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美術鑑賞は私語厳禁?そこにワクワクはあるのかい?

こんなツイートを目にしました。『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』(すいません、未読です)の著者の川内さんのつぶやきです。

美術館は静かに鑑賞する場所だから私語はつつしむべきである、という意見が、多数派を占めるのかなと思います。学芸員としてはどう考えているか、ちと私見を述べさせてください。別に正解だとは思っていませんが。

結論から言ってしまうと

遠慮せずたくさん会話をしてほしい、です。

なぜなら、美術館は知的興奮を味わう場所であってほしい、と考えているからです。ん?少し飛躍してるな。つながるように説明しますね。

なんの本で読んだのか忘れてしまったのですが、日本とヨーロッパでは来館者が美術館にくる目的が違うというアンケート結果があったはずです(細部が違ったらごめんなさい)。

日本では、美術館に来るのは落ち着きや癒しを求めて。

ヨーロッパでは、美術館に来るのは知的好奇心を満たすため。

私はそれを読んで「ヨーロッパの考え方いいじゃん」「癒される空間よりワクワクする空間の方がいいな」と思ったんです。これ、どっちが正解とかではなくて、どっちのスタンスをとるかって話ですね。あくまで私はそっちがいいな、という。

で、癒しの空間を目指すなら、極力私語は控えてもらうべきだし、ワクワクする空間を目指すなら、どんどん会話してもらうべき、ですよね。話は単純です。

ただし、美術館としてそのスタンスが不透明だと、求めるものが全く違う人が入り乱れて、そうなると静かに観たい派の人の方にストレスがたまる、という結果になるわけです。その逆はあり得ないわけですから、たしかに不公平ではあります。

今はコロナのこともあって、おしゃべりをすることに必要以上に神経をとがらせている人もいます。来館者にアンケートをお願いしているのですが、「おしゃべりがうるさかった。もっと注意してほしい」という意見が、コンスタントに届きます(同じ人じゃないよ)。うーむ、どうしたものか、と悩みます。

いまのところ「大声は注意する。でも私語厳禁とはしない」というスタンスでいっています(私がそうしたいから)。それ以上厳しくしてる美術館ってあまりない気がするのですが、どうなんでしょうね。

悲しいかな、うちの美術館は常時人でにぎわうような人気美術館ではないので、まだそこまでのトラブルはありません。でも、もしもっとワイワイするような状態になったら、美術館としてのスタンスをきちんと明文化しないといけないかもしれません。

または、ワイワイデーをつくったり、その逆でサイレントデーをつくったり(いや、まる1日は厳しいから、ワイワイアワーとかサイレントアワーとかかな)、そんな工夫をするとかですね。

正解がないことこそ、考えるのは楽しいものです。


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