展覧会での写真撮影問題その1[SNS時代の美術館生存戦略]
noteでも美術館や博物館の展覧会レポートを書いてくれる人、たくさんいますよね。
私、あれ読むの大好きです。
学芸員と言っても、仕事でどこでも自由に観に行けるわけじゃありませんから。内覧会の案内とかもらっても、なかなか忙しくてね…。だいたいの学芸員は休日にプライベートであちこち観に行ってますよ。
しかし家族との時間も大切なので、最近は「これは気になる!」というぐらいの興味がないと、実際に足を運ばなくなってます。いかんですね。
そんなわけで、noteでいろんな人が書いている展覧会レポを読むのが楽しいわけです。
で、読み手の立場からすると、展覧会レポに会場写真がたくさん載っていて、実際に展示されてる作品の様子が見られると、引き込まれます。
逆に写真がなくて、テキストだけだとやっぱり寂しい。時に文章だけでもグイグイ読ませる書き手もいますが。
noteに限らず、ブログ、Twitter、インスタなど、今はいろんなSNSで展覧会の様子を発信する人がいますよね。
そしてそれがまた人を呼ぶ、という宣伝効果を生むのもまぎれもない事実。noteでも良い展覧会レポを読むと、自分も行ってみたくなりますもんね。
このように、集客効果という観点からすると、展示室で撮影OKにするべきでしょうが、話はそんなに単純ではありません。
美術館での撮影の是非を考える場合、いくつかの解決しなければいけない課題があります。
1、他の来館者の鑑賞の妨げになる。
2、作者の著作権の侵害になり得る。
細かく言えば、他にもありますが、大別するとこの2点でしょう。
2の著作権については次回解説するとして、まずは1番目の「他の来館者の鑑賞の妨げになる」という点を考えましょう。
美術館は静かに鑑賞する場所というのが一般的な考えでしょう。
作品と静かに対峙して、作品と会話をしたい、その気持ちはものすごーくよく分かります。
それなのに、横で「カシャ!カシャ!」と撮影音が響くのは許せない、という人は少なくありません。
また鑑賞そっちのけで、「話題のアートと私」という写真を撮ることが目的となっている人がいるのも事実です(まずは作品を見てやってくれー)。
そういった人たちが多くなると、なかなかお目当ての作品の前が開かなかったり、と変なストレスを他の来館者が感じることにもなります。
写真撮影OKを謳い文句にして、映えを求める人が押し寄せる展覧会であれば、まぁみんなそれが当然と思っているのでトラブルも起きにくいのでしょうが、落ち着いて鑑賞したいという人と、鑑賞の記録を写真でも残したい人が半々、もしくは写真撮影派が少数の場合は、静かに鑑賞したい派にストレスがたまる恐れがありますよね。
ストレスを感じて展覧会の満足度が下がると、下手すれば「もう二度と来ない」という気持ちにもなり、集客という観点からも逆効果になってしまいます。
学芸員としてはせっかく開催した展覧会は、なるべく多くの人に観てもらいたいものですが、今の時代、撮影を認めるかどうかの議論は避けては通れないのです。みなさんはどう思いますか?
撮影の問題のもう一つ「著作権」についてはまた次回。
バックナンバーはここで一覧できます(我ながら結構たくさん書いてるなぁ)。