ですね。
美術館は少し凝ったデザインのサイトが多いので、昔のようにHTML言語の基本をおさえていれば何とかなる、というわけにはいきません(懐かしきホームページビルダー…)。WEBデザインの心得があるプロに任せます。

と言いつつ、がんばって全部自前でやっているところもあります。
シンプルなWEBサイトやWordPressとかWIXなどを使ったブログ系サイトなら、学芸員でもいじれますからね。
外注費がないところは、ここでまた一つ学芸員は専門外の知識を身につけていくことになるわけです。

展覧会情報のネット公開にあわせて、SNSをやっている美術館ではそちらにも情報を流します。

広報に関しては、ざっとこんな感じですね。

つづく>>